第五十三話 まだ見ぬ未来の君に
「俺たちがいた時代は色々あってね。ラストホープ……今はオールホープに名前が変わってたか。そこのマザーコンピューターイシュタルと喧嘩したりもしてた。君たちの時代ではイシュタルともいい関係が保てていると思う」
そこまで語り、画面上のアキヒトは持参していた袋から何かを取り出した。
「これは、いざこざがあったイシュタルがくれたブレスレットなんだ。これのおかげで俺は命を拾うことができた。喧嘩していた時にイシュタルから貰った物なんだけどな。不思議なもんだ」
「あの時はこっちも心臓が止まるかと思ったわ……」
「そうそう。あれより怖いことはもうないでしょうね」
アキヒト、マリー、ネイ、三人のご先祖様は三様に思い出を起こしているようだ。そして、アキヒトが画面に向けてブレスレットがよく見えるようにかざすと、三人とも真剣な顔で画面に向き直した。
「このブレスレットはアテナビレッジの主である、ある人物に預けることにする。この映像を見ることができた君が、俺たちの子孫であるならば、その人物からブレスレットを受け取って君の所有物にしてくれ。そうでなければブレスレットを俺たちの直系の子孫に渡し、君にはその子のサポートを頼みたい」
「ブレスレットを預けている人物が、今後のあなたがどうするべきか、それを教えてくれるはずよ。それはもしかすると大変な道かもしれないわ」
「アテナもあなたをサポートするはずです。ただ、彼女の気はあまり進まないかもしれませんけどね」
トウジとリナは一言も漏らさないように、ご先祖様たちの言葉を聞いていたが、意味深すぎるメッセージの連続に正直困惑している。
「俺たちからのメッセージはここまでだ。まだ見ぬ未来の君。頑張ってくれ!」
映像はそこまでで止まったが、トウジとリナはしばらく画面を見て黙って考え込んでいた。
「アテナタウンの主と言うと……」
「あの人しかいないわね……」
座って考えていても仕方がないことに気づいた二人は、思っていたことを確認しあって、映像でアキヒトが言っていた主と思われる人物の所へ向かった。
件の主と思われる人物は、メディカルセンターで忙しそうにかくしゃくと働いている。年に似合わずテキパキと仕事をしていたが、トウジとリナがじーっとこちらを見ているのに気づいたようで、主は彼らに声をかけた。
「おう。どうした二人とも? わしに何か用かの?」
「セト爺さん。アテナタウンの主と言ったら、爺さんしかいないよね?」
「主? ……ああそういうわけか。アキヒトたちの映像を見たんじゃな?」
いつものように飄々としている中に、一本しっかりしたものが通った話し方をしているセトに対し、トウジとリナはゆっくりとうなずいた。




