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疎遠だった幼馴染と高校で再開したら俺のタイプに変貌した件  作者: エンザワ ナオキ
第3章 学校生活編①

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第39話 幼馴染は、味覚が偏っている

いつもお読みいただきありがとうございます!

 高校生活、最初の中間考査を終えて、幼馴染3人は、再び俺の部屋に集まっていた。


 最初は、俺の部屋に人が集まることに違和感しかなかったが、人間は不思議なもので、段々と慣れていくものだ。


「美那子……本当にありがとう!」


「いいえ、あなたが勉強頑張ったからだよ」


「美那子もトップ10入りおめでとう!」


「もうちょっと、自信あったんだけどね……」


 2人は、目の前で互いを称え合っている。

 相変わらず、机の上に置いてある煎餅をパリパリと食べる2人。


 この光景も見慣れたものだ。


「……あれ?」


「……ん? どうした?」


 華恋が、机の上に置いてある、袋入りの煎餅を味ごとに綺麗に並べていく。

 そして、彼女は俺の方を睨み、頬を膨らませた。


「優作! いつもの味がない!」


「いつもの味……って、のり塩か。昨日食べちゃったかも」


「なんで? 明日来るってわかってたのに、私の分も残しておいてくれなかったの?」


「いや、そんなに食べたいなら、自分で持ってきなよ?」


 華恋は、不満そうにこちらを睨む。

 睨まれても、()()()味の煎餅が出てくるわけではない。


「華恋? この味も美味しいよ?」


 そう言うと、美那子は自分が食べている煎餅を1枚、華恋に食べさせた。


「パリっパリ……ん!? これ、何味?」


「これはね、『わさび醤油味』だよ?」


「わさび醤油? ……なにこれ、美味しい!」


 そう言うと、華恋は綺麗に並べていた煎餅たちから、わさび醤油味を取り出し、袋を破った。


「のり塩と争うぐらい好きかも!」


「お、そっかー……って、マジか」


「ん? どうしたの? 優作……」


 俺は、華恋に()()()()()()の煎餅が気に入られたことが複雑だった。

 なぜなら、2人はわさび醤油味の煎餅をあまり食べない。

 俺はこの味が一番好きだったから、2人が帰った後にボリボリと1人で食べていた。


「この味……美味しいよね!」


「うん! いつも残しちゃってたのが、勿体無い」


 華恋は、頭を抱えて大げさに後悔をしている。


「俺の密かな楽しみだった、わさび醤油味が……」


 俺がボソッと呟くと、華恋と美那子がピタッと動きを止めた。


「えっ? 優作、これそんなに好きだったの?」


 華恋が、手にしたわさび醤油味の煎餅をまじまじと見つめる。


「そう……意外とツンとした味が癖になって、華恋たちが帰った後、一人でよく食べていたんだよね」


「あ、そういうことだったんだ! いつも、わさび醤油味ばかり残して、ちょっと悪いなって思っていたんだよね……この世には、美味しいものってまだまだあるんだね……」


 急にスケールが大きいことを言い始める華恋。


「まぁ、美味しいのがバレちゃったのなら、皆でバランスよく食べていこう」


「そうだね! バランスよく食べていこう」


 そうは言ったが、華恋は、再びわさび醤油味の煎餅の袋を開ける。

 机の上には、悲しくも何枚も残る『コンポタ味』と『明太子味』があった。


「バランスよくって言っているのに……」


「私は、コンポタ味好きだよ」


 美那子は、コンポタ味の煎餅を手に取った。


「ちょっと、しょっぱいのばかり食べていたら、甘いもの食べたくなっちゃった」


「甘いもの? チョコとかなら、冷蔵庫にあった気がするけど」


「本当!? そのチョコ食べたい!」


 華恋は、煎餅をパリパリと食べながら、俺に「取って来て」と目で訴えている。


「人使いが荒いんだから……」


「いいでしょ? 私のおかげで、英語の点上がったんだから」


 それを言うならば、華恋は、俺のおかげで数学の点が上がったと思うが……。

 言い返すと面倒臭そうなので、ここはグッと堪えた。


 すると、華恋は悪戯いたずらっぽく微笑みながら、手元にあったわさび醬油味の煎餅を、俺の口元へと差し出してきた。


「ほら、早く取ってきたら、私の手元にある1枚、食べさせてあげよう」


 学校では『みんなが憧れる女の子』のはずなのに、俺の部屋だと途端に距離感がバグる。

 至近距離で見つめてくる華恋の顔立ちに、俺の心臓は一瞬で跳ね上がった。


「えっ!? いいよ……自分で食べるから」


「私が、直々に食べさせてあげようとしているのに……もうこんなチャンスはないからね? ……ほら、あーん」


 こんなチャンスは、二度とないかもしれない。

 一瞬、心のどこかに迷いが生まれた……その時だった。


「全く、この2人は……。ねぇ、私まだここにいるんだけど?」


 机の向こうで、美那子が顎に手を突きながら、完全に呆れ果てたジト目を俺たちに向けていた。

 演劇志望だけあって、その演技力は無駄に高い。


「あ、ご、ごめん! じゃあ、美那子にも食べさせてあげるね?」


「はーい……パリッ」


 俺の目の前で、美那子は華恋からの()()()を見せつけてくる。


 ――くっ、見せびらかしやがって……。


 俺は、ちょっとだけ、美那子が羨ましいと感じたのだった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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