第六十一話 ザーフェレジアへの加速音
「うわ~!! すごいなあ!! これがアテナタウンの外か~!」
生まれて初めて見る町の外の世界に、トウジは興奮しきりだった。車の窓を開け、身を乗り出すように見ている。隣で運転しているカツトシに、(車から飛び出すんじゃないかこの息子は)と、のっけから大いに心配をかけている様子だ。
「おいおい、遊びに行くわけじゃないんだからな。まあ、お前のワクワクする気持ちはよく分かるよ。俺も初めて町の外を見た時はそんな感じだった」
「父さんは何歳くらいの頃に、初めてアテナタウンの外に出たの?」
息子の問いにカツトシは、道の向こうへずっと続く地平線を見ながらゆっくり昔を思い出していた。
「そうだな……。俺が18、9の頃だったかな。まだ母さんと結婚する前だったよ。北ゲートからじゃなくて東ゲートから出たんだったな。その時はオールホープまで続く道の補修整備をしたよ。俺もだだっ広い景色を見て随分興奮したもんだ」
「へぇ~! すごいな! でもそれなら、ザーフェレジアまでのこの道を見るのは初めてなんじゃない?」
「ああ、そうなるな。町の外に出るのもかなり久しぶりだし、俺もワクワクしてるよ」
運転中ながらそう言ってカツトシは頭を少し掻いて照れている。似たもの父子は笑い合うとアクセルを踏み込み、人工的だが心地よい電動カーの加速音を高く響かせた。
前話で述べたが、トウジとカツトシが今回の旅で使っている車は中型の電動カーである。アキヒトの章から読んで頂いている読者の方々には、フューエルタンク(ザーフェレジアの前身)にアキヒト達が向かった時、大型電動クルーザーにアタッチメントを付けたトレーラーを用いたのを覚えていらっしゃるかもしれない。
トウジの章はその時代から三百年の時を経ている。それゆえ、この父子二人は拠点として機能が復活したザーフェレジアへ向かっているので、補給などはそこに着いた後、充分行える。道もアキヒト達が活躍したころとは比較にならないくらい整備されているので、荷物は最低限でよいわけだ。流線型のスピードが出る中型電動カーを選んだのはそういうわけである。
「たま~にだけど、あっちから来る車とすれ違うね」
「ああ、アテナタウンへ鉱物材料や資源を運んでくれている無人輸送カーだろうな。お前も定期的に町へ入ってくるのを見たことあるんじゃないか?」
「そういえばそうか。見覚えがあるような車もあるし」
旅は順調だが、まだ道程はある。興奮が落ち着いてきたトウジは、カツトシと会話をしながら車から見える周りの様子を楽しみつつ観察していた。




