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疎遠だった幼馴染と高校で再開したら俺のタイプに変貌した件  作者: エンザワ ナオキ
第3章 学校生活編①

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第56話 西川はいいところを見せたい

いつもお読みいただきありがとうございます!

 バレーボール組が激闘の初戦を勝った後、俺と華恋かれんと館山さんは急いでソフトボールをしているグラウンドへ向かった。

 天音あまねさんとその他のクラスメイトは、10時半ごろから体育館で行われるバスケットボールの応援のため、残っていた。


「西川くんたち、勝っているかな?」


「そうだね、『絶対に勝つ!』と意気込んでいたけど……」


 俺の少し前を、華恋と館山さんは並走しながら廊下を歩いている。

 そして2人は、ソフトボールの試合状況について予想をしていた。


 グラウンドに到着すると、ソフトボールの試合はちょうど最終回を迎えていた。

 得点板を見ると、『3対4』で1組が負けている。


 しかし、1組は2アウト満塁という絶好のチャンス。

 そして、バッターボックスには、西川が立っていた。


 これは、館山さんにいいところを見せる絶好の舞台だった。


「あっ! 西川くんだ! 頑張れー!」


 館山さんは、大きな声で西川に声援を送る。

 そして、俺たちは1組のベンチ付近に移動した。


「西川ー! かっとばせー!」


「西川くん! いっけぇー!」


 俺と華恋も西川に声援を送る。

 俺たちの存在に気づいたのか、西川はバッターボックスでコクリと頷いた。


「よっしゃぁぁ! 任せとけ~!」


 ……いや、俺たちに頷いたのではない。

 これは完全に、館山さんを意識している。


 ――あいつ……わかりやすすぎるだろ。


 西川は、バットを大きく構え、鼻息を荒くする。

 いいところを見せようと、全身がガチガチに力んでいることが丸わかりだった。


 俺は心の中で、西川に「リラックスしてー」と念を押した。

 いや、俺でもこの場面で力まないことは無理だ……。


 相手ピッチャーが、第1球目を投げ込んできた。


「うおおおお!」


 西川は、バットに体が持っていかれるぐらいのフルスイングをかました。


「パンッ!」


「ストライク!」


 まぁまぁ。初球は仕方がない。

 2球目は、もっとリラックスしろよ……。


「パンッ!」


「ストライク!」


 まるでさっきのリプレイを見ているかのようだった。

 このままだと三振する……。

 嫌な予感しかしなかった。


「西川くん! 落ち着いてー! リラックス!」


「り、リラックス?」


「そう! リラックス」


 ベンチで応援する館山さんが、バッターボックスでガチガチになっている西川にアドバイスを送る。

 そして西川は、大きく深呼吸をして、気持ちを落ち着けた。


 相手クラスの声援も次第に大きくなる中、相手のピッチャーが第3球目を投げた。


 ――ど真ん中だ!


 これなら当てられるぞ……西川、かっとばせ!


 西川がさっきよりも抑えたスイングで、バットを振りぬいた。

 すると「カキィィン」という快音が、響く……はずだったのだが……。


「カーン……コロコロ……」


 西川が振りぬいた打球は、サードの正面にコロコロと力なく転がる。

 あまりにも打球がしょぼかったからか、西川はバッターボックスで立ち尽くしていた。


「あぁ……走れ! 西川」


 俺がバッターボックスで立ち尽くす西川に慌てて声を掛けると、あいつは我に返ったように走り出した。


 もう、誰もが試合終了……そう思った。

 しかし、サードが一塁に送球した……次の瞬間だった。


「……!」


 サードが投げたボールが、大きく逸れた。

 それはもう……とんでもない方向に。


 その隙に、3塁ランナーと2塁ランナーが帰還した。


「ゲームセットォ!」


 まさに棚から牡丹餅のような展開で、『5対4』で1組が勝利した。

 相手のエラーによるサヨナラ勝ちという、なんとも言えない劇的な幕切れだった。


 ――試合の終わり方も、西川らしいっちゃらしいか……。 


「やったー!」


「うぉぉおお!」


 グラウンドに、クラスメイトたちの歓声が響き渡る。

 しかし、打った本人はあまり納得がいっていないようだ。


「西川くん、綺麗な()()()()()()()だったね!」


「え、えぇ……あれは、エラーじゃないのか? なぁ、優作」


 館山さんは、西川に少し皮肉交じりの言い方をしていた。


 締まらない結果に終わってしまった西川は、俺に話を振ってきた。


 ――きっと、カッコよく決めきれなかったことが、恥ずかしかったのだろう。


 確かに、プロの試合でも、この決着のつき方は、ファンとしては複雑な心境になってしまう。


「ま、まぁ……当てたことで、相手のエラーを誘ったんだから」


 俺は、納得のいっていない西川に精一杯のフォローを返した。

 そして俺は、西川の耳元でこう言った。


「次は、カッコよく決めればいいんだよ」


「そ、そうだな……次は、もっとカッコつくようなヒット打つよ」


 西川は、苦笑いが収まらなかったが、「次こそは絶対に……!」と、もっとカッコよく活躍することを心に誓ったのだった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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