~森 可成~ 稲生村の砦
「可成っ!
応戦だ! 行くぞっ!」
信房が叫び、馬を駆る。勢いよく砦を飛び出した。
「応!」
可成は信房の後に続いた。
迫ってくる兵士たちの中に勝家はいない。
彼らを率いているのは大原という男だ。
その大原に向かって、可成と信房が馬を走らせた。
「おりゃー!」
「うりゃー!」
二人同時に、挑みかかる。
ところが
「はあっ!」
大原は二人分の太刀を、一人で受け、弾き飛ばした。
「二人がかりとは卑怯だぞ!」
大原が怒鳴った。
「戦に卑怯も何もあるか!」
信房が言い返した。
可成が、にやりと笑って言い放つ。
「不満なら、2対2で戦おう。
勝ちたいなら、お前よりも強い助っ人を呼んで来い!」
大原はいきり立った。
「なんだと!
この俺様が、お前たちより弱いとでもいうのか! 若造が!
何人でかかってこようと同じことだ!
さあこい、受けて立つ!
二人まとめてあの世へ送ってやる!」
太刀を構え、信房の胸元を目掛け、突っ込んでく。
あまりの勢いに、信房が押され、体勢を崩した。
「このっ!」
可成が、大原の馬に自分の馬を寄せ、圧力をかける。
「卑怯者!」
「それがどうした! 和颯様のためだ!」
信房が体勢を立て直し、大原を押し返した。
「むむぅ」
「ふんっ!」
ぱっ、と3人が距離を取る。
「次は俺から!」
可成が大原に向かって馬を走らせ、太刀を振り上げた。
「はっ!」
大原は自分の太刀で可成の太刀を受けとめた。
「隙ありっ!」
信房が槍で大原の胴を突いた。
大原は、甲冑の胸で信房の槍を受けた。大原の甲冑は頑丈で、信房の槍では貫くことができない。
信房が、槍に力を籠める。大原は鐙にかけた足を踏ん張った。
大原と太刀の力比べをしていた可成が、すっと力を抜いた。
大原がわずかにつんのめるように重心をずらし、馬が数歩、よろめいた。
可成は鐙から足を抜いて馬の上に横座りになり、両足で大原の胸を蹴り上げた。
大原は落馬した。
大原の首を狙って突き下ろされる信房の槍を、大原は横に転がって躱した。
槍は地面に深々と突き刺さる。
「覚悟っ!」
可成が太刀を翻して襲ってきたが、大原は地面に横たわったまま自分の太刀でそれを受け流した。
すかさず繰り出す大原の太刀が、可成の首元を掠める。
信房は突き刺さった槍を引き抜こうとしたが引き抜けず、舌打ちをして馬から降りた。信房は腰の太刀を抜き、大原に挑みかかる。大原は、信房の腹を蹴り、信房が後ろによろめいた。
そこを可成が切り伏せようとしたが再び大原の太刀に拒まれる。
大原が可成の脛を蹴り上げた。
信房が大原の太刀を払う。
信房と可成が同時に太刀を振り下ろす。狙うは大原の首。
大原は、二本の太刀を同時に受けとめた。
「うぐぐぐぐ」
「ぐぬぬぬぬ」
「が―――っ!」
力比べだ。
3人とも顔を真っ赤にして押し合うが、なかなか勝負がつかない。
「やあっ!」
不意に可成が太刀の切っ先を下に向けた。大原の首元を狙い、一気に突き刺した。
狙いは外れ、大原の耳が避ける。
「小癪な!」
信房の太刀を押し返し、可成へと向けられた、大原の太刀の隙間から、信房の太刀が伸びた。
ずぶり。
信房の太刀は、大原の首を突き刺した。
大原は憤怒の形相で信房を睨みつけて太刀を突き出し――そのまま動かなくなった。




