第20話
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準決勝の相手は、何と七列卿のフェリーネ・ルーラルヴォーラになった。因縁の相手である。何かにつけてナホーティアに突っ掛かるこいつだけは、裸にひん剥いたとしても罪悪感は感じない。
フェリーネは風魔法の使い手として王国で有名である。短剣術と組み合わせて相手を追い詰める。その技術は天才的という噂だ。
正直、観客の大多数は俺が負けると思っているだろう。七列卿というのは、いわば魔法とスキルの天才の集まりだからだ。
しかし、俺は負けるつもりは毛頭無い。あいつが馬鹿にした整理整頓スキルと雷魔法で、徹底的に屠ってくれる。
「これより、フェリーネ・ルーラルヴォーラとケイブ・クオーツカスの試合を行う」
突如、観客の男性達から大歓声が起きた。
「ケイブ! 頑張れよっ! 俺達の要求解ってるよな?」
「やれーっ、ケイブ! ひっぺがせ!」
野次られるよりはマシだが、かなり心外な声援である。何度でも繰り返すが、先程は対戦相手をわざと裸にしたわけではない。
「汚らわしいっ……!」
フェリーネはゴミを見る目で俺を見てきた。
「ふん、生憎この連戦で、女性からの冷ややかな眼差しには大分慣れたぜ」
「あらそう、今までのような雑魚と私を一緒にしないことねえ」
フェリーネは短剣を俺に向けた。
「ケイブくん、がんばってっ!」
ナホーティアが応援してくれる。それだけで勇気百倍だ。
「ケイブ、油断するなよ! 相手はあのフェリーネだ。最初から全力で行け!」
「試合、始め!」
「あなたに対して名乗る価値は無い。二度と、ルーラルヴォーラ家に立て付けないようにしてあげるわ。下級貴族のお掃除係さん」
「ケイブ・クオーツカス。お前こそ、リハイヘヴン家に二度と生意気な口を聞けないようにしてやる!」
フェリーネは複数の短剣を投擲した。同時に風魔法を使い、短剣の軌道を複雑に変えながら攻撃を仕掛けてくる。流石は七列卿だ。かなりの才能の持ち主である。
「雷装!!」
しかし、俺に剣や弓矢等の金属を使った攻撃は一切無効である。雷魔法を使い、電磁石の力で短剣を悉く弾き返した。
「いったい、どうなってますの?!」
「さあな、今度はこっちの番だ。雷撃!!」
得意の中距離魔法を放つ。先程の戦いでは、実はかなり手加減をしていた。今回の相手は七列卿。全力で行かせてもらう。
「ううっ!」
フェリーネは渾身の力で風の魔力を集め、シールドを作った。雷撃が炸裂し、轟音が響く。フェリーネは支えきれずに十メートル程吹き飛ばされた。
「雷閃!!」
体勢を整えられる前に雷閃で斬りかかる。フェリーネは地面を転がりながら短剣で巧みに捌く。
剣の腕前はなかなかのようだ。両手に短剣を携えて、俺の攻撃を受け流している。隙を見て短剣を次々と投擲してくるが、やはり俺には効かない。
「短剣を弾く能力、謎ですわね。しかも、まさか雷魔法を扱えるとは……」
「お前が馬鹿にした整理整頓スキルのお陰だよ。雷撃!!」
紫電がフェリーネを直撃する。
「くううううっ!」
しかし、フェリーネは風魔法を使ってシールドを作り、ギリギリの所で耐えているようだ。
「ハア、ハア……今度はこちらの番ですわ。ウインド・カッター!!」
風の刃が俺を襲う。俺も雷魔法によるシールドを作って防御をする。ウインド・カッターはあっさり霧散した。
「魔法の威力で私が負けてますの?! そんなことはありえないっ!!」
魔法とはイメージコントロールによって精度や威力が決まる。俺は整理整頓スキルによって思考が最適化される為、達人レベルの魔法が扱えるのだ。
「これが現実だよ。そろそろ終わらせるぜ」
「ありえないっ! ありえないっっ!! 下級貴族のくせにっ」
取り乱したフェリーネがウインド・カッターを連発するが、前方に展開した雷のシールドが全てを弾く。短剣に風魔法。全ての攻撃手段を封じられたフェリーネに、もはや勝ち目はない。
「雷撃!!」
「きゃあああっ!」
フェリーネは風のシールドを展開したが、スタミナ切れの為か完全には防げなかった。
吹き飛ばされてダウンした所で待ち構え、俺が上からフェリーネを見下ろす。
「終わりだ。雷装!!」
蓄電させた拳でフェリーネの腹に一撃を入れる。
「ぐふっ! ぎゃああああああっ……!」
フェリーネは殴打による痛みと感電によって気絶してしまった。
「勝負あり!勝者はケイブ・クオーツカス!」
観客からは大歓声が上がった。
「すげえ! 整理整頓スキルが七列卿に勝っちまったよ!」
「歴史に残る一戦だ!」
皆、一様に驚いている。正直それ程苦戦はしなかったのだが。やはり、整理整頓は規格外のスキルのようだ。
「ケイブくんっ!素敵ですっ」
「なかなかやるな!」
「私の分析通りだ」
ナホーティアやリミュ、リーフェの信頼も回復出来たようで何よりだ。リーフェは何かほざいているが。
「ケイブよ、準決勝突破おめでとう。今回国王からのお言葉は無しじゃ」
そうだと思った。戦いに関心は無く、女の裸にしか興味のないエロ国王に違いない……。裸が見れず、さぞかしがっかりして帰っただろう。
決勝の相手は、学園生最強と名高い、ボルガドフ・リーヴェンレイルになった。相手にとって不足は無い。
優勝してリハイヘヴン家の名を上げれば、フェリーネのような小者は二度と近づけないだろう。
ーーーーーー
「くそっ! くそっ!! きっと汚い手を使ったに決まってるわ! 私が下級貴族に負けるなんて……!」
試合後の控え室で、壁を殴りながらフェリーネが喚く。拳には血が滲んでいる。
「どんな手を使ってでも屈服させてやる! だって、私はキングウェル王国最上位の七列卿なのだから……!」
フェリーネの口元が、陰惨な笑みを浮かべた。
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