第七十話 少女と赤い目の少年
西日に照らされた合金の扉は通電しておらず、こじ開けるしかないように思える。コントロールタワーの入り口と見てよさそうだが、町を管理統制する機能は失われて久しいのだろう。この建物内にあるはずのマザーコンピュータが、完全に休眠していると推測された。
「ソレジャア開ケテミルゾ」
トウジは日が落ちる前に、リナとザーフェルトを呼び寄せることができた。今、重厚な扉を開けているのは、戦闘特化で不測の事態に最も対応力を持つクローゼンだ。彼の警戒センサーを十二分に働かせながら慎重に扉を開けていたが、意外過ぎるほど簡単にそれは開き、クローゼンも、周りで様子を見ていたトウジたちも、やや唖然としていた。
「ナンナンダ? 手応エモ無イシ、罠ノヨウナ危険モ無イ」
「これは……もしかして、人がしょっちゅう開けているということかな? あっ! 見てよ! 向こう側は電気が通ってる!」
クローゼンの後に続き建物内部に入ったトウジは、入るなりすぐ気づく。正面向いにある一部屋に続く扉だけは、通電しているのだ。コントロールタワーと思しき建物内と、廃墟となっているシンシアーの中で、恐らく唯一であろう。絶望的と思われた、人の存在が確認できるかもしれない。
扉の向こうに何があるか分からないのは、電気が通っていようといまいと同じである。ここもクローゼンが先頭になり、薄緑色にぼんやり光る耐蝕性に優れた合金の扉の前に立つと、セキュリティ認証も何もないまま、呆気なく自動でそれは開いた。
相当な年月ここに置かれているのだろう。表面がボロボロに剥げた金属製のテーブルが、部屋の中央に置かれている。生活感がある形で、椅子やキッチン、その他の調度品が配置されており、また、それを使って現在生活している「人」がそこにはいた。
「アンドロイド……? 人?」
日によく焼けた褐色の肌を持つ少年と少女は、突然入ってきたトウジとクローゼンを見て驚き、そして怯えている。彼ら二人は助け合い、機能を失ったシンシアーで暮らしてきたのだろう。そんな中、全く思ってもいない、自分たち以外の存在が入ってきたのだ。トウジたちを見て希望を持つより、恐れを覚えるのも仕方がなかった。
「怖がらないで。私たちは……」
寄り添いながら怯えている彼らの警戒心を解くため、リナは優しく笑いかけ、三百年前の救難信号を辿り、シンシアーまでやってきた経緯を丁寧に話す。リナの柔らかい物腰に少年も少女も安心していき、徐々に警戒心は無くなった。
少年はカイ、少女はニーナという。ただ少年の瞳は赤く、人工的な輝きを見せている。




