ミニストーリー①:幼馴染と落とし穴(華恋視点)
いつもお読みいただきありがとうございます!
今回は、優作と華恋の小学生時代のストーリーです。
度々出てくる『落とし穴』の深堀になります。
これは、私たちが小学生だった頃の出来事である。
私は、近所の砂場に穴を掘っていた。
「エッホ、エッホ、エッホ……」
プラスチックのスコップでは、下の土は硬すぎたから、もっと掘れるように、近所のおばあちゃんから鉄のスコップを借りてきた。
「華恋ちゃん……本当に、落とすの?」
私の穴掘りを見守る女の子。
この子の名前は、美那子ちゃん。
お家が近所で、幼稚園も一緒で、小学校もクラスも一緒だから、1番の仲良し。
「だって、優作が落とし穴に落ちてみたいって言ってたから、夢を叶えてあげないと」
優作は、私のお家の隣に住んでいる。
美那子ちゃんと同じく幼馴染だ。
「だからといって、この穴は深すぎないかな? 優作くんが怪我しないか不安だよ」
落とし穴の深さは、既に私の腰あたりまで達している。
「大丈夫だよ! 優作は運動できるし……早くしないと塾から帰ってきちゃう、美那子ちゃんも手伝って」
「わ、私も?」
私と美那子ちゃんは、2人で大急ぎで穴を掘った。
そして穴を誤魔化すために、レジャーシートの上に土をかけた。
「よし、準備完了だね!」
ここは、優作の塾の通り道にある公園。
ここで帰りを待っていれば、必ず優作が通るはず。
私と美那子ちゃんは、優作の帰りを待った。
時間は既に夕方……。
「私、もう直ぐお家に帰らなきゃ」
美那子ちゃんのお家は、ちょっと厳しい。
帰りの時間が遅くなると怒られちゃうらしい。
こんなにワクワクすること、美那子ちゃんにも見てほしい。
そう願っていると……。
「あ、来たよ! 優作くん!」
「え?」
私より先に、優作を見つけたのは美那子ちゃんだった。
「優作くーん!」
さっきまで、落とし穴なんて危ないと話していた美那子ちゃんが、率先して優作を呼んでいる。
「ん? みなちゃん?」
「そぉー! こっち来てー?」
優作は、美那子ちゃんの呼びかけに反応して、公園の中に入ってきた。
「あれ? 華恋もいたんだ」
「うん、美那子ちゃんと遊んでいたの」
優作は、ブランコの上に塾のかばんを置いた。
「ここ、砂場の方に来てよ!」
私は、優作を罠の上に誘導するように、大きく手を振った。
「なんだよ、2人して砂場遊びか?」
優作は全く疑う様子もなく、トコトコと私たちの方へ歩いてくる。
――あと3歩、2歩、1歩……。
私は心の中でカウントダウンをした。
美那子ちゃんも、ギュッと両手を握りしめて息を呑んでいる。
して――。
「うわっ!?」
ズボッという音と共に、優作の姿がスッと消えた。
「え? 何これ……いったぁ……」
見事に、私の腰の深さまで掘った落とし穴に、優作がすっぽりとハマっていた。
私たちの努力が報われた瞬間だった。
「大成功ー!!」
私は思わず、両手を挙げて飛び跳ねた。
美那子ちゃんも、ちょっとにっこりしている。
「ちょっと華恋、これお前がやったのかよ! 服、砂だらけになっちゃったじゃんか!」
穴の中から、頭に砂を乗せた優作が声を荒げている。
「だって優作、落とし穴に落ちてみたいって言ってたじゃない! 夢が叶って嬉しいでしょ?」
「こんな手作りの砂場の穴じゃないって!」
優作が私に向かって穴から右手を伸ばしてくる。
私は「しょうがないなぁ」と言いながら、その手をギュッと握って引っ張り上げた。
泥だらけになった優作の手は、私より少しだけ大きくて、温かかった。
「簡単に抜け出されちゃったー。もうちょっと、深く掘った方が良かったかな」
「せ、せっかく、2人で作ったのにね……」
私と美那子ちゃんが不満げに唇を尖らせると、優作は目を丸くした。
「え? 美那子ちゃんも手伝ったの?」
「私も、手伝っちゃった……」
優作は、美那子ちゃんも手伝ったことに驚いていた。
いつも私の暴走を止める美那子ちゃんが、落とし穴を作るのを手伝うなんて思わなかったからだろうか。
「華恋……美那子ちゃんの弱みでも握ったのか?」
「そんなことしてないよ!」
私がむすっと言い返すと、美那子ちゃんは「ふふっ」と口元を押さえて笑った。
「みなちゃんまで……ひどいな、もう」
優作はパンパンと服の砂を払いながら、大きなため息をついた。
「とりあえず、俺ん家で砂落としていくか。華恋も泥だらけだぞ」
「あ、ホントだ」
優作は文句を言いながらも、本気で怒って帰ってしまうことは絶対にない。
そういう優しいところ、昔から全然変わらない。
きっと周りに気を配れて、常に優しい優作に、私はずっと甘えていたのかもしれない。
――だからこそ、今の『完璧な美少女』になった私を見て、彼に「女の子」として見直してほしいと思っているのだ。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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