第21話
遅くなりすみません!
本日二度目の投稿です。
ボルガドフ・リーヴェンレイル。入学前から彼の噂は王国中に轟いていた。
魔法儀によりスキルが授かった直後、領国に侵入してきた数百人の外国兵を単独で撃退。生き残った敵兵は誰一人おらず、死体は一様に原型を留めていなかったという。彼の戦い振りを見た者は言った。「鬼神そのものだ」と。
最強の力を手に入れた後、彼は孤独に浸るようになった。このスキルは、周囲の人間を巻き込んでしまう恐れがある。
自分自身のスキルが時折暴走しそうになる。ごく稀ではあるが、抑えきれず衝動的に破壊の権化となることもある。
そんな時、ボルガドフは自分自身が解らなくなった。スキルが自分の本性なのか、そうでないのか。
自分という虚ろな器に宿ってしまった強大な武力。人は自分の身に余る力を手に入れてしまった時、大抵恐れか奢りのどちらかを生じる。ボルガドフの場合は前者であった。
こんなスキルは捨ててしまいたいのに、今やスキル無しでは自分自身が語れなくなってしまっている。周囲からの高い評価は、スキルがあるからこそ受けているものだ。
スキル無しでは自分自身の存在意義が解らない。すると、自らが列する貴族の存在意義が解らない。七列卿の存在意義が解らない。王国の存在意義が解らない。
強きに過ぎるスキルと弱きに過ぎる心。それを併せ持つのがボルガドフ・リーヴェンレイルである。
ーーーーーー
「素晴らしかった! 私は感動したっ!」
人の目を憚ることなく大声で称賛し、拍手をする。俺は選手の待合室で七列卿のフォードン・レグシスレイトに捕まってしまった。
「まさか、あの天才児たるフェリーネ嬢を打ち倒すとはっ! 加えて、試合の前の名乗りも良かった! フェリーネ嬢の無礼に対し、こちらは礼を失することなく、しかも勝利をしてみせるっ! まさに貴族の鑑と思わないか、寄子達よ!」
「「「「はい! フォードン様!」」」」
四人の寄子が声を揃えて賛同した。
「スキルや魔法という強力な武力を持つ貴族は、礼をもって自らを律さねばならぬ。でなければ、スキルに自分自身が振り回されてしまうと思わないか?!」
反論すると面倒くさそうなので、適当に頷いておく。
「恥ずかしながら私はボルガドフに負けてしまった。卿に肩入れをするわけではないが、奴の硬質化のスキルは厄介極まるものだ。最も、奴の本領はもう一つのスキルの方だが……卿の次なる試合、楽しみにしているぞ!」
言うだけ言ってフォードンは去っていった。寄子達は隊列を組んでフォードンの後に続く。相手の事を卿と呼ぶ奴が現実にいるとは思わなかったな……。
「レグシスレイト家は代々将軍を輩出してきた名家だ。だからあのように軍人気質なのかもしれないな。まあ、私はあんな家に仕えたくはないが」
リーフェがため息とともに解説を加える。
軍人って、あんなのだっけ?という疑念はさておいて、俺は決勝戦に臨む。ボルガドフは身体を硬質化させるスキルが使えるのか。剣は恐らく役に立たないだろう。
ーーーーーー
「これより、ボルガドフ・リーヴェンレイルとケイブ・クオーツカスの試合を行う」
スタジアムは熱狂に包まれていた。優勝候補の筆頭であるボルガドフと、完全なダークホースの俺が対峙する。歓声で審判の声が聞こえない程だ。
ナホーティアは祈るように俺のことを見つめている。彼女の為にも、俺は何としても勝たねばならない。
対するボルガドフは、不思議なことに一切の覇気が感じられない。じっと俺を見つめていたかと思うと、ぽつりと口を開いた。
「君は、強いんだな」
答えに窮していると、ボルガドフはぽつり、ぽつりと言葉を続ける。
「フェリーネとの戦いを見て、君の強さを確信したよ。君は天才だ」
「いやいや、学園生最強のボルガドフに言われてもな……」
「君は強いよ」
ボルガドフは俺の言葉など聞いていないように話し続ける。体格が極めて大きいのに、言葉はひどく小さく、弱々しい。
「君なら、もしかしたら大丈夫かもしれない」
「試合、始め!」
審判の合図も気にせず、ボルガドフは続ける。
「ケイブ君、僕と、友達になってくれないか?」
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