第47話 些細な変化に気づく男子はモテるのだろう
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華恋に球技祭で活躍を誓った翌日。
「やっぱり、俺の好きな人、白原さんにバレた気がするんだよ」
「えー? 本当か?」
お昼休みで賑わう教室にはそぐわない大声量で、一緒に食事をしていた西川から言われた。
ただの恋愛相談か……と最初は思ったが、西川の目は明らかに俺を疑う視線となっていた。
「先に言っておくけど、俺は華恋に告げ口はしてないからな?」
「そんなこと言って、幼馴染だからって言ったんじゃないのか?」
そう詰めてくる西川。
当然、西川の好きな人のことなど誰にも言っていない。
それよりも、昨日俺は過去の話を華恋に伝えたばかりだ。
そして、華恋にかっこいい姿を見せようと張り切っているところだ。
「えぇ? お前じゃないって言うなら、じゃあ誰が喋ったっていうんだよ……。見てみろ……白原さんがあんなにニヤニヤ視線を送ってくるんだぞ?」
「いやー俺じゃないよ。お前が館山さんのことを目で追いすぎているんじゃないか?」
「目でなんて追ってないよ? 今日はいつもと髪型が違うなって……」
「なに? 髪型がどうしたの?」
「はぁ!」
突如、俺たちの背後から柑橘系の香りとともに、聞きなれた声が降ってきた。
俺と西川が恐る恐る振り返ると、お弁当箱を持った華恋と館山さん、そして天音さんの三人が立っていた。
「西川くん? 髪型がどうしたって?」
館山さんが、不思議そうに首を傾げながら西川の顔を覗き込んだ。
俺は、西川から『髪型が違う』という言葉を聞き、館山さんの髪型をチラッと見た。
――今日の彼女は……髪型違うか?
俺は、館山さんの髪型の変化に全く気付くことが出来なかった。
「そ、そう……優作の髪型だよ! いつも寝癖が凄いけど、今日は格段に寝癖が付いているなって!」
「はぁ? 俺はちゃんと、毎朝寝癖は直しているぞ?」
そうだ、俺はちゃんと毎朝早く起きて、癖っ毛と格闘している。
中学の時など、多少寝癖がついていてもいいか……と思っていたが、今はちゃんと髪の毛を梳かしている。
「そうかな? 私には、全く分からないんだけど……」
館山さんは、目を細めて俺の髪をじろじろと見てくる。
「私にも、わかりませんね……」
それに便乗するかのように、天音さんも俺の髪を覗き込んでくる。
—―なんだ、この不思議な感じは……。
二人の同級生が、俺の髪をじろじろと見ている不思議な光景。
ふと、華恋を見ると……。
「確かに……いつもより、髪の毛が跳ねている気がしなくもない……」
一人で俺の髪型を分析していた。
「お、俺の髪型は、もういいから! そんなにじろじろと覗き込まないで……」
俺は、頭を両手で全力で隠した。
いつもとは違う恥ずかしさを感じた。
「あ、そう! 髪型と言えば、私のヘアゴムを少し変えたんだー!」
「ヘアゴム?」
「そう! だから、いつも下ろしている髪をまとめてみたんだ!」
館山さんは、普段下ろしている髪をサイドで軽くまとめていたらしい。
そう言われると、確かに多少の違和感を覚える。
――やばい、館山さんの変化には全く気付いていなかった……!
「ゆ、優作くん? そのリアクションは、私の髪型が違うことに気づいていなかったよね?」
「へっ……! そ、そんなわけないでしょ?」
「本当かな?」
館山さんは、俺の顔をジロっと睨みつけてくる。
本人に気づいていなかったなんて、とても言えない……。
「ゆ、優作が気づくわけないよ?」
「か、華恋?」
「優作は、小学校の時も、私が髪を切っても気づかないし、高校になっても気づいていないんだから……」
「そ、それは……」
華恋の変化に気づいていないわけがない。
髪を切ったこと、柔軟剤が変わったこと、携帯のケースが変わったこと……など、小さな変化は、小学生のころから気づいている。
――まて? 柔軟剤が変わったことに気づいているのは、行き過ぎているか?
いや、そんなことはない。
西川もそうだが、気になっている人の些細な変化は、その日のトピックになる。
「ちゃんと、気づいてるよ……わざわざ言わないだけで……」
「えっ……」
俺の言葉に、華恋は一瞬だけ目を丸くして言葉を詰まらせた。
「言わないだけ? それなら、私がいつ髪を切ったか、当ててみなさいよ」
「それは……」
「やっぱり、分からないのかな?」
先週と今週で、髪型に大きな変化はないが、ボリュームは収まっている。
そのため、先週末の土日に切ったことは、分かっている。
「せ、せんしゅう……」
「なに? 聞こえないんだけど?」
「先週末!」
俺は、目線を逸らしながら、壁に向かって答えを言った。
「は! せ、正解なんだけど……」
「流石ですね。緑ヶ丘さん」
俺が正解を言ったことを華恋は驚き、天音さんも感心していた。
「異議ありだよ! 優作くん?」
「い、異議あり?」
館山さんは、俺の回答に異議を唱えた。
――ここは、裁判所なのか?
俺は、何に異議を唱えられるか、何となく予想できる。
何故なら、『いつ髪を切ったかわかる?』の質問の答えは、大体先週末になることが多いと思ったからだ。
俺は、華恋が髪を切ったことは、すぐに分かった。
しかし、きっと館山さんは、俺が勘で当てたと思っているのだろう。
「異議は認めない!」
ほかの質問をされたら、答えるしかない状況になってしまう。
ここは力押しで、館山さんに勝って見せる……!
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