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俺の妻は忍(しのび)ですか?  ―― そして、次に殺される男は俺ですかっ!?  作者: ひの
20、北に岩倉・東に今川

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数日後・清須 和颯の屋敷

「――さま?

 ……。

 ……和颯兄さま?」


 何度も名前を呼ばれ、俺ははっと顔を上げる。


「…………ああ……。

 ――萌……」


 萌は、ぷう、と頬を膨らませた。

 それは、那古屋で出会ったばかり、ずっと幼かった頃の萌と同じ顔で、懐かしさに思わず、心がじんわりとする。


「もう。

 兄さまは、ずっと上の空で」


 俺はまた、庭の木に目線を移す。

「――ごめん。ちょっと……。

 考え事をしていたから――」




「昨日も今日も一昨日も。

 明日もずっと。ですか?」


 ――えっ?

 俺、そんなに、ぼーっとしてた!?


 萌は困ったように微笑んだ。


「和颯兄さま。

 そんなに気になられるのでしたら、いっそ、お迎えに行かれては、いかがですか?」


「――えっ?」


 ――お迎え?

 何の?


 萌は俺を見る。

「胡蝶姉さまが熱田に立たれてから、10日になります。

 どのような願掛けをされているかは存じませんが、そろそろお帰りになるころでは?」


「――う~ん……」

 萌は知らないが、胡蝶は熱田へ願掛けに行っているわけではない。

 いつ帰ってくるか、俺も知らない。

 それを知ってるのは――一益だけだ。


 胡蝶は今、一益と2人きりだ。

 2人きり? 胡蝶と、一益が?

 きっと2人は今頃、協力しあってお互い見つめ合って――。


 俺の妄想は、萌の声で中断される。


「もう!

 そのように暗い顔をなさらないでくださいませ!

 胡蝶姉さまがいなくなってから、和颯兄さまが枯れ果てたように沈んでいらっしゃるので、屋敷の中に雨が降っているようです。

 屋敷中の皆が、心配していますよ」


 ――えっ……。

 そうなのか。


「……それは、まずいな……」


 いや……。

 どうでも、いいのか……?


 俺は萌に目をやる。萌はにっこりと笑った。

「ですが、萌の予感では、今日あたり胡蝶姉さまはお帰りになる気が致します」

「……――ふうん……」


「――あっ……!

 信じていらっしゃいませんね!?

 後悔しますよ。

 萌の予感は当たるのです」


「えっ……、そうなのか……?」


「はいっ!

 自信あり、です。

 それに……」


 萌の笑顔に影が混じる。


「ずっと屋敷にこもって欝々とされているよりは、少しお出かけされたほうが和颯兄さまのご気分も晴れるでしょう」


 ――ああ。

 そういうこと、か。


 暗い顔の俺がずっと屋敷に居座っていたら、みんな居心地が悪いんもんな。



 俺は立ち上がった。


「分かった。少し出かけてくる。

 行先は熱田。

 夕方までには戻る」

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