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俺の妻は忍(しのび)ですか?  ―― そして、次に殺される男は俺ですかっ!?  作者: ひの
21、北に岩倉・東に今川

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清州・和颯の屋敷

「胡蝶――っ!」

 屋敷に戻ると、俺は大声を上げた。


「引っ越しだ! 北の屋敷に移る!

 それから――。

 萌の嫁ぎ先が決まった!!」


「なんです、藪から棒に」

 すぐさま俺の斜め後ろから、胡蝶の声が応えた。


「引っ越しの件は承知いたしました。いつでも動けます。

 ですが、萌の嫁ぎ先は、萌が決めます。

 わたくしが納得できない相手にも、決して嫁がせません。

 勝手に話を進められては困ります」


 俺は振り向いて、胡蝶の肩を掴んだ。

 腰をかがめ、目線を合わせる。


「尾張守護の――斯波義銀さまだ」

「えっ――……」

 胡蝶の目が見開いた。


「それは――……、側室――……?」

「いや、正妻だ。

 さっき、内々に打診を受けた。義銀さまご自身のご希望だ。

 義銀さまの屋敷替えが終わって落ち着いた後、正式に求婚の使者が来る」


「――ほんとうに……?」


 胡蝶の唇が震えた。

 俺はそっと、胡蝶の目尻に溜まった涙をぬぐった。


「尾張で見つけ()る、最高の縁談だ。

 義銀さまは、間違いなく萌を大切にするとお約束してくださった。

 萌は――。必ず、幸せになる」


 胡蝶は両手で俺の左手を握りしめ、何度も何度も頷いた。

「萌は――。

 もともと、土岐家の姫だったのです。

 尾張の守護・斯波義銀さまの正妻として迎え入れられたとして、家柄も申し分ありません。

 萌の教養と人柄は、わたくしが保証いたします」


 そうだとも。

 萌なら、どこへ嫁いだとしても必ず愛される。

 

 ――すごいぞ。

 萌が義銀さまに嫁いだら。

 俺も、義銀さまの縁者になる。

 夢みたいだ。

 だけど。そんなことより――。


 俺は胡蝶を抱きしめた。

 胡蝶は、俺の胸に顔をうずめた。

「良かったな――胡蝶」

「はい……。

 これで――。

 これで、わたくしも、安心です」


 うん。

 良かった。

 本当に良かった。


 尾張のためにも、萌のためにも、胡蝶のためにも。

 これから、俺は、全力で。

 斯波義銀さまを盛り立てていくぞ。

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