第64話 団結力
いつもお読みいただきありがとうございます!
第1セットは、迫水先輩の策略にハマってしまい、取られてしまった。
しかし、第2セットでは、こちらの作戦が上手くはまり、やり返すことが出来た。
そして、迫水先輩をイライラさせたことによって、相手の雰囲気も悪く、完全にこちらのペースに持ってこれている。
セットカウントは『1対1』。
相手が立ち直る前に、さっさと試合を決めたい。
「ピーッ!」
第3セットの笛が鳴り響いた。
サーブは、ずっと宮くん狙いのサーブを打ってきた迫水先輩からで、彼はボールを高く上げた。
――まさか、ジャンプサーブを打つつもりか?
迫水先輩は、サーブが上手かったな……。
試合では、ピンチサーバーもしていたっけ。
あの頃のジャンプサーブを打たれたら、誰も取れない……。
いよいよ、なりふり構っていられないということか。
俺と唐島くんで何とか上げるしかない……。
「唐島くん! 注意して!」
「お、おぅ!」
迫水先輩は、高く上がったバレーボールに向かってジャンプして、思いっきりサーブを打ってきた。
しかし……。
「ボトン!」
どんなにサーブが上手かった人も、ブランクと膝の怪我には勝てなかったのか、迫水先輩のジャンプサーブは、観客席の方に大きく逸れていった。
俺は、逸れたサーブを目で追っていたが、ここまで逸れる迫水先輩のサーブを見たのは初めてだ。
――迫水先輩……。
今は嫌いになってしまったが、あの頃は頼りになる憧れの先輩だった。
そんな先輩の面影はもう見えない。
その後の俺たちは、必死にボールを繋いで繋いで、ミスもみんなでカバーをしていた。
順調に点数を重ね『10対5』と大きくリードを奪っていた。
明るさが天と地の差がある両チーム。
そんな中、なりふり構っていられない迫水先輩は、ネット前に上がったボールに反応して、アタックを打ってきた。
「バァーン!」
そのアタックを、俺は完璧なタイミングで跳び、見事にブロックした。
「ゆ、優作……! す、すごい……!」
応援席から華恋の声と、黄色い声援が聞こえてくる。
「先輩……残念でしたね!」
「くっ……」
久々の……ボールが手のひらに当たる感触。
そして、目の前には眉間にシワを寄せて、俺を睨みながら、悔しがる迫水先輩の姿があった。
「こ、こいつ……」
向こうの空気はさらに悪くなる。
反面、俺たちの空気は最高潮に明るかった。
その後も1組の勢いは止まらず、ついに『14対9』でマッチポイントを迎えた。
そして、この大事な場面で、俺にサーブ権が回ってきた。
エンドラインに立ち、ボールを手に取る。
ネットの向こうでは、疲労と焦りで肩で息をする迫水先輩が、悔しそうにこちらを睨みつけていた。
—―これで、最後だよ……。
俺は大きく深呼吸をし、応援席の方を見ると、祈るように見つめる華恋の姿があった。
目が合うと、彼女はコクリと小さく頷いた。
そしてその瞬間、自然と肩の力が抜けていった。
――最後は、かっこいいところを見せてやるか……。
試合前から、最後は華恋にジャンプサーブを見せてやる……と実は、前から決めていた。
「ピーッ!」
笛の音が鳴り響く。
俺は、天高くボールを放り投げ、助走をつけて床を蹴った。
空中で弓のように体を反らせて、右腕を振り抜いた。
「いっけぇぇぇ!」
振り抜いたボールは、迫水先輩の真正面へと一直線に飛んで行った。
「……!」
決して本気で打つことは出来なかったが、俺の思いがこもったボールを、迫水先輩がレシーブ出来るわけもなく、ボールは大きく後方にはじかれ、そのまま体育館の床に勢いよく転がった。
「ピッ、ピィィーーー!」
その瞬間、試合終了を告げる長い笛の音が、体育館内に鳴り響いた。
「や、やったー!」
「よっしゃ~!」
コートの真ん中に、6人は集まり、歓喜の瞬間が生まれた。
応援席にいる華恋たちも「おめでとう」と拍手で迎えてくれた。
俺たちは、試合終了の挨拶を終え、応援席の方へ向かった。
「ナイスゲーム!」
華恋のその一言が、今の疲れた俺の体に染みた。
「……ちゃんと、見ていてくれた?」
「うん! ブロックも、サーブもキレッキレだったね! ……約束通り、すっごくカッコよかったよ」
華恋は少しだけ頬を染めながら、上目遣いで俺を見つめてきた。
――良かった……。
俺が出来る最大限のパフォーマンスを、ちゃんと華恋が見ていてくれてよかった。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
もし「続きが気になる!」「面白い!」と思っていただけたら、下の【☆☆☆☆☆】から評価やブックマーク、感想などをいただけると、執筆の励みになります!




