第14話 過去の栄光 その2
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俺は、中学までバレー部に入っていた。
小学校の時、学校のクラブではソフトボール。
家に帰ると、柔道……そして、姉ちゃんに影響されて、バレーも習っていた。
姉ちゃんも、小学校のクラブはソフトボール。
バレーはとても上手で、セッターとしてチームの司令塔となっていた。
姉ちゃんはずっと憧れで、クラブも習い事も、後を追って真似することが多かった。
特に姉ちゃんのバレーの姿を、両親が迎えに行く時についでに見ていた。
そして、姉ちゃんを追うように、バレーを習うことになった。
俺は小学生の時は、身長が平均よりも高く、運動神経にも自信があった。
そのため、少しずつバレーの魅力に浸っていった。
そして中学生になると、俺はバレー部に入った。
周りはほとんど、中学から始めるという状況の中、俺は経験者ということもあり、1年の時から注目されていた。
「そして、セッターは……緑ヶ丘!」
そうしてがむしゃらにバレーを続け、中1の夏には、レギュラーとなった。
「チッ」
先輩の中から、舌打ちが聞こえた。
だが、スポーツは実力の社会。
その舌打ちすらも、心地よく感じる……その時の俺は、少し調子に乗っていたのかもしれない。
元々中学のバレー部は、県大会や関東大会には、数年に一度のペースで進めるぐらいの強豪であった。
このバレー部の目標は『全国大会』。
毎年、あと少しのところで届かない夢であった。
「優作!」
セッターは、チームの司令塔のような存在。
毎試合、先輩にトスを上げるため、神経がすり減る感触があった。
「もっと高くてもよいよ!」
「真鍋ばかりに上げてないで、俺にも上げてよ!」
「こっちもお願い……」
このチームは、わがままが多かった。
だけど、そんな状況も楽しかった。
「優作のトスは、本当に打ちやすいよなー」
先輩からのキラキラとした眼……。
俺はこの眼で真っ直ぐに見られることが嬉しかった。
人見知りなんて、する暇もないぐらいのマシンガントークと明るさに、俺は自然と引っ張られていた。
なにより、先輩たちはすごく優しく、俺を信頼してくれていたから……心地よかった。
「いい気になるなよ?」
「?」
作戦会議をしている中、耳に入るか入らないかぐらいの声で、ボソッと聞こえた。
そんなこと言うのは、誰だか今なら予想はできた。
しかし、当時の俺は、自分が周りからどう見られているかなんて、想像することすらしなかった。
ただ純粋に、バレーが楽しい。
それだけだったのだ。
◇
月日は流れ、中2の夏。
関東大会の最終戦。
勝てば、全国出場のところまで来ていた。
そして、俺たちは最後の1点を奪い取った。
「よっしゃー! 全国だー!」
これまでの先輩たちでは叶えられなかった、バレー部の全国大会へコマを進めた。
もみくしゃになって喜ぶ、部員たち。
俺も喜びを部員たちと分かち合っていた。
「迫水先輩?」
ずっと俺を睨んでいる迫水先輩は、ポジションもセッターであり、1学年上の先輩である。
「迫水先輩! おめでとうございます!」
「……ふん! 良いご身分だよ」
迫水先輩は、愛想が悪い。
今日の試合だって、途中から出場して、俺のミスからの悪い流れを止めてくれたのに。
「まだ、お前らとバレー続けられるなー!」
「は、はい!」
先輩から肩を組まれ、頭を揉みくしゃにかき乱される。
そんな先輩だから、ここまで来れたのである。
そして始まった全国大会。
俺たちは、順調に初戦を勝つことが出来た。
その日の俺は、自分で言うのもなんだが、かなり絶好調であった。
視野もいつもより広く、大舞台に強い自分のメンタルにビックリしたのと同時に、自信がついた。
そして、次の試合に備えて練習をしていた時のことだ。
スパイク練習をしている最中――。
「優作!」
「町田さん!」
俺は、町田さんに呼ばれ、トスを上げようと踏み込んだ――その瞬間だった。
「……!」
右膝に激痛が走った。
時々、練習をしすぎた時に痛くなる時はあったが、この痛み方は全然違った。
――いや、少し休めば治るだろう……。
痛みを誤魔化し、無理に立ち上がろうとしたが……。
「優作! 危ない!」
ふと振り返ると、サーブ練習をしていた迫水先輩の球が、俺の体に直撃した。
そして、その衝撃で右足を捻り、膝をついてしまった。
「う、うわぁぁぁあ」
力の入らない右足……。
それから、俺は自力で立ち上がることが出来なくなり、先生の肩を借り、病院へ運ばれた。
病院に着くと、俺は精密検査を受けることとなった。
まぁ、数日経てば治るだろう……そんな楽観視をしていたが……。
検査の結果は、右膝十字靭帯損傷という大怪我であった。
自分の体の心配よりも、せっかく全国大会に進めたのに、チームの力になれないことの方が悔しかった。
そして、先生から衝撃的なことを告げられた。
「完治には、最低1年はかかるでしょう……そして、前のように、運動能力が戻る保証もありません」
事実上、バレーボールを続けられない……選手生命の終わりを告げるものであった。
エースとして期待してくれた先輩たちや、俺の代わりにベンチを温めていた迫水先輩の顔が脳裏をよぎる。
俺は、周りの期待を裏切り、すべてを壊してしまったのだ。
――これが、俺が『全力で何かに打ち込むこと』から逃げ出し、周りの目ばかりを気にするようになった理由だった。
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