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俺の妻は忍(しのび)ですか?  ―― そして、次に殺される男は俺ですかっ!?  作者: ひの
21、北に岩倉・東に今川

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那古野の寺

「まさか、その手紙の内容を鵜呑みになど、なさっておりませんね」

 隣に座って湯をすすりつつ、牛一が言った。

 静かな口調だが、目つきは鋭い。


「勿論だ」

 義銀は手紙をたたみ、牛一に手渡した。


「そもそも我が斯波家から清州を奪ったのは、坂井大膳。

 坂井大善は、今川の手下だ」


 牛一が頷いた。

「ご承知であるなら、よろしいのです」


「――だが、わたしはそろそろ、この寺から出たい」

 義銀はもう、16歳だ。


「確かに――」

 牛一は宙を見つめた。

 父上が殺されたとき、清州は目も当てられないほど荒れ果てていた。

 織口和颯の計らいで、寺に仮住まいさせて貰えて、とても恩義に感じている。

 だが清州は今、あれからたった2年しか経っていないとは思えないほどの復興を遂げている。

 今なら――自分が守護として、清須に舞い戻ることも、不可能ではないのでは……?

 

「――織口和颯は、このままわたしを、ここに閉じ込めておくつもりだろうか」

 ――織口知家は本当に、斯波家から尾張を奪うつもりだろうか……


「まさか!

 今川義元の口車に乗ってはいけません。

 織口和颯とは、何度もお会いしているではありませんか。

 あれは、明るく単純で、まっすぐな男です。主君を裏切ったり、陰謀を張り巡らせたりできるタイプではありません。

 確かに少し――ストレートすぎるというか、深読みできないというか……。鈍くて、お人好しで、騙されやすいところはあるようですが……」


 義銀はため息をついた。

「わたしは、以前、織口和颯に会った時に、『清須に戻りたい』と、それとなくほのめかしてみたのだが……」


「ああ……」

 牛一は苦笑いした。


「それとなくほのめかしたくらいでは、あの男には伝わらないでしょう。

 はっきりまっすぐ、きっぱりサクッと明言しなければ通じません。

 ここはもう直球で、直接お伝えしてみてはいかがでしょうか?」

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