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俺の妻は忍(しのび)ですか?  ―― そして、次に殺される男は俺ですかっ!?  作者: ひの
22、萌

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陽の巻

「どうしてこんなところで大騒ぎしているんだ?

 何があったのか、説明しろ」


 皆が一斉に口を引開いた。

「甚兵衛の証言は嘘っぱちだ!」

「こっちには、左介の刀の鞘があるんだぞ!」

「そんなものが証拠になるか!」

「佐助は鉄を落としただろう!」

「たまたまだ! こっちは恒興さまの家臣だぞ!」

「そうだそうだ! 和颯様を目の前にして、よくそんなことが言えるな!?」

 ――ん!?


 池田恒興は、俺の乳兄弟だ。俺の乳母の息子。生まれた時から一緒に育ってきた、血のつながらない兄弟みたいなもので、何でも話せる大切な家臣だ。むしろ、友達に近い。

 だけど――。

 話が読めないぞ……。


 俺は、こめかみを押さえた。

「――もう少し、分かるように話してくれ」



 彼らの話をまとめると、こうだ。

 佐助という男がいた。別の村には、甚兵衛という男がいた。2人は知り合いだった。

 佐助は、甚兵衛の留守中、甚兵衛の家に、泥棒に入った。

 留守を守っていた甚兵衛の妻が下男と共に応戦。佐助が泥棒に入った証拠として、佐助の刀の鞘を奪い取った。

 

 普通なら佐助が罪を認め、罪を償って、終わりだ。

 ところが、佐助は罪を認めなかった。佐助は恒興が治める村の庄屋。恒興の権勢をかさにきて、しらばっくれた。


 だが、甚兵衛の手元には、佐助の鞘がある。これは佐助が犯人である事を示す、動かぬ証拠だ。

 甚兵衛と妻は裁判所に訴え出た。


 ところが裁判所でも、恒興の威光を気にしている。

 すんなりと有罪判決を出すことはなかった。こんなにはっきりとした証拠があるのに、だ。

 佐助は仲間を引き連れ、ゴネにゴネた。罪を認めてしまえば、正当な方法で償わなければならない。

 恒興に忖度(そんたく)した裁判官は自ら判決を下すことを放棄し『火起請で決めることにする』と言い渡した。


 火起請とは、神の前で行われる、神聖な裁判だ。

 被告と原告が、それぞれ、赤く熱した鉄を持つ。

 鉄は熱い。その鉄を先に落とした方がウソつき、と判定する。


 神前で火起請を行った結果、佐助はあまりの熱さに、鉄を持つことすらできず、一瞬で地面に落としてしまった。

 つまり、神前の儀式でも、佐助が偽証していることが証明されたということだ。


 ところがこの期に及んでも、佐助は罪を認めない。

 裁判所も、ここまできても、恒興の威光を気にして、正しい判決を言い渡せない。

 甚兵衛と妻は納得できず、必死に訴えているが、佐助の村は恒興の支配下なので、勢いがある。佐助が武装した仲間を引き連れ、武力に訴えてこのまま逃げ切るべく騒いでいる、という事らしい。



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