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Eye of Glaia Online 〜ナイフ縛りが趣味の男は意図せず配信界をザワつかせる〜  作者: 天沢与一


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第8話:無駄にしぶしぶクエストを受けてみる

 鷹城翔(たかしろしょう)は凄い奴である。


 というのが、友人である爽真の認識だった。


 そんな凄い奴は昔はもっと凄い奴だったのを爽真は知っている。


 4年前、とあるバトルロイヤルシューティングゲームに彗星の如く現れた新人。公式大会で優勝し無名から一気に名を上げ、その後もアクションRPGで誰もソロでは倒せなかったボスをソロ討伐したり、ホラゲでRTAを行って新記録を出したりと、話題になる活動ばかりしていた。


 動画を投稿すれば20万、30万再生と簡単に超え、たまに配信をすれば1万人近く人を集める。


 けれども、ある日一部の人間からやっかみを買ったことにより、炎上した。


 裏で他の活動者に暴言を吐いている。

 ゲーム会社と繋がりがあり内部データをもらっている。

 チートを使っている。

 お金を貸したが返ってこない。

 女子高生を妊娠させた。


 全部嘘だったが、煙のないところにも立つのがネットである。


 嘘を信じるものが1人でも現れれば噂は広まっていく。噂が広まれば事情をよく知らない人にとってはそれが真実となる。


 結果的に動画は荒れ、配信は荒れ、SNSは荒れ、友人の心は折れた。


 そして今は名前を変えて動画を投稿しても1000再生もいかないチャンネルで誰にも関わらずに細々と活動している。


 この現状が爽真は悔しかった。


 鷹城翔は1000再生程度で燻ってていい奴じゃない。


 だからEGOのソフトを押し付けた。強制的に配信させる環境と、プレイヤーを取り上げる注目システム。それがあれば絶対に世界はまた鷹城翔を見つけるという確信があった。


 世界が見つけてくれれば——鷹城翔は必ずまた羽ばたける。




 ♢



 ♢



 ♢




 カミラの家はここからすぐ近くみたいだった。


 歩いて向かうと、木造の一軒家の前にNPCの女性が泣きそうな顔で立っていた。


 とりあえず近づいて様子を伺う。



「どうしましょう……」



 なんか困ってるみたいだ。

 普通なら話しかけるんだろうけど、そんなことしなくてもストーリーが進むって知ってる。


 あえて近くで待ってみた。



「あ、あなたは噂の救世主様ですね!どうか娘を助けてください!」



 やっぱり強制的に進んだ。



「助けてと言われても」


「西の草原に行ったきり、帰ってこないんです。衛兵に相談しても、そのうち帰ってくるだろって言われて取り合ってくれなくて。どうか、西の草原で娘を探してきてくれませんか?」


「えー他の人に頼めない?」


「救世主様にしか頼めません」


「どうしても?」


「はい。救世主様にしか頼めません」


「他の人で頼れる人いない?」


「いいえ。救世主様にしか頼めません」



 これキリがないな。



「仕方ないから探してくるよ」


「ありがとうございます!」



 しぶしぶ受けた雰囲気を出してもちゃんと感謝はしてくれるらしい。


 次は逆に喜んでクエスト受けてみようかな。


 HPバー下の案内文は《メイン:西の草原に向かおう》に変わった。


 西の草原に行くならギルドでそこのクエスト受けてこよう。


 ということで[ホッパーバグ退治]のクエストを受けたら案内文がサブのこっちに変わってしまった。


 クエスト管理画面を見たら両方進行中になってる。


 これメインの方に戻したいんだけど、どうやるんだろう。


 クエスト詳細を開いてみる。



《カミラの娘、リアーナが西の草原から帰ってこない。娘を心配したカミラに頼まれてリアーナを探すことになった。まずは西の草原に向かい、リアーナの痕跡を探そう。カミラによるとリアーナは赤いリボンを付けて出かけたようだ》



