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俺の妻は忍(しのび)ですか?  ―― そして、次に殺される男は俺ですかっ!?  作者: ひの
20、稲生

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~陽の巻~ 稲生村の砦

「砦を捨てる! 打って出る!」

 稲生村の砦で、俺は声を張り上げた。

 敵は1000人の柴田軍。700人の林家の軍勢と、合流されたら終わりだ。


「武器を取れ! 敵は東! いくぞ! 今すぐだ! 出陣――っ!」



 出撃命令を受けた仲間たちは、武器を手に取り、弾かれたように東へ走り出した。

 俺は残って、砦の様子をざっと確認する。


「どうでしょうか、和颯様」

 森可成が声をかけた。

 兜をかぶり、準備は万端だ。

 信房も顔を引き締め、こちらを見ている。


 砦は問題なさそうだった。

「うん、いいだろう」

 俺は頷いた。



 柴田軍は1000人とはいえ、俺たちも700人。激突すれば、柴田軍の人数だってかなり減るはずだ。

 それでも劣勢になったら、この砦に籠って最後まで戦うぞ。


「皆が、戦っている。俺も行く」

 なんといっても1,000人の軍勢に、700人で挑むのだ。

 厳しい戦いになるはずだった。


 俺は馬に乗り、砦に残った仲間たちを見回した。

「よし、みんな、準備は良いか?」

 ほとんど全員が出撃したので、ここにいるのは30人とちょっと。でもみんな、心から信頼できる俺の精鋭たちだ。

 全員の目が、俺を見て、神妙な顔で頷いた。


 俺と一緒に、ここで散る覚悟はできている。

 皆の目がそう語っている。


 俺は、泣きそうになる。


 泣くな、俺。

 ここで泣いたらダメだ。

 こらえろ、俺。


 俺は口を開いた。湿った声が出た。

「行くぞ――」

「応――っ!」



 だが、戦場である東の方角へ馬の首を回した俺たちが見たのは、予想のナナメ上を行く光景だった。



「和颯様――っ!!」

 仲間たちが、血相を変えて駆け戻ってくる。


「大変です! 負けそうですっ!!」

「敵が追ってきますっ!」

「助けてください――っ!」


 ええええええっ!!?


 今さっき、出撃したばっかりじゃない!?


 確かに劣勢になるとは思ったけど!!


 この短時間で総崩れ!?

 嘘でしょ!


 負けるの、早すぎ――っ!!!



「こら――っ!!

 何やってんだ――っ!

 ちょっとは粘れ――っ!!」


 ねえ、みんなっ!!

 ここで負けたら後がないって分かってるよね!!?



「ぎゃ~~! ごめんなさい~~!」

 皆は口々に叫びながら、砦へと逃げ帰る。

「ひー! 助かった!!」


「気を抜くな! 立て直すぞ!!」

 俺は唾を飛ばして、逃げ帰った仲間たちを叱咤激励する。

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