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疎遠だった幼馴染と高校で再開したら俺のタイプに変貌した件  作者: エンザワ ナオキ
第3章 学校生活編①

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第43話 過去との接触

いつもお読みいただきありがとうございます!

「キーンコーンカーンコーン」


 体育の授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。


「え!? もう1時間経ったの?」


「本当ですね……早すぎます」


 この授業を一番熱心に取り組んでいた、館山さんと天音あまねさんが、時の流れの速さに驚いていた。


 俺は、各所に転がっているボールを片付けていた。

 次の授業でも使うネットはそのままにしていたが、紐が緩んでいたので、締め直していると……。


 ―—締め直すの……懐かしい。


 俺は、ネットの紐を締めることは得意だった。

 先輩からも「優作は締めるの早いね」とよく言われていた。


 一つ一つの作業や工程が懐かしいと、感傷に浸っていると……。


「あれ!? 優作くんじゃないっすか?」


 俺は、体育館の入り口から聞こえる低い男の声の方向を向いた。


「……! さ、迫水さこみず先輩?」


 そこには、中学時代のバレーボール部で世話になった迫水先輩の姿があった。

 その時よりも、髪は長髪になっており、体型は少しぽっちゃりとした様子だ。


「元気だったかー?」


「え、まぁぼちぼちです」


「そっかー! お前もこの高校だったなんてなぁ」


 ガハハと笑う迫水先輩は、俺と肩を組んだ。

 俺が違和感を覚えるほど、その肩組みは強引だった。


 ――こんなにガンガンと来る人だったか?


 普段は、遠いところからみんなを見守っているような印象が強かった。

 それが心強く、後先考えずにバレーボールに集中ができたわけだが。


 そして、俺は疑問に思ったことがある。


「迫水先輩、ひとつ質問いいですか?」


「ん? どうしたー?」


「先輩……バレーはやっていないんですか?」


 そう、ここの体育館に来ると言うことは、彼はもう『バレー部』ではない。

 バスケをするのかという疑問も浮かんだが、先輩は苦手だったはずだ。


 それに、元々は俺の控えだったとはいえ、全国大会でスタメンのセッターを務めたことを考えると、もっと強豪のバレー部からスカウトが来てもおかしくない。


「あ、あぁ……実はなぁ……」


「実は……?」


「俺も、膝を壊したんだよ」

 

「……え!?」


 俺と、迫水先輩の間に、数秒の沈黙が生まれた。

 それは数秒にしてはとても長く、辛い時間だった。


 何故なら、俺も同じように膝の靭帯を怪我し、すべてを失う絶望を味わったからだ。

 迫水先輩がどこまでの怪我をしたかは、恐ろしくて聞くことは出来なかったが、どれだけ辛い思いをしてきたかは痛いほどわかる。


「先輩……」


 苦しく、出てきた言葉はそれだけだった。


「俺はなぁ、もうバレー部ではない」


「そ、そうなんですね……。俺も、実はバレー辞めちゃったんですよ」


「……」


 俺もバレーボールを辞めたことを、迫水先輩に伝えた。

 すると、先輩はしばらく沈黙を保っていた。


 ……それは、当然なのかもしれない。

 何故なら、迫水先輩が練習で打ったサーブが、膝に違和感を持っていた俺に、運悪く当たってしまった……。

 そして、止む無く俺はバレーボールを続けられなくなってしまったからだ。


 俺は今まで、自分のバレーボールを奪った()()()は、ただの運の悪い事故だと思っていた。


 この言葉を聞くまでは……。


「お前に、ボールを打ち込んだ……あの日の仕打ちなのかもしれないなぁ」


「え、ボールを打ち込んだ?」


 迫水先輩が何を言っているか、俺にはすぐには理解出来なかった。


「あぁ、気づかなかったのか? 俺が、お前の膝の違和感に気づいていて、少し怪我させてやろうと思い、スパイクを打ち込んだことを」


 迫水先輩は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、俺に衝撃の事実を並べていく。


「……え? それって、どういう意味ですか?」


「俺はあの時、チームで一番上手いと煽てられていた。……お前が現れる前まではなぁ」


「そ、それは、先輩から何となく聞いていましたけど……」


「ほぉ~? 知っていて、あの態度をとってきたのか?」


「あの態度……?」


 俺には、全く思い当たる節がなかった。

 それどころか、能天気な俺は全く気づいていなかった。

 迫水先輩に、恨みを買われていたことに……。


「お前が、俺に言ったんだよ……」


「……何を、言ったんですか……」


「迫水先輩がベンチにいると、心強いです……ってなぁ」


「え?」


 この言葉が、恨みを買う理由なのか?

 俺には、全く理解が出来なかった。


「お前は、ベンチでゆっくりしていろ? って意味だよな?」


「そ、そんなつもりでは無くて……」


 迫水先輩がベンチにいることで、俺たちも安心して、試合に臨める。

 ……万が一、俺にアクシデントが起きたり、調子が悪くなったりしても、迫水先輩がベンチにいる……。

 その安心感を褒めたつもりだった。


「まぁ、お前はバレー脳には長けているが、人の感情を読むことに関しては、欠如しているからな」


「え……そ、そんな……」


 俺は、何も言い返すことが出来なかった。


「キーンコーンカーンコーン」


 次の授業が始まるチャイムが鳴り響いた。


「フッ、その様子だと、お前もバレーを選んでいるんだよな……」


 俺は、迫水先輩の言葉は聞こえていたが、返事を返すことが出来なかった。


「お前の組に当たったら、絶対に負けないからな? 全力で叩き潰してやる」


「……!」


 俺のせいで、あんな風に皆でワイワイとバレーボールが出来なくなるかもしれない。

 俺は、迫水先輩と当たる前に、1組が負けてほしい……情けないことに、そんな風に思ってしまった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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