第4話 放課後カレンタイム 化けの皮
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俺は西川とのファミレスでの食事を終え、帰路についていた。
「じゃあ、また明日なー」
そう言うと、西川とT字路で別れを告げた。
やっと1人になれた……。
これが正直な感想であった。
華恋の変貌を整理する間もなく、放課後を迎え、西川とご飯を食べていたのだから。
ようやく1人になり、「何故、華恋がああなってしまったのか」を考察することができる。
俺は家に着くまでの間に3つの予想を立てた。
1つ目、真っ先に思いついたのは、高校デビューだ。
恐らく、転校先でも元の性格のままでいたら、彼氏もできず、高校生活に支障をきたしてしまうと思ったのではないだろうか。
――引きこもりに、彼氏の心配をされる華恋って……。
「まずは、自分の心配をしなさい」
そんな台詞が、華恋の声で脳内に再生された。
2つ目は、転校先に美しい同級生や憧れの先輩がいたのではないだろうか。
転校先で憧れる同級生や先輩を見て、私も近づきたいと思ってイメチェンをしたケースだ。
これも、1つ目と大元の理由は変わってない気がするが……。
――俺もわかる……中学の柔道部にかっこいい先輩いたもん。
「おりゃぁぁ! 優作は本当に弱いなー」
苦い思い出が蘇る……。
俺は、数ヶ月だが柔道クラブに入っていた。
そこには既に華恋もいたのだが……あいつは容赦なかった。
小学生の時、巴投げをされた時の記憶だ。
一瞬、その時の衝撃を思い出した体が、ピクッと反射した。
考察を進めるほど、昔の華恋を思い出してしまうが……。
最後の1つは……。
これは考えるだけでもゾッとしてしまうのだが……俺の好みになりたかった……とか?
「……!」
さっきピクッとなった体が、またもやピクッと反応した。
――考えすぎか……。
華恋が俺の好みを知っているわけでもない。
ましてや小学生の頃なんて、俺の好きなタイプは〈優しい〉とか〈教科書見せてくれる〉とか〈給食の時、飲まない牛乳をくれる人〉とかだ。
とにかく、俺のタイプを知る術はない。
全く、深く考えすぎである。
そんなことを考えていると、俺は自然と自宅の前に着いていた。
――やべ、白原家過ぎちゃった。
ま、いっか。荷物も重いし、一旦着替えてから挨拶に行くか。
「ガチャ」
「ただいまー!」
俺はドアを開け、玄関に入った瞬間、ある違和感に気づいた。
「く、靴が一足多い?」
俺の実家の玄関は、あまり広くはない。
四人分の靴とサンダル2足で、たちまち足の踏み場はなくなる。
まだ、父さんも帰ってきている時間ではないし、増えている一足は見慣れない女子もののローファーである。
――ま、まさか……いるのか?
俺は、自分の部屋へつながる階段をこっそり上がり、荷物と上着を置いた。
リビングからは、教室で聞いた女性の声が聞こえる。
――間違いない、華恋が下にいる。
俺は、リビングに向かいたくなかった。
それは何故か……。
母さんとお姉ちゃんは、間違いなく俺のタイプにドストライクの華恋について、どう思うか問いただしてくるだろう。
その問いに、俺はなんて答えればいいか。
その回答が思いつくまで、俺はリビングに行きたくない。
今行ったら間違いなく「タイプではあるね」とか「可愛くなった」とか、華恋が勘違いしてしまいそうな台詞しか出てこなくなりそうだ。
そしたら、同じクラスメイトとして普通に接しにくくなる。
なんとか、それだけは避けたかった。
時計の長針は、帰宅してから半周回っていた。
誤魔化し方はなんとなく思いついたから、リビングに顔を出すか……。
俺は、階段の手すりに掴まり、ゆっくり降りた。
階段を降りきると、リビングから盛り上がっている声が廊下にまで響いていた。
その声から、何をやっているのかはなんとなくわかったので、そのままリビングの扉を開けると……。
「ただいまー」
「ローン! タンヤオ! 裏ドラ2! ドラ2! って……、あ」
ピタリと、リビングの時が止まった。
雀卓を囲む3人。
その中で、華恋が満面の笑みで勢いよくガッツポーズをしていた。
俺とバッチリ目が合った華恋は、掲げた拳をゆっくりと下げて、何事もなかったかのように静かに椅子に座った。
「おかえりー優作。華恋ちゃん、恐ろしいまでに、ドラ麻雀するねぇー」
お姉ちゃんが腕を組みながら、椅子にもたれかかっていた。
すると、お姉ちゃんは何かを思い出したかのように、椅子から降りて、俺のもとに駆け寄ってきた。
「優作ー! 華恋ちゃんだよ! って……知っているか……」
「うん、クラスメイトだからね」
そんな興奮しているお姉ちゃんをよそに、俺は淡々と返答をした。
さっきまで、麻雀で熱く盛り上がっていた人のリアクションではない。
「ゆ、優作くん、もう聞いてるかもしれないけど、また隣に戻ってきたの」
「今朝、母さんから聞いたー。またよろしくね」
俺はどこか、返答が自然と棒読みになっていた。
麻雀であがった時のトーンと、今のトーンは全く違う。
「あ、挨拶もできたので帰りますね。ちょっと、優作くんに話したいことあるので、家まで来てくれますか?」
「え、まぁ……いいけど」
華恋は明らかにムスっとしている。
この姿を見られたくなかったのか……それなら、俺の家に来てまでドラ麻雀するなとツッコミたくもなるが。
雀卓から静かに離れ、俺は華恋を家まで送り届けることになった。
玄関に向かうと、リビングからニヤリとしている母とお姉ちゃんの姿が見えた。
麻雀を楽しむ、華恋ちゃん。
作者の話になりますが、私も時々麻雀をします。
ただ点数の計算方法はわからないので、アプリやゲームですることになってしまいますが……。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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