第25話 華恋とGW スポワイ②
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「カキィィィン」
「ボスッ」
「コォォーン」
俺と華恋と天音さんは、他3人の待つ『バッティングセンター』に足を運んだ。
バッティングセンターの打席には、数人立っており、バットにボールが当たる音が響いていた。
そして、ネット越しに西川と大和が、打席に立つ館山さんに視線を送っていた。
「いけぇぇ! 館山さん!」
「もっとボールをよく見てください」
西川はパッションで応援し、大和は的確なアドバイスを送っていた。
「まかせてぇー!」
「スコッ」
とても綺麗な空振りだった。
当たったら飛びそうなスイング。
館山さんも運動神経は、悪くなさそうだった。
その後も、彼女は何度もバットを振るが、空を切るばかり……。
「駄目だぁー、当たらない! 誰か野球やってた人いないの?」
館山さんは、悔しそうな表情を浮かべた。
俺は、ソフトボールをやっていたから手を挙げようかと思ったときだった。
「僕、小学校の時にソフトボールしてました」
大和が俺よりも先に手を挙げた。
そういえば、さっき「ボールをよく見て」とアドバイスを送っていたな。
「そうなの? じゃあ、お手本見せてよ!」
館山さんは、ニコニコと期待の眼差しを送り、握っていたバットを大和に渡した。
「おぉー、大和! 頑張れよ!」
「頑張ってください!」
西川の応援と天音さんの応援。
華恋に視線を向けると「次はお前がいけよ」と言わんばかりに、首で指示を送ってきていた。
「華恋……何で、優作くんを睨んでいるの?」
「え!? な、何でもないよ」
館山さんが不思議そうに、華恋を見ている。
華恋は、俺がソフトボールをしていたことを覚えていたのだろう。
――大和が終わったら、やってみるか。
まずは、大和のお手並み拝見だ……。
「カキィィィン!」
「カァァーン」
大和は、的確にボールを捉えていく。
「凄ーい!」
「凄いです!」
大和の1スイングごとに、歓声が上がる。
10球中8球は、会心の当たりをしていた。
――久々で、こんなに会心の当たりを飛ばせるの?
俺は、大和のセンスに驚いていた。
こんなに打っている人の次に打ちたくないなーと思っていたが……。
「ゆ、優作だって野球出来るよ?」
「え? 本当ですか?」
華恋は俺が少しだけ隠しておきたかった経験を、嬉しそうにみんなに伝えた。
その言葉に、大和も食いついた。
「まぁ、小学校の時に、ソフトボールやっていたんだよね」
「それなら、優作くんのバッティングも見せてよ」
館山さんはドアを開けて、俺の背中をポンと押し、バッティングのゲージへと促した。
「き、期待はしないでね」
――本当に、期待はしないでくれよ……。
俺は、バッティングマシーンを起動するボタンを押した。
「ウィィィン……バシュッ」
機械音が鳴り、ピッチングマシーンから、1球目が放たれた。
「ブンッ」
――えっ? 速すぎないか?
久々のバッティングに、俺は力みまくり、豪快な空振りを決めてしまった。
「あははっ! 優作くん、力はいりすぎだよー!」
ネットの外から、館山さんの笑い声が聞こえてくる。
大和も「優作先生、もっとボールをよく見てください」とアドバイスを送ってくれていたが、今の俺にはその声さえも遠く感じられた。
――まだ初球だ……。
俺は気持ちを改めて、打席に立った。
――そうだ、有名な野球選手も言っていた。代打の初球は振れって……。
今の俺には、この打席が代打か代打じゃないかなどどうでもよい。
「ウィィィン……バシュッ」
再び機械音が鳴り、ピッチングマシーンから、2球目が放たれた。
1球目よりも遅く見える……。
高さもちょうど良い……。
――いける!
俺は、『力を抜いて……力を抜いて』と心で何度も唱え、スイングを心掛けた。
「カキィィィン!」
そして、完璧に捉えた打球は、快音を響かせてホームランの看板の隣のネットに飛んで行った。
「おしぃぃぃ!」
「あと5センチぐらいだったんじゃない?」
ネットの外から、歓声が聞こえてくる。
こういう時、どういう表情をすれば良いのかが、俺にはわからなかった。
「惜しかったー!」
俺は、ホームランの看板に当たらなかったのが、少し悔しかった。
「優作! もう1本!」
華恋からの応援に、少し力が入った。
「ウィィィン……バシュッ」
3球目……。
今度こそ、ホームランに当たるぞ!
俺は再び、力むな……と心に唱え、スイングした。
「コォォーン」
「は!」
「え……!?」
俺が放った打球は、ホームランボードではなく、無慈悲にもケージのフレームに跳ね返り、そのまま顔面に直撃した。
鼻に直撃したため、涙が出るほどめちゃくちゃ痛かった。
「大丈夫……?」
みんなが心配そうにこっちを見ていることが、痛いほど伝わってくる。
俺は、今度は恥ずかしすぎて、後ろを振り向かなかった。
「強がるなー? 痛いなら痛いって言えー?」
「顔をこっちに見せてー?」
西川と館山さんが、顔面にボールが当たって、恥ずかしさのあまり振り向けない俺の心を読んでいた。
「ゆ、優作!? 大丈夫!? 鼻血出てない!?」
イジリの声が聞こえる中、華恋からだけは本気で焦ったような心配の声が飛んできた。
俺は鼻を押さえたまま振り向かずに、「痛くなーい」と強がって返事した。
その後、俺はボールをよく見て欲張らずに、ちゃんと当ててヒットを打つことを心がけた。
欲張るとろくなことは起きないと、身をもって思い知った。
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