第32話 2人の料理音痴
いつもお読みいただきありがとうございます!
今回から、調理実習が始まります。
ゴールデンウィークも終わり、学校が再開した。
休み時間になると「〇〇行ってきた」や「〇〇食べた」など、ゴールデンウィークをどう過ごしたかの話で盛り上がった。
そして、久々の授業ということもあり、授業中に周りを見ると疲れきっている人が多数いた。
前を見ると、西川はウトウトしており、左を見ると館山さんは、ノートをしっかり取っていると思いきや、絵を描いていた。
俺の視線に気づいた館山さんは「シィー」と口に指を当てていた。
天音さんと大和は、しっかりと授業を受けているように見える。
――さすが優等生!
最後に華恋の姿も見たが、しっかりとノートを取っている。
中々集中出来ないゴールデンウィーク明けに授業を聞いているのは偉いと思った。
そして、授業は昼休み後の5時限目を迎えた。
「さて、来週は調理実習として、カレーを作りたいと思います」
家庭科の授業で、来週は調理実習があるらしい。
昼休み後にカレーを食べるのか……胃のキャパを空けとかないと残すことになりそうだ。
「班については、カレーは作る量が多くなってしまうので、6人1組でお願いします」
このクラスの人数は30人。
5つの班が出来るわけだが……。
「キーンコーンカーンコーン」
「それでは、来週の実習までに、班を決めておいてくださいね」
授業が終わり、先生が教室を後にした。
先生がいなくなり、休憩時間。
クラス内には「一緒の班でやろー」などの班分けの声が至る所から聞こえる。
先生によると、班の分け方は特に指定はない。
席が離れていても、華恋や天音さん達とも班が組める。
つまり、ゴールデンウィークのメンバーで調理実習が出来る。
西川のためにも、この6人で固まるのが良いと思っていたのだが……。
「優作くん」
「館山さん? どうした?」
館山さんが席に座りながら、俺の肩に手を伸ばして、トントンと叩いた。
「サリィは、やめた方がいいよ?」
「え!?」
「サリィは、料理が大の苦手だから……」
それは意外な事実だ。
何でもできる優等生だと俺は思っていた。
それなら、俺も言いたいことがある。
「華恋も、あんなに完璧そうに見えて料理はすごく苦手なんだ」
「え! 意外だね……」
館山さんは、俺がサリィちゃんが料理出来ないと聞かされた時と全く同じ反応をした。
だからこそ、俺たち2人は「華恋と天音さんの面倒は、俺たちが見ないといけないな」と、小さく頷き合った……のだが……。
すると、前の席で後ろを向きながら、その会話を聞いていた西川が、俺たちに「後ろ……後ろ」と小声で話した。
「後ろー?」
「葵! 何を言っているんですか?」
俺たちが恐る恐る後ろを振り返ると、眉の辺りをピクっと引きつらせた2人の姿があった。
「優作? 私が料理出来ないって……?」
「……!」
俺と館山さんは、背後からいつもより低いトーンで聞こえる2人の声に、思わずビクッと肩を跳ねさせた。
「いいよねぇ? サリィちゃん! 私たちは、席の近くの友達と班組むもんねー?」
「はい、私もそうします」
「ちょっと待って? 華恋!」
「待ちなさい! サリィ!」
そう言うと、俺たちの制止も虚しく、2人は自分の席の近くの女子達と無理やり笑顔を作って会話を始めた。
「か、可哀想に……」
「え、そんなに料理下手なのか?」
「下手ってもんじゃない! 塩と砂糖は間違えるし、醤油とみりんも間違える……弱火と書かれているところも「強火の方が時短ですよ」と言って、最大火力にしたりするんだから」
「ま、まじか……」
天音さんの料理音痴の実態に、西川は驚きを隠さずに、口をポカーンと開けていた。
「あの班の人に、真実を伝えるべきかな……」
「でも、言えば言うほど2人はムキになると思うよ」
俺と館山さんが、2人の料理音痴をどうフォローするか作戦会議を進めていると……。
「それは大変ですね……」
「大和?」
気がついたら、大和も俺たち3人の会話に混ざっていた。
「あの班の人たちも、きっと2人の普段の様子を見ると、料理できると思っているかと思います」
「お、俺も出来ると思っていたしな……」
西川も以前、華恋は料理できるイメージがあるって話していたっけ。
華恋も似たようなところはある。
何か料理をするときも、ほぼ100%焦がす。
厄介なことに、華恋は焦げた食べ物が好き。
だから、焦げると基本不味くなるという感覚がなく、少数派ということも知らない。
あの班が、てんやわんやする未来は見えているのだが……。
「そんなに大変なら、僕も天音さん達の班に入れてもらいますね」
「大和?」
「僕は、ぼちぼち料理できるので、2人をサポート出来るように頑張ります」
そう言うと、大和は天音さん達に話に行った。
どうやら、1人人数が足りなかったらしく、すんなり潜入することが出来たらしい。
「大和くん……」
「大和……」
「サリィはあなたが思っている以上に……」
「華恋は大和が思っている以上に……」
「料理音痴だぞ」
「料理音痴なんだからね……」
2人はボソッと呟いたのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
皆さんは、調理実習好きでしょうか。
私は、好きな人と同じ班になって、とっっっても緊張した思い出があります。
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