〜陽の巻〜
義銀さまの声は緊張しているようだった。
「相談したいことが――あるのだが……」
俺は一層深く頭を下げた。
「はっ、何なりとお申し付けくださいませ」
――何だ、何だ。このタイミングで、相談!?
絶対に前々から準備していたやつだよな。
俺、なんかやらかしたっけ!!?
「清州の――事なのだが」
「はっ」
清州ぅ――っ!?
岩倉家の侵略が防ぎきれていないから、怒られるのかっ!?
でも俺、頑張ってるよ!?
むしろ、いっぱいいっぱいだよ?
「わたしも16歳だ」
「はっ!」
あれ?
えっと――……。清須の話は終わりってこと??
突然の、『主君の年齢を正確に憶えているかで調べる、忠誠度抜き打ちチェック』――!?
……じゃないよな――!?
「――わたしもそろそろ、守護として、清州に戻りたいのだが」
「!!!!!」
――確かに――っ!!
あああぁぁぁ〜……。
――しまった。
清州の復興と岩倉家の攻撃を防ぐことでいっぱいいっぱいになりすぎて、俺の住んでいる館は、実は守護邸だった事を忘れてた!
「これは――大切なことに思い至らず、失礼いたしました。
明日には引っ越しの準備を始めます。清州は義銀がお治め下さい。
わたくしは那古野に戻りますが、数日の猶予をいただきたく――」
「いやいや、和颯殿が那古野に戻られる必要はない」
慌てた様子で牛一が割り込んだ。
「一時期より落ち着いたとはいえ、清州はまだ不安定。
和颯殿にはまだ、兵士たちと共に、清州に留まっていただきたい。
守護邸は義銀様にお譲りいただくとして、守護邸より北の屋敷か、南の屋敷に移られてはいかがかな?」
――なるほど。そっちの方が引っ越しも簡単そうだ。
「ではわたくしは、北にある屋敷に移ります」
岩倉は必ず、北から攻めてくる。
牛一が、義銀様と目を合わせ、満足そうに頷いた。
俺は立ち上がる。
「では、わたくしはこれで――」
「そ、それと――」
義銀さまの声が裏返った。
「はっ、」
俺は慌てて、再び膝をつく。
なに? なに? まだあるの??
俺、もうすでに神経がすり減って、倒れそうなんだけど。
――次は何だ?
「わたしが、守護邸への引っ越しを終えて、落ち着いたら――」
――何だろう。義銀さまは、ひどく緊張している。
義銀さまが息を吸い、一息に言い放った。
「萌姫を、わたしの妻に迎えたいっ――!」