 カミラの娘ってリアーナって言うんだ。

 そしてリアーナの特徴って赤いリボンなんだ。


 知らん情報がありすぎでは。


 クエスト受けた時に聞けばちゃんと教えてくれたのかな。


 詳細文の下に[案内をONにする]というボタンがあったので、それをタップし、無事に案内文を切り替えることができた。


 さっそく西の草原に向かおう。


 門を出て、西の草原エリアに入る。


 西の草原は南の草原より長い草が多い。というかほとんど膝丈くらいの長い草で埋まっている。ちょっと歩きにくい。


 草むらが動いたら、とりあえずスキルを撃った。職業レベルが5になったことで覚えた“バレット-岩(がん)”だ。


 岩だから大きい弾が出るのかと思ったが、大きさは20cmほどで、他と比べると確かに大きいが、思ったほどではない。


 威力は炎(えん)よりありそうだ。ただ、その分リキャストタイムは長いし、最大距離も短い。というかファイヤーボールと同じくらいしか飛ばない。


 せっかく“遠距離戦が得意な者の転職先”を選んだんだから、もっと遠距離攻撃させてほしいものだ。もっと職業レベル上げればそういうスキル手に入るかな。


 そうしてホッパーバグを倒しながら進んでいると、草原に突如赤い矢印が現れた。


 わかりやすい。この案内システム便利だな。


 矢印の真下には赤いリボンが落ちていた。


 拾ってイベントリでアイテム名を確認すると、リアーナの赤いリボンだった。だろうなという感想である。


 次は……周囲の魔物を狩ろう?


 あ、気づいたらホッパーバグに囲まれている。

 これだけバッタ型の魔物が集まると気持ち悪い。


 もしかしたら俺は虫が嫌いなのかもしれない。



「“バレット-岩”“バレット-旋”“バレット-炎”」



 とりあえず撃ったけどあんまり減ってないな。


 案内文の末尾に(3/20)とついている。もしかしてこれあと17匹いるってこと?



「“ファイヤーボール”」



 1匹倒すと4/20になった。そうっぽいな。


 てか攻撃すると魔物名が表示されるんだけど、それがホッパーバグじゃなくて様子のおかしいホッパーバグになってる。


 確かにここに来るまでに遭遇したホッパーバグと違って黒いオーラを纏っている。


 リアーナはこいつらにやられたんだろうか?


 だとしたらこの場に居ないのは変か。


 とにかく今はこいつらを倒そう。


 飛びかかってきたホッパーバグはロッドで殴りつつ、リキャストタイムが明けたスキルからどんどん撃っていく。


 バレットの炎と岩なら1撃、旋とファイヤーボールなら2撃で倒せる。無心で攻撃していけば、すぐに倒し終わった。


 ドロップアイテムは普通のホッパーバグと変わらないんだな。


 案内文的に次はもうリアーナを見つける段階になってるっぽいのだが、方法がわからない。矢印も今は出てないし。


 困った時のクエスト詳細文だな。



《リアーナの赤いリボンが落ちていた場所には様子のおかしいホッパーバグの群れがいた。争った形跡は見当たらない。リアーナはこの異変を追ったのかもしれない。様子のおかしいホッパーバグはさらに西から来ているようだ》



 つまりさらに西へ進めってことね。おっけー。


 西に行くと様子のおかしいホッパーバグに遭遇した。倒して進むと、また遭遇する。


 クエスト詳細文を読まなくても、この魔物を追っていけば自然と西に進むようになってるんだな。親切設計だ。


 10匹ほど倒すと、争ってる男女の声が聞こえてきた。



「離して!」


「黙れ。お前は見てはいけないものは見たんだよ」



 女性の方はカミラに似た雰囲気の金髪で癖毛の若い人だった。掴まれた手を必死に引き剥がそうとしている。

 男の方はよくわからない。大きなフード付きの黒いローブを着ている。赤いラインが入っていて、なんだか怪しい雰囲気だ。リアーナを掴んでいない方の手には黒い玉を持っている。


 案内文が《リアーナを逃そう》ってなってるけど逃すだけでいいんだ。なら簡単だな。



「“バレット-炎”」



 炎の弾はローブ男が持っていた玉に当たり、地面に転がる。



「なにすんだ!」



 ローブ男は玉を追いかけ、リアーナから手を離した。



「逃げろ!」


「あ、ありがとうございます!」



 リアーナは走ってその場を離れ、“気をつけてください。こいつは邪教徒です”と言いながら去っていった。


 確かに俺は逃げろと言ったけど、本当にこの場からいなくなるんだ。

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