第17話 華恋とGW 約束
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学校にも、少しずつ慣れてきた4月下旬……。
館山さんのお陰で、あれから華恋とのすれ違いも無くなった。
というより、俺が小学生時代の極秘情報を公開しないか見張っているのだろう。
「優作くん、料理もするんだー! 料理男子ってやつだね!」
館山さんは、気がついたら俺を下の名前で呼んでいる。
初めて喋った次の日には自然とそう呼ばれており、「なんで下の名前で呼んでいるの?」という質問の暇すらなかった。
そして、俺だけではなく、大和や西川とも喋るようになった。
もともと華恋の周りに出来ていたグループが、俺の席の周りに集まるようになった。
この席は後ろ側だし、集まるにはちょうど良いのだろう。
俺は、静かに休み時間を過ごしたいのだが、今日も俺を含めた5人が集まっている。
本当ならもう1人、女子がいるのだが、季節外れのインフルエンザにかかってしまい、今はお休みしているのだ。
「そういえば、そろそろゴールデンウィークですが、皆さんは何か予定あったりするのでしょうか?」
華恋がみんなに問いかけているように見せて、実はほとんど俺の方を見ていたことには、気づいていないふりをした。
「休みの予定か……」
俺は、ゴールデンウィークの予定を思い出した。
――当然、何も……無かった。
俺は予定がないことがバレるのが恥ずかしかったので、考えているふりをして沈黙を守った。
「俺と大和は、バレー部の活動があるけど、月曜日と火曜日は休みだったかなー?」
「うん! その予定だったはず」
西川と大和は、基本ゴールデンウィークは部活のようだ。
それこそ入部したての時は、「腕痛い」とか悲鳴をあげていた西川も、変わらずに部活を楽しんでいるようだ。
「それならさぁ、その2日間のどちらかで、遊びに行かない?」
「それ良いわね! 私もその2日間、空いているわよ」
館山さんがみんなの顔色をうかがいながら提案すると、華恋は「良い提案だね」と言わんばかりの、透き通る笑顔を見せる。
休日に、女の子も交えて遊ぶなんて、小学生以来の出来事だ。
「じゃあ、俺は月曜日がいいかなー」
「自分も、火曜日は家族でバーベキューがあるから、月曜日なら行けるよー」
「大和くん、バーベキューいいなぁー。こう見えて、私焼肉奉行できるんだよ! こうやって、サッサって!」
西川も大和も、火曜日には予定があるようだ。
大和のバーベキューの話に、焼肉奉行の話を被せる館山さん。
「じゃあ、月曜日の13時に、駅前集合でよいかしら」
華恋は、ポケットにしまっていた携帯を取り出し、みんなに集合時間と集合場所を提案し始めた。
おそらく、華恋はカレンダーに予定をすぐ書くつもりだろう。
小学校の時、何度か遊ぶ日をすっぽかされたときがある。
後日、聞いてみたら「1週間後だと思っていたー!」と勘違いをしていたり、「14時からじゃなかったっけ? なんで優作いないの?」と逆切れされたりしたこともあった。
そんな過去を振り返っていると、俺以外のみんなは「いいよー」や「おっけぃ」と返事を返し、遊ぶことが決まっていた。
しかし俺は、1つ不満なことがあった……。
「あの……俺の予定を聞かれていないと思うんだけど」
「え? まさか優作くん……ゴールデンウイーク予定あるの?」
その『まさか』という言い方……。
もし華恋が『学校モード』でなければ、「まさか、暇人の優作が、ゴールデンウイークに予定でもあるっていうの?」と言われていただろう。
「いや……予定はないけど……」
「いや、無いんかい! いかにも予定あります……みたいな言い方だっただろうが」
西川に、首を傾げながらツッコミを入れられた。
周りを見ても「ハハハッ」と乾いた笑い声が聞こえてきた。
「そうだよね……、優作くんが、ゴールデンウイークに予定があるわけがないわよね……」
「な、なんだよ! その言い方!」
「優作くん、怒っているのかしら?」
完全に華恋に舐められている。
そして彼女は、昔いたずらをしていた時の顔に似ている。
……小学校の時に俺を落とし穴に落とし、上から見下ろしてきた時のニヤケ顔に瓜二つだ。
「何ニヤケているんだ? 華恋さん?」
「いや……別にニヤケてはいないわよ? ふふっ……」
「はいはい。二人の痴話喧嘩中に悪いんだけど、俺たち、当日は何して遊ぶ?」
西川が半分呆れた顔をしながら、俺と華恋の間に割って入ってきた。
「ち、痴話喧嘩なんかじゃないわよ!」
「そ、そうだよ! ただ予定の話を……」
俺と華恋は慌てて否定するが、館山さんも「やれやれ……」と言葉を漏らし、会話に口を挟む。
「まあ、どっちでも良いけど……。 で、どこ行く? 私はゲームセンターで遊びたいかな!」
「お、ゲーセンいいな! 大和、クレーンゲームとか得意か?」
「自分はあまりやったことないですね……でも、楽しそうです!」
西川と大和の男陣もゲームセンターには賛成のようだ。
「そ、そう! 私も、駅前に最近完成したゲームセンターに行ってみたいと思っていたのよ」
どうやら、華恋は最近出来た、地域最大級とも言われるゲームセンターに行ってみたかったようだ。
俺も1回立ち寄ってみたが、UFOキャッチャーもたくさんあり、とても繁盛していた。
「白原さんも、ゲームセンターとか好きなんだね」
華恋がゲームセンターに食いついたことに、西川は少し驚いていた。
確かに、『誰もが憧れる美少女』である華恋がゲームセンターを好きなイメージはないだろう。
「い、いや……遊ぶというより、記念? ほら、プリクラをみんなで撮りたいなと思って!」
「プリクラ! いいね、みんなで撮ろう!」
館山さんも華恋の提案に、ノリノリになっていた。
その彼女の姿を見た華恋は、ホッとしていた。
――全く、最初から……素直に行きたいところを言えばよいのに……。
華恋が無理をして素を出せないことに、少し生きづらさを感じていないかと、俺は密かに不安になった。
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