〜斯波 義銀〜 密書
斯波義銀どの
いかがお過ごしですか?
わたくしと同じ足利氏の正統なる一族である義銀どのが、未だに寺で仮住まいをされていると聞き、わたくしの胸は押しつぶされそうです。
不自由はされておりませんか?
ご入用なものがあれば、わたくしが、何なりとご用意いたしましょう。
よもや、織口和颯を信用なさってなどおりませんね?
決して彼に、気を許してはいけませんよ。
織口家は代々、汚い策略で人のものを奪う家柄です。
我ら今川家は、織口家から受けた仕打ちを、生涯忘れることはないでしょう。
今川家から、仮病を使った汚い策略で、那古野を奪い取った織口信秀は、織口和颯の父。
『仲間になる』と神仏に誓う誓約書の、墨も乾かぬうちに裏切り、清州を奪い取った織口信光は織口和颯の叔父です。
現状をご覧ください。
尾張の首都・清州は、斯波家当主である貴方のものであるべきなのに、貴方は寺で仮住まい。
清州にある守護の館には誰が住んでいますか? 織口和颯ではありませんか!
織口和颯はずるがしこい男です。
いずれ斯波家を裏切り、尾張を乗っ取るつもりに違いありません。
ねえ。わたくしたちは共に、足利の血をひく遠い親戚同士ではありませんか。
わたくしは、わたくしの親戚であるあなたの大切なものが、ひとつづつ、織口和颯によって奪い去られる未来を想像するだけで、悲しくて胸が張り裂けそうです。
斯波義理殿。
わたくしが密かに、あなたのお力になりましょう。
ですから今はじっとこらえ、力をお付けください。
そして、時期がきたら、裏切者の織口家を、尾張から追い出すのです。
その時は必ずや、わたくしも全力で貴方をサポートいたしましょう。
忘れないでください。
私たちは、同志なのです。
同じ足利家一門の仲間・今川義元より




