第15話 1人目の友達
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松永くんの話から、俺は過去のバレーでの輝かしい日々を思い出していた。
「大和……実は、優作は怪我でバレーをやめちゃったんだ」
「あ、そう……なんですか……」
先ほどのテンションの高さから打って変わり、重い空気になったのを肌で感じた。
松永は、触れてはならないところに触れてしまったと思っているのか、申し訳なさそうに頭を下げている。
「松永くん? 気にしてないからね」
「は、はい……」
俺は本当に気にしていない。
もう1年以上も前の出来事だし、怪我を治してからも練習はしたが、再発が怖くて前みたいにプレーは出来なくなった。
やることは既に全てやったし、後悔など1ミリも残っていない。
「暗くならないでよ? もう踏ん切りはついてるんだから」
「は、はい……」
俺は、自分の持てる『最大限の明るさ』で、松永くんに笑顔で答えたが、彼は相槌BOTになってしまった。
すると、松永くんが突然顔を上げ、大きく息を吸い、口を開いた。
「自分……緑ヶ丘さんに凄い憧れていたんです……」
「え? 俺に……?」
「実は、中学2年の時に緑ヶ丘さんの中学と戦ってたんです」
「そ、そうなの?」
失礼だが、松永くんと戦った記憶は全く無い。
あの時は、がむしゃらにバレーをしていたから、対戦相手まで記憶はしていなかった。
「その時、先輩たちに容赦なくトスを上げたり、ひとつひとつのプレーに丁寧さがあって、いつか自分もこんなプレーが出来るようになりたいって、思ったんです!」
「そ、そうなんだ……」
さっきの落ち込みはどこに行ったのか、再び饒舌になる松永くんだった。
中学2年といえば、こんなことを俺の口から言うのも何だが、1番自信に満ち溢れていた時だ。
――そっか……響いてくれていたのか。
これまでも、身近な同級生や先輩に褒められることは何度かあった。
しかし、対戦相手だった人に褒められることは、今までなかった。
――なんだろう、嬉しい……。
こんなに目をキラキラと輝かせて、俺を見てくれる人がまだいたのか。
そんな松永くんと、俺は友達になりたいと率直に思った。
――こ、これは友達になるチャンスなのでは……?
俺も一呼吸置いた。
「松永くん! これから仲良くしてね」
「え、いいんですか?」
暗くなっていた松永くんの顔色が少し晴れた。
「いいよ! 逆になんで駄目なの?」
「過去の辛い話を思い出させた自分に、仲良くする資格はないかと……」
どれだけ、重く受け止めているの?
そんなに気にしてないから安心してほしい。
むしろ、バレー部に入っている2人を応援したい。
そんな気持ちが、久々に溢れていた。
「俺はもうバレーはしないけど、アドバイスとか欲しかったら言ってね」
「あ、ありがとうございます!」
「あ、あと……」
「?」
人見知りの俺が言う、難関ミッション。
それは……。
「これから、俺も大和って呼ぶね! だから……俺のことも敬語とかで話さなくていいから」
本当は、『俺のことも優作って呼んでね』と言いたかったが、そんな気さくに話せるコミュ力はない。
「あ、ありがとう! では、優作先生と呼ぶね」
「せ、先生……?」
なんだ、この不思議な人種は……。
言葉に裏表の無い、真っ直ぐな尊敬を感じた。
過去の挫折ごと今の俺を受け入れて、こんな風に慕ってくれる存在が、たまらなくありがたかった。
「ずるいぞ! 大和! 俺にもアドバイスくれよー?」
「そうだ、西川もいたね……お前にも、気が向いたらアドバイスしてあげるよ」
「な、なんだその言い方? 大和よりも付き合い長いだろうが!」
さっきまでとは打って変わり、重苦しい空気はすっかり晴れていた。
そして、ようやく俺に学校で新しい友達が1人出来たのだ。
「ところで、優作先生は人見知りなんですか?」
「え、な、何で?」
「い、いや……ずっとクラスの端っこで、1人でいて、時々西川くんと話すだけだったので……話しかけて良いのか迷いましたよ」
俺ってそんなに話しかけにくいオーラ出しているの?
もっと笑顔でいるべき?
それとも、積極的に周りとコミュニケーションを取るべき?
――だから、クラスで華恋にも気軽に話しかけられないのだろうか。
大和のあまりにも鋭いストレートに思いっきり差し込まれた。
「大和……優作はなぁ? 中学の時からこんな感じなんだよ? 話せば普通におもろい奴なんだけど、それまでのハードルが高いんだよ……」
「お、お前? 余計なことばっか言うな」
俺は、西川の額に咄嗟にデコピンをした。
西川は「痛え」と漏らしながらも、言葉を続ける――。
「でも、こいつは普通の奴だから安心して? 怖くはなーいよ?」
――なんだ、その馬鹿にした言い方は……。
「2人は仲良いんですね」
腐れ縁なだけだ。
だが、西川がいなかったら、松永と話すことはなかっただろう……。
そのことには、感謝するしかなかった。
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