第52話 ついに開幕!
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俺と華恋は、いつもよりも若干遅く、学校に着いた。
二人の中には、気まずい空気が流れていた。
俺は、片足立ちで、下駄箱で上履きに履き替えていた。
すると……。
「おはよー、華恋! 優作くん!」
――バシッ!
「おはよう、葵!」
「痛って……びっくりした……」
館山さんは、俺の背中をバシッと叩いた。
そして、俺が「痛い」と彼女に訴えようとしたが……。
「華恋、髪型変えたんだねー! そのヘアバンド似合っているよ?」
「えぇ~? ありがとう」
館山さんは、華恋の髪型に興味津々だった。
「急に前髪あげちゃって、どうしたの?」
「今日は球技祭だからね! 髪が邪魔になっちゃうと思って!」
俺がそばにいるにも関わらず、二人は二人だけの世界に入っていった。
二人の女子トークに、全く入る隙はない……。
「全く……」
俺は、ボソッと心の声を漏らした。
――朝のドキドキはどこへやら……。
二人の後をこっそりついていくように、俺はトコトコと教室に入った。
そして、席に着くと、既にジャージに着替えてやる気満々の大和と西川が、西川の席で喋っていた。
「おはよー優作! 今日は球技祭だな」
「おはようございます。優作先生! 頑張りましょう!」
「あぁ~おはよー。が、頑張ろう!」
俺は、小さく頷きながら返事を返した。
二人は既に、部活の朝練で汗を流しているからか、テンションが無駄に高い。
「今日の試合何時からだっけ?」
「俺たちは、10時だったかな?」
「そっかぁ、それなら俺たちと一緒だな」
俺が出場するバレーボール、そして、西川と大和が出場するソフトボールは、第一試合が同じ時間から始まるようだ。
「なぁ、優作……二つ気になることがあるんだが」
「二つも? どうした?」
西川の気になることとはなんなのか。
少し眉間にシワを寄せ、真剣な表情になった。
「迫水先輩とは、いつ当たるんだ?」
「あぁ、お互いに勝ち進めば、明日の準決勝かな?」
俺は、昨日作成されたトーナメント表を確認した。
そして、一番の宿敵である迫水先輩率いる二年二組とは、順当に進めば明日当たる計算だ。
それまでは、絶対に負けるわけにはいかない。
いや、寧ろ俺たちと当たる前に向こうが負けるなよ?
自分でも驚くくらい、挑戦的な思考になっている。
「それなら、明日がメイン試合になりそうだね」
「ま、まぁ他のクラスがどれほど実力あるかわからないからね。それは、どの球技もそうだろうけど」
どんなクラスでも、油断はしない。
ひょっとしたら、バレーボール経験者がいるかもしれない。
いるといないで、やはり大きく変わってくる。
なるべく、経験者いないでくれよ……と、元バレーボール経験者の俺が実に都合の良いことを思っている。
「ソフトボールの方はどんなんだ? 勝てそうか?」
「いやぁーソフトボール楽しいですよ!」
「大和? 楽しいのはわかるんだけど……」
「はい! 特にバッティングが楽しいです」
俺は、勝てそうか聞いたつもりだったんだけどな……。
勝てるか勝てないかについては言及しないということは、自信はあまりないのか。
「優作がこないだピッチングの練習付き合ってくれてたらなぁ」
「いやいや、だからソフトボールが得意な姉ちゃんに聞こうとしたじゃん……それなのに、今の気になっている人に見栄を張りたいからって……」
「そ、それ以上は言うな!」
俺の話を遮るかのように、西川は大きな声で被せてきた。
流石に今のは意地悪が過ぎたか。
「本人に聞こえたらどうするんだ?」
「いやー悪い悪い」
西川は、華恋たちと談笑している館山さんの方をチラッと見た。
その視線でバレちゃうんじゃないか……と思った。
それにしても、普段あまり見ないからか、焦る西川は面白い。
俺は、ふと大和の方に視線を向けた。
すると、彼は笑顔で俺たちの会話を聞いていた。
「悟くん、良いところ見せられると良いですね!」
「え!? そ、そうだな……」
大和の一言に、照れ隠しのように頭を掻きながら返事をする西川。
どうやら、大和には館山さんが気になっていることを話しているようだ。
俺は、華恋にいいところを見せる。
そして、西川は、館山さんに良いところを見せる。
――お互いに、頑張ろうな!
本人には言わないが、俺は西川を小さく激励した。
「ピーンポーンパーンポーン」
「あ、ホームルームが始まるぞ」
クラスメイトが慌てて、席に着く。
間もなく、桃井先生が教室へ入ってきた。
「はぁーい。みんなおはよぉー!」
「おはようございます」
桃井先生のゆるーい挨拶がクラス内に響いた。
「今日から、ついに球技祭が始まるよぉ〜。みんな、怪我しないようにしっかりと準備体操をしてねぇ」
「はーい!」
桃井先生の言葉通り、しっかりと準備体操をしよう……。
怪我をするわけにはいかないからね。
……絶対に。
――俺は、何を考えているんだ?
これじゃあ、まるでこれから怪我をするみたいじゃないかと、自分で自分にツッコミを入れた。
「じゃあ、みんな時間に遅れないように。空き時間は、クラスメイトの応援をすることも忘れないようにねぇ」
「はーい!」
こうして、俺たちの球技祭一日目が始まった。
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