第34話 大和におまかせ!
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調理実習も佳境を迎える。
俺たちB班は、カレールーを入れてグツグツと弱火でかき混ぜている。
そして、ほうれん草の胡麻和えも上出来だ。
「緑ヶ丘くんって、料理上手なんだね!」
「ち、小さい頃から、両親の手伝いをしていたからね……」
「そうなんだ! 料理できる人って、素敵だな!」
「夏川さんも、味付けとか完璧だよ!」
初めて話す夏川さんとも、少しずつ仲良くなった。
俺は、小さい頃から料理をしていて良かった……と、女子から褒められるくすぐったさに少しだけ思った。
唐島くんや安藤さんとも、少し仲良くなった気がする。
こうやって、クラスメイトとの輪が広がったのも、館山さんのお陰だ。
ふと、館山さんと西川の様子へも視線を向けた。
そうだ、華恋と天音さんも気になる。
しかし、西川の恋路も応援しなくては……!
「館山さんって、料理上手なんだね」
「えっへん! ありがとー! 西川くんも底からカレーをかき混ぜてくれてありがとう!」
2人は、互いに褒め合っている。
何となくいい感じに思えた。
「お米もいい感じに炊けているよー」
実際にこの班は、日頃から料理をしている人や、していなくても器用な人が揃っていた。
そのため、B班には、和やかな空気が漂っていた。
しかし、そんな和やかさとは無縁の、殺伐とした空気を、俺は遠くからヒシヒシと感じ取った。
俺は、F班の方を確認した。
すると……。
「天音さんは、野菜を中火で炒めて欲しいです。その方が、後々火の通りが良くなります」
「白原さんは、出てきた洗い物をすかさず洗ってて欲しいです。料理は、片付けと並行でやると、かっこいいですよ!」
「〇〇さんは……」
「〇〇くんも……」
大和は、完全に料理の司令官となっていた。
まるで、どこかのネズミがシェフの美味しいレストランを思い出すような、的確な指示……。
「大和くんは、自分の力を封印して、班員の料理スキルと適性を見抜いて、指示を送っているんだよ」
「うわっ、誰!?」
俺が、大和の姿に感心していると、隣にポツンと割烹着姿で、三角巾を被っている男が立っていた。
「誰とは失礼だな……クラスメイトで、F班の宮 卯月だよ!」
「え? あぁ宮くんか……」
宮くんは、大和とよく喋っている。
その為、時々喋る仲ではあるが、姿が給食のおじさんすぎて、一瞬誰か分からなかった。
「彼は、監督になれる器を持っているよ。指示出しが的確で、F班の効率がみるみる上がっているよ」
「は、はぁ……」
――お前も手伝えよ……。
俺は、そうツッコミを入れたかった。
「卯月ー? 何サボっているんですか?」
「ひぇ!」
眼光鋭い大和がこちらを睨んでいる。
普段の温厚な彼からは想像もつかないプレッシャーだ。
宮くんは、慌ててF班に戻って行った。
「優作先生も邪魔しないでください」
「ごめんなさい!」
大和のキャラが、完全に変わっている。
いつも、ノホホーンとボケっとしている彼には見えない。
「おい西川……大和、キャラ変わりすぎじゃないか?」
「う、うん……追い詰められて、何かが吹っ飛んだんだろう」
西川も初めて見る姿のようだ。
「それにしても、大和もなかなか大胆な指示を出すねぇ」
「え?」
「だって、得意なことしかさせないよ? 華恋も皿洗いしかさせられていないし……まるで、下積みの料理人みたいだね」
館山さんが、大和の指示を分析した。
確かに、華恋は皿洗いだけで「他、他に何か手伝えることは……ないかしら?」と、美少女の仮面を保ちつつもオドオドとしている。
天音さんは、野菜を炒めるだけ……。
他の班員も、適材適所の作業しか行わせていない。
「もう、作り切ることに全力を注いでいるね」
「う、うん……」
大和はきっと1人でカレーも副菜も作り切れるだろう。
だけど、班のメンバーに指示を出して、みんなで作り切ることにシフトしている。
いろいろなことをやらせるのではなく、まずは一つのことだけを集中させて、成功体験を作る。
そのためか……。
「天音さん! 野菜の炒め方、完璧です!」
「白原さん! お皿に汚れ一つもありません!」
「〇〇さん! 〇〇くん!」
出来たことは素直に褒める……。
それが、F班のみんなには嬉しかったのか……。
「みんなで、カレーと副菜を作りきろう!」
「おー!」
なんか、謎の一体感を生んでいる。
大和の頑張りもあってか、全ての班は時間内に調理実習を終えることが出来た。
戸惑っていた華恋と天音さんたちも、最後には自分たちで作った達成感からか、満足そうに笑顔でカレーを食べていた。
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