第34話
本日2回目の投稿です。
俺は心惹かれるままに、ヴァイオリンの音色のする方向へ歩いて行った。
湖畔で白いワンピースを着た美少女がヴァイオリンを奏でている。リーフェだ。
眼鏡が彼女の知的な印象を強めているが、今夜は知性に加え、一種の荘厳さを醸し出している。
月光に照らされつつ一心不乱に演奏する姿に神秘的な美しさを感じた。髪を振り乱す仕草は官能的な雰囲気さえ覚える。
周囲には数十羽の白鳥が佇み、じっと演奏を聞いている。さながら音楽の女神を護る眷属のようだ。
「ケイブじゃないか。どうしたのだ」
リーフェはヴァイオリンを弾く手を止め、微笑を浮かべて俺を見つめる。
「いや、あまりに綺麗な音色だったから、つい誘われてしまったよ」
「そうか、ありがとう。魔界へ旅立つまであと数日。こんなにゆっくりと演奏が出来る機会は当分先だろう」
そう言ってリーフェは愛おしそうに弦を撫でる。
「魔界へ行く準備はどうだ?」
リミュの言葉がハッタリだったことに不安を覚えた俺は、念のためリーフェにも確認をしてみた。
「いや、特に何も」
「は? フォードンに対して、リミュと一緒に啖呵を切ってたじゃないか。魔物との戦闘は大丈夫なのか? 何か対策は?」
「ううん、何も考えてにゃい」
「考えて、にゃいだと……」
リーフェは再びヴァイオリンを弾き始める。目を瞑り、優雅な旋律に自らの身と心を委ねている。
確かに、演奏は良い。ただし、こいつは魔界行きの事を何も考えていないバカということが解った。先程とは一転、荘厳な雰囲気が逆に白々しく思えてきた……
「てぇいっっ!」
「いたいっっ!」
演奏を止めるべく、リーフェの脳天にチョップを入れる。白鳥達がバタバタと翼をはためかせて飛び去った。
「な、何をしているのだ!」
「こっちのセリフだ! この巨乳メガネバカ! 魔界行きの準備もせずに何をしているんだ!」
「その呼び方は訂正してもらおう。メガネバカ巨乳と呼ぶが良い」
「何が違うんだよ……」
どうやら、巨乳という単語を最後に持ってきて欲しかったようだ。かなり自信があると見える。
「そんなことより、お前も特訓をしろよ! リミュは今日一日特訓してたんだぞ!」
「リミュにはリミュの、私には私の人生がある」
「ナホーティアの人生がかかってるんだよ!」
なんか、こいつと話してると頭が痛くなってきた。
「ふふふ……愚かなり、ケイブ。この私が全く修練を積んでいないとでも思ったのか。以前に比べ、私の魔法は二倍の威力になっているのだ!」
「ほう、二倍は大したもんだな。じゃあ、この場でかかってこい!」
「行くぞ! 再びお前に悪夢を見せてやろう。リーフェは分析する。お前の弱点は既にロックオン済みだ。ウォーターストライクッ!」
またこれか……。分析スキルは相手の弱点に狙いを定めて魔法を放つのだが、相手が牡の場合、弱点は必ず股間に設定される。水魔法で出来た白鳥を、俺の股間目掛けて飛ばすつもりなのだろう。
「「クエエエエエエエエエエッ!!!」」
水で出来た白鳥が飛び出すまでは以前と同じだったが、頭が二つ生えていた。
「はははははっ! 恐れおののけ! 一つの身体に頭が二つの白鳥だ。これまでの二倍、お前の股間にダメージを与えるだろう!」
なるほど。頭が二つになったから、威力が二倍になったと言ってるわけだな。
「雷撃!!」
双頭の白鳥は、あっという間に霧散した。
「ああっ、私の白鳥さんがっ……」
この後は省略するが、リーフェをボッコボコにして鍛えてあげた。お陰でリーフェのスキルレベルが上がったようだ。
ーーーーーー
「いやー、何かリーフェと付き合ってたらくたびれたな……」
ぐったりとして屋敷に戻ると、ナホーティアがご飯をもりもり食べていた。
「あれ、ナホーティア、まだ晩飯食ってるのか?」
「うんっ、なんか、最近食欲が止まらなくって……ぱくぱく。もぐもぐ。」
「そうか……」
もしかしたら、狂化スキルの影響かもしれない。理性を剥奪し、欲望に忠実になるというスキル。
魔界へ行く前に、時間を取ってナホーティアと話し合った方が良さそうだな。
深夜になっても、ナホーティアの食欲は止まらない。
ぱくぱく。もぐもぐ。
ぱくぱく。もぐもぐ。
もしよろしければ!
・ブックマークへの追加
・画面下の「☆☆☆☆☆」から評価
をお願い出来ますととても励みになります♪




