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疎遠だった幼馴染と高校で再開したら俺のタイプに変貌した件  作者: エンザワ ナオキ
第1章 新生活

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第19話 イメチェン計画……With姉ちゃん

いつもお読みいただきありがとうございます!

 朝11時……。


 アロマの香りが漂う、場違いなほどお洒落な美容院の鏡の前で、俺は借りてきた猫のようにぽつんと座っていた。


 こんなに立派な美容院に来たのは、初めてだ。

 周りを見れば、観葉植物や、よくわからない形をしたオブジェなど、近所の床屋では見たことがない。


「あなた、香澄かすみさんの弟さんなんですよね?」


「はい、ねえ……香澄の弟です」


 この綺麗な美容院も、姉ちゃんの紹介である。

 それも当然だ、こんな小洒落こじゃれた美容院を知っているわけがない。


 姉ちゃんは、2つ上。

 俺も2年後には、お洒落になるのだろうか。


「いやー、流石香澄さんの弟ですね! 髪もサラサラですし、羨ましい! 私はですね、髪の毛爆発しちゃうんですよ」


「はははっ、そうなんですね……」


 自分でも引くほどの愛想笑い。

 初対面の女性がテンション高く、話しかけてくることにはまだ慣れていない。


 鏡越しに見る、いつもと違う雰囲気の髪型に「本当に自分か?」と問いたくなる。


 いつもより髪が短いことに違和感を感じるが、これがトレンドの髪型ということだろう。

 これなら……華恋も少しは驚いてくれるだろうか。


 ――いや、そんなことは今はいい……。


「この後は、香澄さんのバイト先で、服のモデルするんですよね?」


「え、はい! 知ってるんですね!」


「はぁい! 香澄さんから聞いてますので!」


 俺は1つ疑問に思った。


「このカットの予約って、何時ごろにされていましたか?」


「そうですね……1週間前? とかでしたかね」


 やっぱりそうだ。

 ここの美容院、素人目で見ても、繁盛している。


 昨日の今日で、予約なんてできるわけがない。


 ――姉ちゃん、何もなくても今日、モデルさせるつもりだったな?


 姉ちゃんにとって、俺の金欠は、絶好の機会だったというわけか。


 ――これは、一本取られたな……。


 俺は、姉ちゃんの思惑通りに動いているようだ。


「優作さん! すごい似合ってますよ?」


「ほ、本当ですか?」


 鏡には、全く自分とは思えないような男が映っていた。


「本当に、俺ですか?」


 当たり前なことを、ボソッと美容師の方に質問をしてしまった……というか、心の声が漏れてしまった。


「そうですよー? 優作さんですよ!」


 鏡越しで微笑む美容師さん。


 ――髪型をいじるのも悪くないな……。


 俺は新たな発見をした。

 そして、姉ちゃんのバイト先へ歩みを進めた。


 ◇


 美容院から10分ほど歩くと、姉ちゃんのバイト先の洋服店『洋服のみっちゃん』についた。


 焼肉屋のような名前だ。

 俺の第一印象はそれだった。


 店の外観は、最近出来たかのように綺麗で、入り口はガラスのショーケースになっている。

 そこにはマネキンが置かれ、多くのコーディネートが飾られていた。


 ――こんなお洒落なところなのか。


 俺は今日、何回『お洒落』と思えばよいのか。

 店前で一呼吸置き、俺はドアを開けた。


「ガチャ」


「おぉ優作! さっぱりしたじゃん!」


 店内を見渡すと、姉ちゃんが真っ先に話しかけてきた。

 そして、カット終わりの髪型を褒める。


「やっぱり短い方が似合うよー! 1ヶ月に1回は切りに行きなさい?」


「そ、そんなに!? って言うか……姉ちゃん払ってくれてありがとう」


 今回は、カットの料金まで出してくれた。


 姉ちゃん高3なのに、弟にカット料金4000円とお小遣い5000円出してくれるなんて、金持ちなのか?


「あー! それなら店長に言って?」


「店長?」


「そう、今回の企画の提案者! お金も店長が負担してくれるんだよ」


 あれ、昨日は姉ちゃんが払うみたいなこと言ってなかったっけ……。


 もしかして、俺はまた騙されたのか?

 そう思い、姉ちゃんを睨みつけていると……。


「いやー、弟くんがモデルに良いからって、香澄ちゃんに言われたけど……想像以上だねぇ」


 店の奥から、女性の低い声が聞こえた。


 俺は「どこから喋っているのか?」と店内を見渡すが、姿が見えない。


「どこですか?」


「あー、ここだよ! もっと下!」


 俺が視線を下に向けると……。

 女性の顔だけがカウンターから見えた。


 店長は、カウンターで作業をしていたらしく、ぴょこっと顔だけを出したのだ。

 「ぴょこっ」という効果音が、ぴったり合う。


「はじめまして、緑ヶ丘優作です。今日はよろしくお願いします!」


 何事も最初の挨拶が肝心。

 これは、俺の母さんが教えてくれたことだ。


 まぁ、高校でのホームルーム最初の挨拶の記憶はないのだが……。


「はーい! 私はこの『洋服のみっちゃん』店長の安達あだち 瑠美るみです」


 そう言うと、店長は立ち上がり、自らを指さし、笑顔で迎えてくれた。


「る、るみさん……」


「あら? いきなり下の名前で呼ぶとか、ませてますねぇ」


 そう言うと、店長はジト目で睨んできた。


「え、いや! 失礼しました」


「気にしないで? 香澄ちゃんの弟なんだから、そのくらいは当たり前だよ」


「て、店長? 私のことどう思ってるんですか?」


 姉ちゃんは、散らかっていたメンズ服を畳んでいた手が一瞬止まり、店長の方を睨みつけていた。


 というか、姉ちゃんのプライベートは全く知らない。


 ――外でも、元気なのか……。


 俺の姉ちゃんのイメージは、日中は学校、夜はバイト。

 休日もバイトか友達と遊んでいるというものだ。


 家にいても、ずっとリビングで雑誌を読みながら、テレビを見ている。

 それでも、学校の成績は常にトップ10にいる。


 暇そうにしている姿を見たことがない。

 動いてないと死んでしまうタイプの人間なのだろう。


「いやー香澄ちゃんも、最初から馴れ馴れしかったでしょ」


「馴れ馴れしいって……言い方、考えてください」


「まぁ、そんなことはさておき……」


 店長と姉ちゃんの会話が一段落すると、2人は俺の方に視線を向けた。


 そして、2人はハンガーラックに手を伸ばした。


 今日、着せられる洋服達なのだろう。


 ――ついに、着せ替え人形になる時間……。


 このバイトが終わるころには、すっかり夜になっていることを、この時の俺は知る由もなかった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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