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俺の妻は忍(しのび)ですか?  ―― そして、次に殺される男は俺ですかっ!?  作者: ひの
20、稲生

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~陽の巻~ 対 林勢

 南に向かって黒龍を走らせると、すぐに何百人もの男たちの大声が聞こえてきた。

 仲間たちと林軍が戦っている。


 ――たのむ! 皆! 持ちこたえてくれ――!


 俺は必死になって黒龍を走らせる。


 前線は、乱れていた。

 仲間たちはよく戦っていた。だけど。遠目にも林軍に押されているのが分かる。


 まずい。劣勢だ。

 だけど――……そうなると思っていた!!


 俺たちは、人数でも劣るし、戦う前から疲れ切っている!



 俺は全速力で近づきつつ、ざっと全体を見回した。

 あっちも、こっちも、みんな必死で戦っているが、今にも押し返されて崩れ去りそうだ。


 敵の大将・林道具(みちとも)が戦っている。相手をしているのは――半平だっ!!


 半平の目は血走っていて、肩で息をしている。刀には血がついていて、既に誰かを切ったのだと分かった。

 林道具も必死だ。唇を引き締め、油断なく太刀を構えた。呼吸が乱れていのが分かる。鎧に土がついているのは、既に一度攻撃を喰らったからに違いない。


 半平の目が鋭くなった。まっすぐに太刀を構え、渾身の勢いで道具の喉元を狙う。

 道具の口元がにやりと笑った。


 ――まずい!


 俺は大声で叫んだ。

「戻れ! 半平っ!! 切られる――っ!」


 半平がはっとしたように立ち止まった。

 そこからは全ての動きがとてつもなく緩慢に見えた。

 道具が繰り出した太刀は、半平の喉元に向かい、半平の左から右に――道具の右から左に――空間を水平に切るように滑りこんでいく。

 半平の全身が弾かれたように後ろに下がる。

 距離が足りない。半平を追いかけるように前進した刀身が、執拗に半平の首元を追う。


 ――間に合わないっ!


 半平が左手をあげた。

 自分の首を守るように肘を上げる。


 半平の左手を、道具の太刀が通り抜けた。血しぶきが飛び、切り落とされた半平の左腕が地面に落ちた。

 半平の太刀は道具の鎧を掠め、肩から鎧を下げている紐を、切り落とした。


 俺は絶叫していた。

 無我夢中で槍を構え、がむしゃらに道具へと突進していく。


 道具がこちらを向いた。

 たちまち眼光が鋭くなる。道具は手にした太刀を鞘へ納め、腰を落とした。


 俺は我を忘れて叫んだ。

「おのれ! 道具っ!!

 半平の左手を、返せ――っ!!」


 俺は全身で勢いをつけた。槍を構えて突撃する。

 手ごたえあり、と思った瞬間、ぐいっと槍が前にひかれた。

 ――しまった!


 道具が切っ先を躱し、俺の槍の柄を強く引いたのだと分かった。

 俺はバランスを崩したたらを踏む。


「単細胞が」

 道具の刀が抜かれる音が俺の後頭部から聞こえ、俺は自分がほとんど転びかっていることを知る。

「あの世で吠えてろ」

 刀が振り下ろされる気配。


 ――斬られるっ!!



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