~陽の巻~ 対 林勢
南に向かって黒龍を走らせると、すぐに何百人もの男たちの大声が聞こえてきた。
仲間たちと林軍が戦っている。
――たのむ! 皆! 持ちこたえてくれ――!
俺は必死になって黒龍を走らせる。
前線は、乱れていた。
仲間たちはよく戦っていた。だけど。遠目にも林軍に押されているのが分かる。
まずい。劣勢だ。
だけど――……そうなると思っていた!!
俺たちは、人数でも劣るし、戦う前から疲れ切っている!
俺は全速力で近づきつつ、ざっと全体を見回した。
あっちも、こっちも、みんな必死で戦っているが、今にも押し返されて崩れ去りそうだ。
敵の大将・林道具が戦っている。相手をしているのは――半平だっ!!
半平の目は血走っていて、肩で息をしている。刀には血がついていて、既に誰かを切ったのだと分かった。
林道具も必死だ。唇を引き締め、油断なく太刀を構えた。呼吸が乱れていのが分かる。鎧に土がついているのは、既に一度攻撃を喰らったからに違いない。
半平の目が鋭くなった。まっすぐに太刀を構え、渾身の勢いで道具の喉元を狙う。
道具の口元がにやりと笑った。
――まずい!
俺は大声で叫んだ。
「戻れ! 半平っ!! 切られる――っ!」
半平がはっとしたように立ち止まった。
そこからは全ての動きがとてつもなく緩慢に見えた。
道具が繰り出した太刀は、半平の喉元に向かい、半平の左から右に――道具の右から左に――空間を水平に切るように滑りこんでいく。
半平の全身が弾かれたように後ろに下がる。
距離が足りない。半平を追いかけるように前進した刀身が、執拗に半平の首元を追う。
――間に合わないっ!
半平が左手をあげた。
自分の首を守るように肘を上げる。
半平の左手を、道具の太刀が通り抜けた。血しぶきが飛び、切り落とされた半平の左腕が地面に落ちた。
半平の太刀は道具の鎧を掠め、肩から鎧を下げている紐を、切り落とした。
俺は絶叫していた。
無我夢中で槍を構え、がむしゃらに道具へと突進していく。
道具がこちらを向いた。
たちまち眼光が鋭くなる。道具は手にした太刀を鞘へ納め、腰を落とした。
俺は我を忘れて叫んだ。
「おのれ! 道具っ!!
半平の左手を、返せ――っ!!」
俺は全身で勢いをつけた。槍を構えて突撃する。
手ごたえあり、と思った瞬間、ぐいっと槍が前にひかれた。
――しまった!
道具が切っ先を躱し、俺の槍の柄を強く引いたのだと分かった。
俺はバランスを崩したたらを踏む。
「単細胞が」
道具の刀が抜かれる音が俺の後頭部から聞こえ、俺は自分がほとんど転びかっていることを知る。
「あの世で吠えてろ」
刀が振り下ろされる気配。
――斬られるっ!!




