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俺の妻は忍(しのび)ですか?  ―― そして、次に殺される男は俺ですかっ!?  作者: ひの
22、萌

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陰の巻

 金創医の治療法が千差万別なら、金創医の腕もピンからキリまでだ。胡鳥は美濃で、大したことのなさそうな傷が、金創医の治療により悪化して、患者が死んだり、手足を失ったりするところを何度も見ている。

 数十人も訪れている金創医の、誰が腕利きで信用でき、誰がヤブ医者なのか、胡鳥には判断できかねた。

 一週間。一週間あれば、今、門前にいる全ての金創医の過去の実績を調べ上げ、誰が火傷の治療に秀でているのか、間違いのない判断を下す自信がある。


 だけど。

 火傷は、初期治療が鍵を握る。甲賀では、そう、聞いた。

 何日もかけて、彼らの言葉の真偽を検証している余裕はない。


 

 我こそが一番の治療をしてみせると、大声で口々に訴え続ける金創医たち。


 ――ああ。いったいこの中の、誰の言葉を信じたらいいんだろう……。

 門の内側で、胡鳥はこめかみを押さえた。



「胡蝶姉さま」

 萌がやってきた。蒼ざめた顔をしている。

「萌。顔色が悪いわ。

 あなたは身重なのよ?

 座ってなきゃダメじゃないの。転んだらどうするの?」


 萌は首を横に振った。

「和颯様が火傷を負われたと聞きました。

 萌は、座っていることなどできません」

「いいえ、心配しても同じことよ。

 和颯様の火傷は、わたくしが何とかするから、あなたは部屋で――」


「いいえ、胡鳥姉さま。

 どうか――和颯様の手当てを、萌に手伝わせてください」


 胡鳥ははっとして萌を見た。

 萌は、まっすぐな瞳で胡鳥を見つめた。


「萌は、和颯様のお世話を、させていただきたいのです」

 萌の目は真剣だった。

 それに。萌は――。萌ならば――。

 間違いなく、この中の誰よりも、信頼できる……。


 胡鳥は目を閉じた。

 大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出す。


 目をつぶったまま、萌に問いかけた。

「――いいの? できる?」

「はい」

 萌はしっかりとした声で応えた。


「……そう――」

 ならば……。


 胡鳥は目を開いた。萌に笑顔を見せる。

「じゃあ――。和颯様のお世話は、萌にお願いするわ。

 そのかわり薬は、わたしの言うとおりに使うのよ――」


 萌は顔を輝かせた。

「はいっ!」



 腹を、(くく)る。



 胡鳥は、集まった金創医を一人残らず追い返すために、門を開いた。


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