~陽の巻~
まずいまずいまずいまずい。
負傷者と戦死者が多すぎる。
やっぱり柴田勝家は、戦上手だ。
あんな短時間で、こんなにやられると思わなかった。
林家の敵は700人。
俺たちより人数が多い。
しかも彼らは、那古野を出てから一時間も歩いていない。無傷で元気いっぱいだ。
それに引き換え俺たちは、戦う前からもう満身創痍だ。
――このままじゃ、負ける!
俺も、参戦しないと。
……だけど……!
俺は南に駆け出したい気持ちをぐっと抑えた。
だけど、今、一番警戒しないといけないのは、柴田勝家だ。
柴田勝家は戦がうまい。
もしも、勝家があの1000人をもう一度まとめ上げて、引き返して来たら……。
俺たちは、全滅する――!
俺は、黒龍の首を、勝家軍が崩れ去った西に向けた。
黒龍を走らせると、すぐに最後尾が見えてきた。
信房が、太刀を掲げて彼らを追いかけている。
俺は、信房の脇に馬をつけた。
「信房!」
「和颯様っ! 南へ行ったのでは!?
なぜ、こんなところに!?」
「お前に頼みがあってきた。聞け。
――今、勝家軍が再結集すると、マズイ」
信房は不思議そうに動きを止めかけたが、すぐに顔を引き締めた。
「……分かって、おります」
その時、信房の下男(※)が敵将を一人切り倒した。
「信房様っ! 敵将を一人倒しました! さあ、首をお切りくださいっ!(※)」
信房は、引き締まった顔のまま前を向いた。
「でかしたぞ!
だがしかし、今は首を切っている暇はない。
捨てておけ!
行くぞ!
とにかく進めっ!!」
信房はこちらを見ずに、力強く言った。
「――心得ました。柴田軍を再集結はさせません。
さあ、ここは我らに任せ、和颯様はお戻りください!」
俺は頷いた。
「頼んだぞ! 信房! 禅門!
お前たちが頼りだ!」
信房は低く頷いた。名前を呼ばれた禅門は驚いたように俺を見て、雄たけびを上げた。
俺は黒龍の首を南に向け、全速力で、仲間たちと林軍との最前線に向かう。
(※ 下男 男性の身分における実質的最下層。普段は雑用をしている。)
(※ 合戦の時は、殺した敵のランクと数で、ボーナスが変わるシステム。
しっかりボーナスをもらうためには、自分の手柄を証明するために、自分が殺した敵の首を切り取って、持って帰って見せる必要があった。
ちなみに下男は、合戦で首を取っても手柄にカウントしてもらえないほど身分が低い)
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↑ 稲生村付近で、柴田軍(1000人)と和颯軍(700人)が衝突。
和颯軍は大敗しそうになるが、和颯のよく分からない演説で、形勢逆転。
柴田軍は逃げ崩れた。
(柴田勝家は手を怪我していたため、前線にいなかった)
↓ 和颯軍は南の林軍へ向かっていく。
(ただし、700人いた和颯軍は、かなり人数を減らしている)




