第八十三話 大災厄の本拠
戦闘型アンドロイドは敵を制圧するか、自身の機能が停止するまで戦いを続ける。それは悲しい定めを持っていると言えるかもしれない。銃撃が失敗したと認識した感情がないロボットは、壊れかけている体を使い、再び銃口をトウジに向けトリガーを引こうとしている。
「クラッシュ!」
幼馴染の命を守ろうと、リナは咄嗟だった。旅へ出発する前にネイツーから教わった、自分に秘められた超能力を使い、機械的な攻撃を行おうとしている敵アンドロイドの破壊を試みる。既に敵は足を動かすことができず、その場から移れない。リナの力は金属的な破壊音と共に、敵を完全に沈黙させた。
「ははっ……サンキュー、リナ。流石に肝が冷えたぜ」
「サンキューじゃないわよ! バカ……」
リナはきれいな顔を泣き顔で怒ったものに変えている。ビンタでもされるかもしれないとトウジは覚悟して目をつむっていたが、彼が受けたのは優しい抱擁だった。
「リナ?」
「バカ! ……バカトウジ!」
頬を張られた方が遥かに痛くない。柔らかいリナの体を両手で抱き支え、トウジはシリアスで深い反省を、彼女に対して心に刻んだ。
危険な困難が次々とやってくるかと、トウジたち旅のパーティーは考えていた。しかし、襲撃はそれ以降なく、彼らはリリスが存在するコントロールタワーを探し当てることに成功する。世界崩壊の原因を作った彼女の家とも言えるそれは、意外にも綺麗で慎ましかった。薄い青色の合金が曲線の壁を作っており、タワーには風化や劣化もほぼ見られず、一見、大災厄の本拠とは思えない。
「何ガ出テクルカ分カランガ、俺ガ開ケテミルゾ」
穏やかさが先程の戦闘と相まって不気味である。コントロールタワーへの扉を開けるのに、クローゼン以上の適任者はいないだろう。自身が防御機能として持つエネルギーシールドを前方に展開させ、最大限の注意を払い、扉の前に彼は立った。力任せにこじ開けるつもりで臨んでいたが、そんな心づもりを肩透かしするように、扉は自動であっさり開く。
クローゼンは拍子抜けでやや唖然としていた。首を左右に振り気を取り直し、警戒を怠らずタワーの内部に侵入する。コントロールルームは微塵も乱れていない。最小限の機能を維持しつつ、向こうの正面で『リリス』が、眠るように存在していた。
「これがリリス……壊れているわけでもなさそうだけど」
「トウジ。リリスが災厄の原因なのは間違いのないことです。私たちにどのような感情を向けてくるか分かりませんよ」
「うん。分かってる」
ドーム状のエネルギーシールドでネイツーがトウジたちを守りつつ、旅の最終目的に差し掛かった一行は、静かに鎮座するリリスに近づく。




