第26話 華恋とGW スポワイ③
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俺たちは、バッティングセンターを後にし、次にバスケのコートへ向かった。
俺は全くバスケは出来ないので不安だったが、みんなも苦手のようだ。
今は、西川と館山さんチーム、大和と天音さんチームで戦っていた。
「ちょっと、館山さん! どこにパスしているの?」
「西川くんの身長なら取れるでしょ?」
「いやいや、高すぎるよ?」
館山さんの暴投に困惑する西川。
2人の言い合いが、コート内にこだまする。
「松永さん、あっちのチームワークはバラバラですので、私達は堅実にいきましょう」
「は、はい……! 天音さん!」
対照的にこっちのチームは冷静だった。
一定のリズムでボールをつく音や、バッシュが床と擦れてキュッと鳴る音が、広々としたコート内に響いていた。
こうやって、みんなでスポーツをするのは楽しい。
久々にスポーツの楽しさを思い出した。
「あの2人……お似合いだね」
「え? あの2人?」
どっちのことを言っているんだろうか。
西川と館山さんは言い合っているし、大和と天音さんも話してはいるが、どこか距離を感じる。
どっちもお似合いには見えないのだが……。
「ああやって、言い合っていくうちに、良いコンビになっていくんだよ」
「そう言うものなのか?」
どうやら華恋は、西川と館山さんコンビのことを言っているようだ。
「私たちも、最初は喧嘩ばかりだったじゃん」
「喧嘩というか……華恋が振り回していただけだけどな」
「もぉ、すぐそういうこと言う」
華恋は頬を膨らませて、軽く頭にチョップをしてきた。
「こうやって、また遊べてよかったよ……」
「うん? 何か言ったか?」
華恋が小さな声で、何かをぶつぶつと言った。
俺には何かはっきりは聞こえなかった。
「うんうん? 何でもない……それより……」
「ん!?」
「優作? 鼻……本当は痛かったでしょ?」
「い、痛くないよ……」
華恋がニヤけながら、俺に何度も聞いてくる。
俺の鼻をジロジロと見てきている。
痛かったけど、今更本当のことは言えない。
「優作の野球する姿、久々に見れてよかった」
「え? そっか……本当なら、ホームラン打ちたかったんだけどな」
久々のバッティング……華恋の前で、かっこいい姿を見せたかったのも事実だ。
「うんうん? 優作はヒット打つタイプだったでしょ?」
「……!」
華恋は良く覚えている。
俺は、長打を打つよりヒットを打って繋ぐタイプだった。
「だから、ヒットをコツコツ打つ優作の方が、見ていて懐かしかったよ?」
「そ、そっか……それならよかった」
バスケのコートにも、近くのバッティングセンターからボールを打つ音が聞こえてくる。
目の前には、4人がバスケを楽しんでいる。
「あー! もう1回打ちたい! 華恋行くぞ!」
「えぇー? 優作?」
俺は無意識に華恋の手を引っ張り、バッティングセンターへ向かうことにした。
不意に手を引かれた華恋は一瞬肩をビクッとさせたが、俺の少し後ろを小走りでついてきた。
俺はヒットよりも、今はホームランを打ちたい気分だ。
――華恋に、もっとカッコいいところを見せつけたかったからだ。
「みんなー! バッティングもう1回行ってくる!」
「えぇー? また顔面にボール当てないように気をつけなよー?」
西川、いらないことを言うな……。
さっきの悔しさをバネに、もう一度ホームランチャレンジをすることとした。
俺は再び、バッティングセンターの打席に立つ。
ネットの外からは、短く結んだ髪を揺らしながら、華恋が祈るようにこちらを見つめていた。
「カキィィィン」
「カーン」
「カーン」
さっきよりも感触が悪い。
よくよく球速を見たら、さっきよりも10キロ速いゲージであった。
10キロでこんなに変わるものなのか?
プロの選手の対応力ってすごいな……と感心していると。
「優作! もっとリラックス!」
いつもよりも大きな華恋の声が、鮮明に聞こえた。
俺は深呼吸をして、再びバットを握る。
「ウィィィン……バシュッ」
――打ちやすい高さ……これなら行ける!
俺が振り抜いた打球は、ホームランを目指して一直線だった。
「バァァァァン」
そして、ホームランの看板のフチギリギリに当てることができた。
「やったぁ、当たったー! 華恋当たったよー!」
「凄ーい、おめでとう!」
俺が華恋を見ると、彼女は弾けるような笑顔を見せていた。
俺たちは人目も気にせず、はしゃいでしまった。
「あ……」
「あ……」
2人ともほぼ同じタイミングで、素に戻った。
そして、はしゃいでしまったちょっと前の自分達に突然恥ずかしくなってしまった。
「白原さん? 緑ヶ丘さん、こっちまで声聞こえてるよ!」
「げぇ!」
バッティングセンターの隣でバスケをして遊んでいる天音さんたちまで、俺たちの歓声が聞こえていたようだ。
俺と華恋は顔を見合わせた。
まるでイタズラが見つかった子供のように、同時に視線を逸らした。
お互いに顔が熱くなっていることが、見なくてもわかる。
「も、もう! 優作が急に大きな声出すからでしょ!」
「お前だって一緒に喜んでたくせに!」
その後の打席は、集中力が途切れてしまい、凡打の山だった。
俺たちは言い合いをしながらバスケコートに戻った。
「おぉ、お2人さん。ホームランおめでとう!」
「館山さん、ありがとう!」
館山さんがニヤニヤしながら待ち構えていた。
「ホームラン記念に、2人で写真でも撮ってきたら?」
「か、からかわないでよ、葵!」
「俺たちも休憩しましょうか。結構汗かきましたし」
大和の提案で、俺たちはいったんスポワイでの運動を切り上げることにした。
近場にあったベンチに座り、併設されているドリンクバーで飲み物を汲み、俺たちは休んでいた。
そして、休憩しながら、次に何をするかを相談した。
「次は、何しようかね」
館山さんは、元気いっぱいである。
「それなら、次は『バレーボール』にしませんか?」
大和が、額に汗を滲ませながら目を輝かせてこちらを見ている。
――バレーか。
俺のかつてのバレーボール姿を見たいのだろうか。
「バレーかぁ、そういえば、優作って小学校の時、バレーボールしていたよね?」
「え、まぁ~していたね」
華恋は、俺の中学時代の過去をまだ知らない……教えなくてもよいと思っていたからだ。
「どうしたの?」
俺が悩んでいたことを読み取ったのか、華恋は不思議そうに、けれどどこか心配そうに顔色を窺う。
「ううん、なんでもない……よし、向かおうか」
俺たちは、バレーボールの出来るコートへと向かうのだった。
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