第49話 頼れる友達
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球技祭まで、1週間……。
俺は、クラスメイトには、迫水先輩との因縁は話さず、体育の時間には、ひたすらバレーボールの練習をしていた。
「優作、本当にお前は、スパイク打たないのか?」
「……俺は、打たないかな?」
宮くんは、俺がスパイクを打たないことに疑念を抱いていた。
「なんで打たないの?」
「それは、やっぱり威力が変わってきちゃうと思うんだよ。不慣れなレシーブで怪我とかさせたくないでしょ?」
しかし、理由は簡単だ。
もし、俺がスパイクを打ってしまったら、きっと簡単に勝ててしまう。
これは、慢心とかではなく、せめてもの経験者としての遠慮というやつだ。
力を抜いて打つことは出来るが、極力そんなことはしたくはない。
「俺が、みんなをサポートするから、暴れてくれー!」
「お、おう!」
最初よりも、みんなレシーブやスパイクなどが、上手くなってきている。
もちろん、完璧……とは言えないが、しっかりとボールが上がり、試合になるぐらいまで上達している。
――これなら、いいところまで行けるかもしれない!
そんな手応えも感じていた。
「おーい! 優作!」
「優作くん!」
そんな時、宮くんと唐島くんに呼び止められた。
二人は、いつもより眉間にシワがよっていた。
「ど、どうしたの? 二人とも……怖い顔して」
「優作……お前、なんで俺たちに黙っていたんだよ!」
宮くんが俺の肩をガシッと掴んできた。
「か、隠していた……? 一体何を……?」
「中学の時に、迫水先輩という外道に大怪我を負わされて、理不尽にバレーボールを辞めなきゃいけなくなったことだろ?」
「そうだよ! 水くさいよ……俺たち、せっかく友達になったのに」
「えっ……?」
何故、そのことを二人が知っているんだ?
迫水先輩との因縁を知っているのは、幼馴染の華恋と美那子、そして、同じ中学だった西川ぐらいのはず……。
「白原さんから聞いたんだ。『優作のために、力を貸してあげてほしい』って」
唐島くんが真剣な眼差しでそう告げた。
「えっ……華恋が?」
俺は、クラスの女子達とバレーボールの練習をしている華恋の方を向いた。
俺の視線に気づいた華恋は、ニコッと微笑んだ後、ペロッと小さく舌を出して『二人に私の思いは託したぜ』と言わんばかりのドヤ顔を見せた。
――いや、なんだそのドヤ顔は……。
だが、俺のために裏でこっそりと動いてくれたこと……彼女の不器用なお節介は、俺の胸に響いた。
「本当は、他の男の話をしている白原さんの願いなど、叶えたくはないが……。他ならぬ、優作のピンチだ。俺たちが力を貸してやるよ」
宮くんは、俺の胸に手を当てた。
――何だよ……その気合の入れ方は……。
そこは、ビシッと背中を叩くとかではないのか?
「俺も、ちょっとだけなら、小学校の時に、バレーボールの経験はあるから、過度な期待はしてほしくはないけど、力になれるように頑張るね」
そうか……唐島くんは、ちょっと経験があるって言っていたっけ。
「ありがとう……二人とも」
何よりも、俺のために、二人がここまでやる気を出してくれたことが、嬉しかった。
「か、勘違いするなよ?」
「え?」
「俺は、白原さんにお願いされたから、力を貸すんだ……。その相手が、優作じゃなかったら、力は貸していないからな?」
なんだ、このツンデレみたいな回答は……。
俺が、思わず笑みがこぼれそうになっていると、唐島くんが横から呆れたように口を開いた。
「何を言っているの? そんなツンデレみたいなこと言って」
「はっ? この野郎……誰が、ツンデレだって?」
「いや、今のはツンデレでしょ……」
「野郎……待て! 待てって言っているだろう!」
唐島くんが走って逃げると、それを宮くんが追いかけていた。
素直じゃない宮くんと、それに気づいた唐島くん。
二人の意外な一面に、今日俺は気づいた。
そして、協力してくれる二人や、俺のために頭を下げて過去を打ち明けてくれた華恋のためにも、球技祭で迫水先輩に勝てるように、全力で取り組むことを改めて誓った。
二人の追いかけっこを、兄弟喧嘩を見守る父さんのように見ていると、宮くんが突然止まった。
宮くんの口が、パクパクと動いた気がした。
彼は、俺に向かって何かを呟いた。
そこそこの距離があり、何を喋っていたかは、はっきりとは聞き取れなかった。
「何……?」
と、向こうに聞こえるように質問をするが……。
返ってきたのは、ニコッとした彼の笑顔のみだった。
――なんだ……?
彼の含みのある笑顔が、脳裏に焼き付いたのだった。
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