第66話 クラス内競走
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球技祭も2日目の午後を迎えた。
決死の戦いも虚しく、俺たち1組は、各種目で優勝することは出来なかった。
バレーボールは、女子が準決勝、男子は決勝で同じ学年の1年6組に負け……。
バスケットボールも思うような結果は、残せなかった。
――来年は、絶対に優勝したい……。
リベンジに燃える俺だった。
俺たち、バレーボール組たちは、足取り重く、悔しさを滲ませながらも、1年1組の教室へ向かった。
廊下でも、他のクラスメイトから「お疲れ様!」と労いの言葉が飛んでくる。
「白原さん、惜しかったですね……」
「レシーブ、ナイスでした!」
「俺は、いつでも応援していますよ」
……うん。
労いの言葉は、全て華恋に向けて言われている。
ちょっと不機嫌になっていた華恋も、その労いの言葉に「ありがとう」と小さく手を振りながら、『みんなが憧れる女の子』としての完璧な笑顔で答える。
しかし、俺の方をチラッと見た時の瞳は、まだ少しだけ拗ねているように見えた。
しばらくして、1年1組の教室にたどり着いた。
俺たちを暖かく出迎えてくれたクラスメイトたち。
「みなさん、お疲れ様!」
「あと少しだったね……」
クラス内は、励ましの声で溢れていた。
それだけ、皆本気で球技祭に取り組んでいたのか……。
俺は、自分の席に静かに座った。
――疲れたな……。
俺は、席に座りながら背伸びをしていると……。
「そういえば、西川たちのソフトボール組が、決勝に進出したんだって」
クラスメイトの男子たちが、ソフトボール組の話をしていた。
俺たちは、バレーボールに気を取られていて、正直西川たちのことを忘れていた。
――というか、決勝に進出したんだって?
「えっ……それって本当?」
「うん、さっき西川くんたちが教室に戻って来て、嬉しそうに話していたよ?」
「ま、まじか……」
西川、決勝にコマを進められたのか。
「優作! 帰ってくるの遅いじゃん!」
教室の入り口。
キラキラとした目で、俺に手を挙げている西川の姿があった。
……ついでに、後ろには大和もこっちに手を振っている。
そして、その2人は、俺の席の前に歩き、立ち止まった。
「聞いたか? 優作……?」
「聞きましたか? 優作先生」
「何も聞いていないよー」
2人ともテンションが高い。
相当、決勝に進めたことが嬉しかったのだろう。
「そうか。実はなぁー」
「実はですね……」
「はいはい……」
西川と大和が、自慢げに話したそうにしていると……。
「2人とも、決勝進出おめでとう!」
西川と大和の背後から、館山さんが二人の背中を「ドンッ」と叩いた。
「えっ? 何で決勝に行けたこと知っているの?」
「げっ、館山さん!?」
西川が驚いて振り返ると、すかさず大和が不思議そうに首を傾げた。
「さっき、クラスメイトから聞いたから、優作くんも知っている筈だよ?」
あ……そのことは今、バラさないでほしい……。
「えっ? 優作も知っていたのかよ……なんで、言わないんだよ!」
「ごめん、ごめん……」
俺は、勝手に西川たちが敗退したと思っていた。
そのことが、ちょっと気まずかったからなんて言えない……。
「まぁ、決勝は応援してくれよな……」
「もちろんだよ! 午後からだっけ?」
「そう、午後の2時から!」
安心しろ……午後はしっかりと応援しにいく。
館山さんもウンウンと頷く。
「また、ホームラン打ってね!」
「ホームラン?」
そうか……西川はホームランを打ったから、こんなにテンションが高いのか。
館山さんの限られた時間の中、活躍できて良かったね……そう、心の中で思っていると。
「大和くんのバッティングが、優勝には必要不可欠だよね!」
「は、はい!」
――あれ……ホームラン打ったのって、大和だったの?
大和は、館山さんに褒められて、ニヤニヤと笑っている。
その2人のやり取りを見て、「えっ、俺の活躍の記憶は……?」とでも言いたげな複雑な表情を浮かべている西川。
「お、俺のピッチングも必要不可欠だよね?」
「そ、そうだね……」
館山さんは、西川からスッと目線を逸らし、苦笑いを浮かべながら「ちゃんと見ていなかったけど……」とボソッと呟いた。
「そ、そうだよね……」
教室に入ってきた時のドヤ顔全開のテンションと、今のしおれきったテンションを比べると、天と地の差がある。
対照的に、大和は褒められたことが嬉しかったのか、ますます機嫌が良くなっていく。
俺は、そんなテンションが落ちている西川の耳元で「決勝で大活躍してやれ」と励ましを入れた。
「大和! 俺がホームラン2本打ってやるからな」
宣戦布告をする西川。
――大和はチームメイトだぞ?
そんな大和も……。
「悟よりも活躍してやりますよ」
謎に2人の間にバチバチと火花が散っていた。
「ふ、2人の活躍楽しみだね……」
その2人の謎のライバル関係を見て、呆れたように若干引いている館山さんなのだった。
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