第五十二話 確かな血脈
アキヒトが残したマイクロメモリーは旧式過ぎて、そのままでは今の時代の端末に読み込ませることができない。しかしながら、アダプターでデータを新式のマイクロメモリーに移すことはできるので、トウジはまずそれを行っている。
「こんなものが役に立つとは思わなかったな。何でも取っておくもんだな」
「そうね。でも、ご先祖様のデータは壊れていないかしら」
「うーん。まあ変換して調べてみよう。それではっきりする」
リナが言う通り、データの破損がトウジにも不安だったが、とりあえずアダプターにつなげて新式へ変換することにした。運がいいことに、アダプターに差し込み、データを移行する過程で、破損がないことが確認できている。
「よーし。うまくいったぞ。後はこいつを読み込ませてと……」
順調に事が運べているトウジは上機嫌だ。この時代のマイクロメモリーは直径3センチ弱のコイン型で、これをコンピュータや携帯などの端末の読み取り部分にかざすと、文書や画像を瞬時にモニターへ映すことができる。マイクロメモリー内のどのデータを選択的に映すかは、タッチ操作によって直感的に簡単にできる。つまり、旧式マイクロメモリーのような差込口がないのだ。
データを読み込ませると、モニターには20代前半と見られる若い夫婦と、その息子なのだろう、小さな男の子が夫婦の母親の方に寄り添っている動画が映し出された。奇妙なことに夫一人と妻二人の組み合わせである。トウジにもリナにも初めて見る親子だったが、どことない親近感と懐かしさを二人とも感じている。
「俺達の何代後の子孫になるんだろうな。このマイクロメモリーを掘り出した君が俺達の血を引いているのなら嬉しい。そうでなくても、君はアテナビレッジに住んでいる誰かであるのは確実だろう。俺はアキヒトと言う」
「私はマリー。アキヒトの妻よ。旦那とは幼馴染だったの」
「私はネイと言います。あなたの時代には私はいないと思いますが、アテナは存在しているはずです。バイオノイドとしてのアテナの分身が私です。そして、マリーと同じくアキヒトの妻なんですよ」
ほとんど伝説として伝え聞いているご先祖様達の動いている姿を見ることができ、トウジもリナも感動に震えていた。リナなどは薄く涙を浮かべている。二人はモニターに映っているアキヒト達の姿を、時代を越えてすぐそこにいるもののように感じ、彼らとの血のつながりによる一体感を持って対峙している。




