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第32話

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 夜になり、ナホーティア、リミュ、リーフェと俺はリハイヘヴン家の邸宅で食卓を囲んでいた。


「もちろん、わたしも魔界に行くわっ! 皆、わたしの為に頑張ってくれるんだもの。もぐもぐ」


 ナホーティアは魔界行きを快諾してくれた。狂化スキルが解放された直後は塞ぎ込んでいたが、今は明るく立ち直っているように見える。食欲も旺盛なようだ。


「ナホーティアが元気になって何より。今のところ悪影響もそれほど無いようだしね」


「うんっ! 聖女スキルで皆をサポートするわっ! ぱくぱく」


 嬉しそうなリーフェとは対象的に、リミュはなぜか塞ぎ込んでいるようだ。


「ね、ねえ、ケイブ。お願いがあるのだけど……後でこっそり私の部屋に来てくれないかしら?」


「お、おう……わかった」


 リミュはツインテールの美少女である。そんな女の子に上目遣いでお願いされたら、男として断るわけにはいかない。俺は食後に忍び足でリミュの部屋に向かった。


「なんか、夜這いをかけてるみたいだな……失礼しまーす」


 ドアを開けると、リミュがベッドに入り、布団を被って顔を半分だけ出している。


「こっちに、来て……」


「お、おう……」


 お、落ち着け。前世では妻もいたし、アラサーの俺が十五歳の女の子にドキドキするなんて……


 リミュの部屋は女の子特有の良い香りがする。


 しかし、部屋の置物は武骨そのもの。ありとあらゆる種類の剣や、筋肉ムキムキの男性の裸像。また、オークジェネラルとワイバーンの生首の剥製が飾られている。いずれもリミュが討ち取った物だ。ちょっと理解出来ない。


「一体、どうしたんだ?」


「ケイブ……私、七列卿相手に啖呵を切っちゃったよ。どうしよう。どうしたら良いか、何も思いつかない!」


 半泣きで足をジタバタさせるリミュ。あの時の意気込みはハッタリだったのか。俺の感心を返してほしい。


「まあ、どうしようもないよな……」


「どうしよう、どうしよう。ぐすっ、ぐすっ」


 リミュは普段強気な癖に、精神的に弱い一面がある。まあ、そこが可愛いところなんだが。


「うーん、そうだな。よし、俺と特訓しようか。整理整頓スキルでお前のスキルをコピーさせてくれ」


 整理整頓スキルの能力を使えば、リミュのスキルの最適な使い方を教えられるだろう。スキルの威力や精度も増すに違いない。


「そ、そっかあ。それでお願い!」


「わかったよ。じゃあ、明日は実戦訓練だ!」


 魔界でフォードン達に馬鹿にされないよう、リミュを鍛えておくとしよう。それがナホーティアの為にもなるしな。


 部屋を出ようと立ち上がった瞬間、ふと背後に視線を感じた。振り返ると、オークジェネラルとワイバーンの生首があった。


「なあ、リミュ。あの生首は捨てた方が良いんじゃないか。ここに置いとくとなんか祟られそうなんだが……」


 二つの剥製の目が、無念を訴えているような気がして心苦しい。


 オークジェネラルに到っては、ミミガー料理に使ったので耳がもげている。むごい。


「何言ってるの! あの剥製は私の勲章よ! アクセサリーみたいなものなのよっ」


「そうか、もはや何も言うまい……」


 もし魔界に行って魔王を倒したとすれば、リミュは嬉々として生首を持ち帰るのだろう。


ーーアクセサリーとして部屋に飾られるのは、魔物だって浮かばれないだろうな……


 オークジェネラルとワイバーンの生首に、心の中で合掌を捧げる俺なのであった。

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