第23話 華恋とGW 自由人
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自動ドアを抜けると、電子音と賑やかなBGMが頭をくらっとさせる。
そして色鮮やかなネオンの光が俺たちを出迎えた。
地域最大級というだけあって、店内はとてつもなく広い。
ずらりと並ぶクレーンゲームの筐体に、音楽ゲームのエリア、奥にはメダルゲームやプリクラのコーナーまで見える。
「こ、こんなに広かったのか……」
俺はあまりの大きさに唖然とした。
「優作先生! 驚くのは早いですよ? 2階と3階には、『スポーツワイワイ』……略して『スポワイ』という、色々なスポーツを楽しめるものもあるんです」
「そ、そんなものもあるの?」
「予約は必要ですけど、次はここに来ましょう」
「おぉー! それなら、視察に行こうぜ!」
西川は、『スポワイ』に興味を持ったようだ。
そして、大和の腕を引っ張り2人で視察に向かった。
「み、みんなで遊ぶんじゃないんですか?」
「まだ、1日は始まったばかりだよー?」
大和の訴えをキャンセルする西川。
興味を持ったら、その事をとことん調べるのも、西川の良いところでもあり悪いところでもある。
西川に振り回される人が1人増えたのか……。
密かに大和にエールを送っていると、肩をトントンと突かれた。
「あの、緑ヶ丘くん」
「どうしたの? 天音さん」
肩を突いていたのは、天音さんであった。
そして彼女の視線の先は出入り口だった。
もう外に出たいのかな?
音がデカくて頭痛くなったのかな?
という余計な心配はいらず、天音さんの視線の先には、パンチングマシーンがあった。
――さっき、パンチングマシンが何とかと言っていたな。
「自由行動ということでしたら、1発殴ってきても良いでしょうか」
「えっ? じゃあ俺たちも行くよ……って」
周囲を見渡すが、華恋と館山さんの姿がない。
――流石にみんな自由すぎないか?
「天音さん、2人の姿が見えないんだけど」
「はい、2人ならあそこにいますよ」
天音さんが指さした先には、UFOキャッチャーがあった。
ケースの中には、大きなクマのぬいぐるみ。
2人はクレーンを動かし、その景品の獲得へ100円玉を無限に「チャリン」と投入していた。
「天音さん、パンチングマシーン行こうか」
「は、はい」
開幕5分も経たずに、俺たち6人はバラバラになった。
まだ友達になって、1ヶ月も経っていない。
なんという協調性のないグループだ。
俺たちはパンチングマシーンの前に到着した。
天音さんは、袖をまくり上げ、深呼吸をする。
「参ります」
「え!? 天音さん?」
その瞬間、ピリピリとした空気が辺りを包む。
そして、天音さんの細い腕からとは思えない、信じられないスピードのパンチが放たれた。
「ドゴォォォン」
「は……」
俺は開いた口が塞がらなかった。
パンチングマシーンの数値は、「500点」と記されていた。
参考になるスコア表があったが……天音さんの数値は、女性プロボクサーレベルと記載があった。
「ふぅ……すっきりしました。緑ヶ丘くんもやりますか?」
「わ、私は大丈夫です……」
こんなスコアを目の前で見せられて「やります!」と元気に返事ができるのは、ボクシングを習っているか、力自慢のみである。
「そうですか……」
天音さんは、俺がパンチングマシーンをやらないことに少し不満気な様子であった。
「あの2人、まだUFOキャッチャーしているみたいですね」
「えっ、本当だ……沼にハマってるね」
先ほどは、楽しそうにUFOキャッチャーをしていたが、顔色が次第に悪くなっている。
「緑ヶ丘くん、ここで景品取ったらヒーローですよ?」
「ヒーローかぁ」
悪くない響きである。
俺は、時々UFOキャッチャーをやっている。
それどころか、景品の取り方のコツ動画も、よく視聴している。
俺は、天音さんの言葉を鵜呑みにして、2人の元へ向かった。
「あ、優作くん! このぬいぐるみが取れないんだよー」
俺と天音さんが2人の元へ着くと、館山さんは俺の方を掴み、ぬいぐるみが取れないことを訴えかけてきた。
「……」
華恋も無言で、ぬいぐるみに視線を送る。
「俺が試しにやってみようか?」
「え!? 優作くん取れるの?」
館山さんが目を輝かせた。
華恋も、自身の無念を晴らしてくれと言わんばかりに頷いた。
そして、俺の持っている技術と情報を基に、ぬいぐるみとの戦いが始まった。
「チャリン」
「あ、お金は出すよ」
俺が100円を入れると、華恋が慌てて両替をしたであろう小銭を俺の手に持たせてきた。
しかし、華恋にそのお金をすぐに返した。
「自分のお金じゃないと、気合いが入らないんで」
俺はキメ顔で、そう答えた。
「あら、そうなの……」
絶対に「何言っているんだ」という顔を華恋たちにされた。
天音さんは、ウンウンと頷いていた。
彼女もこの気持ちがわかるのだろうか。
俺はあらためて、UFOキャッチャーの1つ目のボタンを押した。
……右に動き出すクレーン。
俺は、1つ目のボタンを離し、すぐ2つ目のボタンを押した。
……奥に動き出すクレーン。
俺は「ここだ」と呟き、2つ目のボタンを離した。
クレーンはアームを開き、下に下降していく。
下まで辿り着くと、クマのぬいぐるみをアームが包み込む。
「おー!」
華恋と館山さんから歓声が上がる。
ぬいぐるみは、アームに包み込まれ上昇していく。
そして、その景品を離すことなく、取り出し口に落ちた。
「すごい! 1発だ!」
華恋がすぐさま、取り出し口からぬいぐるみを取り出した。
その表情は、満開の花のような笑顔だった。
ぬいぐるみをギュッと胸に抱きしめている。
「ありがとう! 優作!」
その笑顔を見るために、俺はUFOキャッチャーの知識をつけていたのかもしれない。
「おう! よかったね」
そう返事をすると……。
「じゃあ次は、葵の分もよろしくね」
「へぇ?」
「当たり前でしょ? 2人とも欲しかったんだから」
「そうだよね……2人で狙っていたんだもんね」
俺はその後、2000円ほど、UFOキャッチャーに使うハメになるのであった。
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