第20話 華恋とGW 当日
いつもお読みいただきありがとうございます!
華恋たちと遊びに行く当日の、集合2時間前……。
一昨日、姉ちゃんとのバイトを終え、お小遣いと新しい洋服を手に入れた俺は、身支度を進めていた。
「なんで、こんなに決まらないんだ……」
全然決まらない髪型に、悪戦苦闘をしていると、集合時間が刻一刻と迫ってくる。
一昨日の姉ちゃんのお店でバイトが終わったのは、夕方……。
姉ちゃんは2時間で終わると言っていたが、嘘をつかれた。
しかし、店長がお詫びということで、似合っていると押された、2種類のコーデをプレゼントしてくれた。
俺自身では、絶対に買うことのないジャンルの服。
今でもこの服が似合うのかが不安であるが、店長と姉ちゃんを信じよう。
――さて、どちらの服を着ていくか……。
1つ目は、店長考案の柄の入ったTシャツと薄手のパーカーを基調に、少しスポーティに纏めたカジュアルスタイル。
個人的には、とても動きやすくてお気に入りである。
ただ今日は今年1番の暑さで、パーカーだと少し暑い。
――せっかくのコーデを崩す訳にはいかないよな
そして2つ目は、姉ちゃんのコーディネート。
こちらは、紺のズボンにベージュのジャケットを軸にした服である。
今日の気温に合わせるとするなら、姉ちゃんのコーデだ。
仕方がない……今日は、姉ちゃんがバイトは休みで、リビングにいる。
この服を選んだことが姉ちゃんにバレると、絶対に煽られる。
そして、何を言われるかわからない。
俺は、姉ちゃんのコーデを身に纏い、コッソリと階段を降りて、家を出ようとするが……。
「優作ー! ちょっとこっち来て!」
階段を下りる音を聞きつけたのか、リビングから姉ちゃんの声が聞こえる。
「は、はーい」
俺は行きたくない気持ちもありながら、服を選んでくれた恩もあるので、リビングに繋がるドアを開けた。
「姉ちゃん呼んだ?」
ドアから、ちょこっと顔を出すと、姉ちゃんはソファに座りながらファッション雑誌を読んでいた。
「冷蔵庫から、アイス取ってきてくれない? いちごのやつ……って、その服はっ」
姉ちゃんは雑誌を閉じ、俺の体の全体像を見てきた。
俺は、その視線を背中に感じつつも、「自分で取りに行きなよ……」とつぶやきながら、冷蔵庫にアイスを取りに行った。
「その服……改めて見ても、似合ってるじゃん……ただ」
「た、ただ?」
「その髪型……セットの時と全然違うけど……」
姉ちゃんは、的確に俺が髪型のセットに苦戦していることを見抜いた。
美容院でセットしてもらうと、かっこよく見える。
……が、家に帰ってセットすると、納得いかないことがある。
そんなことを聞いたことがあるが、今の俺には、痛いほど納得できる。
「それでも、マシに見えるのは、私のコーディネートのおかげだね! 華恋ちゃんのコーデも楽しみだねぇ!」
「うるさい! はい……アイス!」
俺は、冷蔵庫からアイスを取り出し、姉ちゃんが座っているソファの前の机に置いた。
それよりも、何故急に華恋の名前が出て来たのか。
「ありがとう……って、これ、バニラだよ? いちごって言ったよね?」
「バニラも、いちごも変わらないでしょ! いってきます」
「おーい、いちご! いちごをもってこーい」
必死の訴えもむなしく、俺は家を出て、集合場所へ向かった。
◇
俺は遅刻はしたくなかったので、早く家を出たためか、集合場所の駅に1時間前に到着していた。
――これは、早く着きすぎたな……。
俺は改札前で待っていようと思ったが、電車の利用客で賑わっていた。
――仕方ない……近くのお店で暇潰すか……。
俺は、お小遣いも貰ったことだし、近くのファーストフード店で軽くお昼を済まそうと思った。
その時だった。
遠くに、見覚えのある人影が見えた。
あの、黒髪と清楚感が溢れる女性……。
――間違いない、華恋だ。
華恋は、遠目からでもわかるほど、制服では出せない、私服だからこそ出る大人びた雰囲気を醸し出していた。
俺の好みのど真ん中を撃ち抜くような、可愛すぎる姿だ。
何故、こんなに早く着いているのか。
まさか、遅刻が怖くて、俺みたいに早く集合場所に着いちゃったのかな?
華恋もこの約束を楽しみにしていたのだろう。
ここは話しかけるべきなのか、話しかけずにおくべきなのか。
恐らく話しかけたら、華恋は早く着きすぎたことを俺にバレて、顔を赤くする。
そんな姿が想像できる。
話す……話さない…話す……話さない……そんな悩みを続けていると。
「あの、緑ヶ丘さん」
「え? は、はい……って、天音さん?」
彼女の名前は、〈天音 サリィ〉さん。
華恋と館山さんと仲が良く、今回も一緒に遊ぶ予定だった女の子だ。
この予定を立てた時は、インフルエンザにかかってしまい、参加できるか不明だったが体調も良くなり、華恋たちが誘ったようだ。
天音さんは、金髪ショートカット。
目はぱっちりしており、学校では掛けてないメガネを今日は付けている。
そして、クマの刺繍が施されているショルダーバッグを掛けている。
「こんな時間に何しているのですか?」
「そのことは、天音さんにも聞きたいけど……」
「私は、近くの本屋さんで時間を潰そうかなと思っていまして……」
「あ、本屋に行く予定だったのね」
集合時間の前に、近くのお店で時間を潰すこともよくあることか。
「緑ヶ丘さんは、何をしていたんですか? 改札の前で待っているように見えましたけど……もしかして、私……集合時間間違えてましたか?」
そう言うと、天音さんは、カバンから携帯を取り出して、時間を確認する。
「集合時間は1時間後だから、合っているよ」
「そうですか……じゃあ、緑ヶ丘さんは、誰を待っていたんですか?」
「そ、それは……」
楽しみだったから、そして遅刻したくなかったから、早く着いて待っていたなんて、恥ずかしくて言えない。
そのことに、天音さんは気づいていないようだ。
「あぁ~俺は、早く着いたけど、一応誰かいないかを確認していたんだよ。そして、お昼ご飯も軽く済ませようかなーって」
「そういうことでしたか、それなら私もご一緒してもよろしいでしょうか」
「ご一緒といっても、ハンバーガーとかの予定だったけど……」
何とか、天音さんを誤魔化すことに成功した。
そして、俺たちは2人でハンバーガー屋でご飯を食べ、本屋にも付き合って、集合時間までの暇つぶしをするのだった。
それなら、華恋も誘うか……と思ったが、彼女の姿は既になかった。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
もし「続きが気になる!」「面白い!」と思っていただけたら、下の【☆☆☆☆☆】から評価やブックマーク、感想などをいただけると、執筆の励みになります!




