第42.5話 女子の意地(サリィ視点)
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「それ!」
「まかせて!」
私たちは、球技祭に向けて、バレーボールの特訓をしています。
「いくよー、館山さん!」
「はーい、いつでもきやがれ! 優作くん!」
特訓は、緑ヶ丘くんが率先してくれています。
彼は、中学時代に全国大会にも出場したチームのスタメンだったらしいです。
今はその面影は全く見えませんが、凄いですね……。
高校生活が始まって、最初の大きなイベント。
私は、生徒会入りを志す学級委員長として、1組に栄光と栄誉をもたらしたいと思い、全力で取り組んでいます。
今はレシーブの練習をみんなでしています。
「私にもボールをください!」
私も小学生の時には、バレーボールをしていました。
その時は、あまりにもセンスがなくて、やめてしまいましたが……経験者として、みんなを引っ張っていきたいと思っています。
葵や白原さんたちには『スポワイ』にて、醜態を晒してしまったので、なんとか名誉挽回したい気持ちでいっぱいです。
「はいよー! 行くよ、天音さん!」
緑ヶ丘くんが、私に上げやすいボールを打ってくれました。
「はーい!」
私は元気な掛け声と同時に、ボールの落下地点に素早く移動しました。
「ドォーン」
「……!」
私が上げたボールは、コート外へ転がっていきました……。
かなり自信はあったのですが、なかなか上手くいかないものです。
それよりも、ボールが当たった位置の腕が赤くなっています。
この痛みが、なんだか懐かしい気持ちにさせてくれます。
「私もー! ……あっ!」
「まかせてー! ……いてっ!」
他のクラスメイトも、トスを上げるのに苦戦をしている方が多いです。
なんとか、私も引っ張っていけるように、早くコツを掴まなくては……。
「天音さん、もうちょっと力抜いて! リラックスだよ!」
「は、はい……!」
その後も、力を抜いてリラックスを心がけていましたが、なかなか上手くいかず、気が付けば授業ももうすぐ終わるところまで来てしまいました。
緑ヶ丘くんは「トスの練習をしよう」と仰っていましたが、その理由がなんとなく分かってきました。
そんな彼にアドバイスを貰いたいけど、白原さんと親密そうに話しているので、邪魔するわけには行きません……。
それにしても、白原さんはさっきからお顔が真っ赤です。
体育館が少し暑いからでしょうか?
……それとも、緑ヶ丘くんの指導が熱血すぎるのでしょうか。
「……いえ、あれはきっと『青春』というやつですね。私にはわかります」
一人で納得して深く頷いていると、不意に背中をポンと叩かれました。
「サリィ、何一人でうんうん頷いてるのー?」
「あ、葵……。緑ヶ丘くんにアドバイスを貰いたいんだけど、白原さんに指導しているみたいで、とても熱心だと感心しておりました」
「あ、あぁ~。サリィは分かっていないねぇ。あれはね、『バレーの熱気』じゃなくて『別の熱気』だよ?」
そう言うと、葵はニヤニヤと笑いながら、二人の方を指差しました。
私には、葵の言っている意味があまり分かっていません。
「別の熱気、ですか?」
「そ! 『恋の熱気』ってやつ! ほら、私たちもあのイチャイチャ空間に突撃しに行こっか! 今は授業中ですよーって……」
「えっ、ちょ……。葵! お邪魔をしては……!」
私の制止も聞かずに、葵は私の腕を引いて、二人のもとへ歩みを進めます。
『恋の熱気』などは、私にはわかりませんが、きっと土足で踏み込んでよい領域ではないことは、いくら私でもわかります。
遠くから二人が会話している姿を見て、自然と私も顔が赤くなってしまいそうでした。
――これが、青春というものなのですね。
私には縁がありませんが、いつかそんな熱気を感じる時は来るのでしょうか。
私は、そんなことをバレーの特訓中に考えてしまう、少し悪い子なのでした。
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