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俺はVRMMOで男と結婚する事になりました。  作者: カイロ


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俺は先輩の秘められた一面を知りました。

「こ、殺してしまうのか? ちょっとかわいそうな気も……」

「大丈夫ですよ先輩! ゲームなんですから気にしないでやっちゃってください!」

「日頃の恨みを晴らすためにも、さあ一思いにどうぞ」


 Linkerと進化カードに後押しされてMLGはためらいがちながらも初期装備のダガーを握りしめて、思い切り振りかぶって突き刺した。

 背後からの攻撃を受けたワイルドラビットは一撃で死んだ。


「あああ、こんな愛くるしい小動物を殺めてしまうとは……」


 親衛隊が消えてすぐ、Linker達はMLGのレベル上げを手伝う事にした。とは言ってもパーティを組むとレベル差がありすぎて経験値が入らないのでMLGが危なくなったら戦闘に手を貸す程度だが。

 初めて敵を倒したMLGは後悔の念に駆られるように顔を覆って嘆いている。兎がモデルのモンスターだけあってかわいらしく、ゲームとはいえ倒したくはなかったのだろう。


「あ、先輩……、やっぱりこういうのは楽しくない、ですか」

「いや、むしろ興奮してるよ」

「先輩!?」

「大丈夫……大丈夫だよリンくん。私はゲームと現実の区別はつくから……。うん、大丈夫だ」

「そ、そうですか」


 MLGの目はヤバかった。息も荒く、罪悪感で震えていたのかと思った声は恍惚としたものが混ざって聞こえた。これが生徒会長でうちの学校は大丈夫なのかとLinkerは不安になった。

 彼女の内側に眠っていた猛獣を檻から解き放ってしまったのではないかと後悔し始めるが、Linkerは深く考えないようにした。本人も大丈夫って言ってるし大丈夫だろう。

 そんなこんなで狩場を移しつつモンスターと戦い、なんとMLGは一日でLinkerと進化カードのレベルまで追い付いてしまった。

 そのままエスティメス王国へと戻ってきた3人はちょうどいい時間となったので今日のところは解散とした。


「今日はありがとうリンくん、シンくん。私も知らない私に出会えて楽しかったよ。今後もよろしくね」

「はい、すみませんでした」

「おいおい、どうして謝るんだい。そういう時はありがとうでいいのだよ?」

「は、はい。ありが……本当にありがとうでいいのかなシン」

「本人がいいと言ってるんだからいいんじゃないかな」


 Linkerと進化カードは先輩の誰にも見せた事のない一面を知った。このまま本人さえ知らないままでいた方がよかったのではないかと思う面だが。

 今日の出来事のせいでMLGが最終的に現実で凄惨な事件を起こす事になってしまうのではと心配でもあるが……。

 何にせよ、一緒にゲームを楽しむ仲間ができたのはいい事だ。そう強引に締めくくってLinkerはログアウトした。





 翌日。学校も終わり進太郎と共に帰ろうとした凛花は月光門と遭遇した。

 あれから親衛隊はどうなったと聞くが、どうやら今までとなんら変わっていないらしい。凛花が見せられたのと同じような振る舞いを今も続けているとの事だ。

 つまり、これからも月光門は学校で親衛隊に追い回されるハメになるようだ。

 凛花は本当にそれでいいのかと聞いたが「いざという時はどうすればいいか、私はわかったからね……」と不敵に笑っていたのできっと大丈夫だろうと思った。……本当に大丈夫なのだろうか?

 まあ、それは置いておくとして今日もMSWだ。進太郎と別れて自宅へ着いた凛花はいつも通りにただいまーとだけ言って自室へ駆け込もうとするが。


「ちょっと凛花、待ちなさい!」


 少々怒った様子の母親に呼び止められてしまった。


「え、何、母さん」

「もう~何じゃないわよ、ここのところ帰って来たと思ったらすぐ上に行っちゃうんだもの。凛花にもやりたい事があるのはわかるけど、お母さんそういうのはよくないと思うわっ」


 高校生の母にしてはかなり若く見える凛花の母、麗は頬をふくらませてプリプリ怒っている。

 母親というより歳の離れた姉のような認識でいる凛花はそれをうっとおしく思う事もあるが、邪険に扱ったりはしない。

 なにせ凛花の父は仕事の関係で方々を飛び回っている。ほとんど家に帰らないので凛花が相手をしなければひとりぼっちなのだ。交友関係も今は父以外に存在しない。

 麗が父と付き合い始めた頃に「あなたさえいればそれ以外は何もいりません!」と宣言していたがまさか本気だったとは……と嘆いている父を凛花は見た記憶がある。

 そうは言っても息子である凛花にはしっかりと愛を注いできた。だから恩返しというわけでもないが、父がいなくて寂しがっている母の話くらいは聞いてあげるべきだとは思っている。


「いや、ちゃんと勉強もしてるよ」

「それも大事だけど、そうじゃないの~! 私は凛花とお話したいのに、最近はご飯とお風呂の時以外ほとんど自分の部屋に籠りっきりなんだもの。お母さん寂しいわ」


 しくしく、とわざとらしく口で言って泣くようなジェスチャーをする。

 正直アホ臭く感じるが、ここで本気で泣いたりはしないだろうと思って切り上げると麗は本気を超えた本気のマジ泣きをしたりするのを知っている。凛花は母親に詳しいのだ。


「えっと、ごめん。最近友達が増えたから、ついゲームにのめりこんじゃってて……」

「あら? 凛花新しくお友達できたの? 進太郎くん以外に? あらぁ~」


 麗はにんまりと笑った。嬉しそうにぺちぺち手も叩いている。さすがに高校生の母がそれに加えてぴょんぴょん跳ねるのはいかがなものかと思ったが、凛花は何も言わない。


「男の子? 女の子?」

「お、女子だけど……」

「女の子? まあ……。それで、うちにはいつ紹介しにきてくれるの? 明日? それとも明後日かしら?」

「紹介って……。ていうか3年生だし、家に呼んだりとかはどうなんだろう……」

「あら~年上さんなのね。ってことは私も凛花の守備範囲だったりする? 駄目よぉ私は凛花のお父さんのものなんだからね」

「母さん!? 絶対話聞いてないでしょ!? 友達だからね! 彼女とか一言も言ってないから!」

「わかってるわよぉ。私も凛花と一緒にお風呂入るくらいだったらしてあげるってば」

「わかったやっぱ話聞いてないよね!?」


 こうして凛花はしばらくの間、麗と話をして過ごした。話というよりもボケ倒す麗にひたすら凛花がツッコミを入れていただけだったが。

 本気で誤解しているのか、それとも冗談なのかはわからなかったが、母が楽しそうに笑っているのを見て、まあいいかなと凛花は思った。

 食後、本当に凛花と一緒に風呂に入ろうとしてきたのでさすがに逃げ出した。

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