第七十二話 メカニック魂
旧時代からシンシアーを統御し、その後、長い年月に渡って眠り続けるマザーコンピュータ・ガブリエルの前に、トウジたちは立っている。復旧を行っていくわけだが、恐らくはザーフェルトとテレジアを直した時より大変な作業になるだろう。リナも工科学校を卒業しているので機械は分かる。しかし、彼女はどちらかと言えばメカニックではなく教育者だ。旅のパーティの中では専門的メカニックはトウジただ一人である。それだけに彼は、困難な修理に立ち向かう闘志に燃えていた。
「よーし! やろう! ザーフェルトとクローゼンには力仕事を頼むよ。リナは俺の作業補助をやってくれ」
「分かったわ。頼りにしてるわよ」
「ワカリマシタ。何デモ運ビマスヨ、トウジ」
「壊スモノガ有レバ、スグ壊スゼ」
それぞれの役割分担は決まった。まず、何はなくとも電源を復旧しなければいけない。運が良ければこれだけでガブリエルは直るかもしれない。それは当たるも八卦当たらぬも八卦である。やってみるしかない。トウジはニーナとカイを含む皆に指示を出し、手分けしてコントロールタワーの電源装置を探しだした。程なくガブリエルが眠っているコントロールルーム内でそれは発見される。トウジがそれを調べたところ、ニーナたちが居住している部屋に通じる非常用電源だけはしっかり生きていた。しかし主電源は、断線箇所など少々厄介な壊れ方をしているようだ。
「これはちょっと大掛かりな修理になるな」
「直りそう? トウジ?」
「時間がかかるけど直らないことはないさ。さあやるぞ!」
メカニック魂に燃えているトウジの手並みは鮮やかであった。彼が言うように時間が必要だったが、的確に工具を選び、集中力を途切れさせずに作業を行った結果、2時間程でコントロールタワーの主電源が復旧した。それと同時にタワー内全体が通電され、ガブリエルにも電気が来た。しかし、彼女はまだ眠ったままだ。
「やっぱ、そう簡単にはいかないな」
「でも、もうちょっとな気がするわね。何かちょっとした不具合があるのかも」
「俺もそんな気がするよ。どっち道、ガブリエルの内部を見てみないといけない」
エネルギーを確保しても直らないということはそういうことだ。マザーコンピュータの内部構造を見るのは初めてで、思い切りが良いトウジにも、やや緊張感が走った。そうではありながら、彼の切り替えは早い。すぐに肝を据えて小扉を開き、旧時代の科学の粋とも言える、マザーコンピュータ・ガブリエルの中枢部分の修理に取り組むため、彼女の内部に入っていった。




