第六十九話 静まり返ったシンシアー
旧時代の名残がある舗装道路を進み、3日が経った。車から見える木や草花の風景は、鬱蒼としたものに少しずつ変わっていっている。陽射しがやや強く、気温が高いためだろう。気候が変わるほど南方へ移動したのだ。
「暑いくらいだな。南はこんなに違うのか。それにしても、そろそろポイントなはずだけど」
「あれ? あっ! 見てトウジ! 崩れてるけど看板があるよ!」
果てしなく続くかと思われた道の進行方向を、リナは指し示している。確かに崩れて倒れているが大きな看板があり、そのもう少し先には建物群がかたまって存在する町らしきものも見える。ただ人の気配は、見る限り期待できそうにない。看板の文字は『シンシアー』と読めた。
静まり返ったシンシアーという廃墟の町の広場に、走らせ続けた電動トレーラーを停め、トウジたちは探索の相談をしている。規模だけでいえばアテナタウンやオールホープに引けを取らないが、建物が使われていたのは随分昔と思われ、この広場で辺りの様子を見ても人の気配がない。
「救難信号ノ発信源ハ、ココデ間違イナイデスネ。大昔ニ受ケタ信号デスカラ、望ミハ薄イカモシレマセンガ」
「始めから諦めていてもしょうがないさ。まずはこの町のコントロールタワーを手分けして探そう。そうしているうちに、生き残っている人にも出会えるかもしれない」
どんな状況でも諦めないのもアキヒトそっくりである。電動トレーラーを停めたシンシアーの広場を中心に二手に分かれ、トウジたちは僅かな可能性を求め、探索を開始した。トウジはクローゼンと、リナはザーフェルトとそれぞれコンビを組んでいる。
規模が今のアテナタウンと同じということは、廃墟といえどかなり広い町であり、探索に骨が折れた。コントロールタワーの特徴は、どの拠点においても共通の部分があるので、一軒一軒の建物を詳しく調べる必要はない。それでも、徒歩でその町の中枢を担っていたタワーを探すには手間がかかった。
「ん? もしかしてあれがそうじゃないかな? 合金の壁で作られてるし、周りの建物より大きくて高い」
「ソウダナ、当タリカモナ。俺ガ先頭デ扉ヲ開ケテモイイガ、マズ、リナトザーフェルトヲ呼ブカ」
性格が丸くなっただけではない。クローゼンは状況を見て判断ができている。トウジはパートナーとしての彼が頼もしく感じられ、「そうだね」と笑顔で返事をし、携帯端末でリナたちを呼び寄せた。
暑い陽射しがやや傾きかけ、カラスがひとしきり鳴いている。南方に位置するシンシアーにも夕暮れが近づいていた。




