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疎遠だった幼馴染と高校で再開したら俺のタイプに変貌した件  作者: エンザワ ナオキ
第3章 学校生活編①

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第59話 ババ抜き大会 後編

いつもお読みいただきありがとうございます!

 大和が参加したババ抜き。

 華恋かれんは、大ピンチに陥っていた。

 

 ババ以外のカードに触れると「あ……」と声が漏れる大和。

 しかし、それは大和の作戦だったようだ。


 ようやく勝てる相手が出来たと思っていた華恋だったが、大和の策略に踊らされて、ここまで避け続けられたババをついに持ってしまった。


「くっ……負けたくない……」


 華恋は、胸の前にトランプを差し出した。

 絶対に表情に出さないぞ……という意思を感じるほどに、華恋はトランプと大和の顔を交互に睨みつけている。


「そんなに睨まないでください……」


「睨んでいないよ?」


 大和もその形相ぎょうそうに困惑を隠せない。

 華恋自身も、そこまで睨んでいるとは思っていないようだ。


「こっちですかね……」


「さぁ、どうでしょうか」


 大和は、左のトランプに指を掛けた。

 それに答えるかのように、低い声で華恋は返事を返したが、大和の表情は読めない。


「じゃあ、こっちはどうですかね……」


「さぁ、どうでしょうかね」


 次は、その流れで右のトランプに指を掛けた。

 華恋は、さっきよりも声は低くなった気がしたが、表情は全く変えなかった。


 ――華恋、上達したな……。


 個人的には、右のトランプが当たりにみえる。

 しかし、今までは「大体こっちだな……」と予想できたが、今回は確信が持てない。


 俺は、ふと大和の表情を確認した。

 大和も唇を尖らせて、どちらがババではないかを迷っている。


「こっちだー!」


 大和が引いたトランプは、左だった。

 そして机に裏面で伏せて、みんなが見えるようにゆっくりと表にした。


(JOKER)


 大和が引いたトランプはJOKERだった。


「おぉー! 華恋が、初めてババを引かせた!」


「おめでとうございます」


 館山さんと天音あまねさんは、華恋が初めて相手にババを引かせたことを喜んだ。

 華恋も嬉しかったのか、ニヤリと笑顔が隠せていない。


 大和は「反対でしたか……」と悔しそうにボソッと呟き、自分の持っているトランプ2枚を、裏面にしてシャッフルを始めた。


「さぁ、白原さん! 引いてください!」


「よ、よし……」


 華恋は、視線で大和のトランプを吟味ぎんみした。

 そして、その後に右から左とトランプを指で触り、大和の表情を確認する。


「……」


「……」


 お互い無言の心理戦が繰り広げられる。

 そして、大和の表情も全く変わらない。


 大和の強がりの可能性もあると考えたが、声が漏れているのをわざとやっていたとすれば、本当に心理戦に持ち込んでいることが分かった。


「こっちだー!」


「……!」


 華恋は、右のトランプを先ほどと同じように天に掲げた。

 そして、再び勢いよく机の上にトランプを叩きつけた。


(スペード 2)


 華恋が引いたトランプは、『JOKER』ではなかった。


「や、やったー!」


「えぇー! 負けました……」


 華恋は初めて心理戦に勝ったことに、小さくガッツポーズをしながら、小刻みにジャンプを繰り返している。

 その表情は、無邪気な笑顔に溢れていた。


「おめでとう! 華恋!」


 今日何戦も続いたババ抜きで、初めて勝つことのできた華恋。

 館山さんと華恋は、ハイタッチを交わした。


「大和……残念だったね」


「は、はい……」


 俺は、大和に「ドンマイ」と声を掛けた。


「も、もう一回お願いします」


 大和は、ちょっと悔しかったのか、皆に再戦を申し込んだ。


「え? 大和くんの頼みなら、しょうがないなぁ~」


 華恋は、初めて勝ったことで、調子に乗っている。

 先ほどまでは「もうババ抜きなんてしない……」と涙目で嘆いていたはずなのに。

 この現金で分かりやすいところも、昔から変わらない彼女の魅力だ。


 大和が再び、机に散らかっているトランプをまとめて、配ろうと準備を進めていると……。


「おい、大和? 悟? 何をしているんだ?」


「……!」


 教室の前の入り口から、大和と西川を呼び止める低い男性の声……。

 どうやら、バレーボール部の先輩のようだ。


「大和? 悟を呼びに行ったんじゃないのか?」


「ご、ごめんなさい」


「何、呑気にババ抜きしているんだ!」


「は、はい! 今すぐ行きます!」


「す、すいませんでした」


 先輩の鬼の形相を見て、大和と西川は、慌てて体育館へ向かった。


「悪いな、楽しい時間を遮ってしまって」


「い、いえ……私が誘ってしまったので、大和くんは怒らないであげてください」


 館山さんは、大和()()をかばった。

 まるで「西川はいくらでも怒っていいですよ」と言わんばかりに。


 先輩は、小さく頭を下げて、教室を出ていった。


「さて、もう1戦だけやって帰るか」


「えっ!」


 華恋は、自分をカモにしない大和がいたからもう1試合しようと思っていたようだ。

 その彼がいなくなった今、華恋は「もうやらない」と言い、帰り支度を素早くし始めたのだった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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