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~陽の巻~ 稲生村 昼の12時前
雨上がりで増水した於多井川も、五月の木曽川に比べれば小川に見える。
船橋は既に掛けてある。
俺たちはあっという間に川を渡った。
川を渡れば、稲生村は目の前だ。
清州を出てから一時間が経過していた。太陽はちょうど真上にあった。
野戦では、砦があるほうが圧倒的に有利だ。
だから俺たちは何日もかけて砦を築いた。
だけど俺たちが築いた砦で防げそうなのは、せいぜい数百人程度の敵だ。
今、南東からは勝家が1000人の兵士を、南からは林家が700人の兵士を率いてやってくる。
日が暮れる前に合流して、明日の朝夜明けとともに、全員で攻撃を開始する作戦に違いない。
――ああもう。やっぱり勝家は戦上手だ。
1700人に同時に攻められたら、こんな急ごしらえの砦は、あっという間に破壊される。
そうなったら俺たちは囲まれて、袋の鼠だ。
「砦を捨てる! 打って出る!」
稲生村のはずれに作った砦に到着するやいなや、俺は声を張り上げた。
――勝家と林家に、合流されたら終わりだ。
俺たちは700人もいないんだぞ。
1700人の敵になんて、逆立ちしたって勝てるわけがない。
「武器を取れ! 敵は東! いくぞ! 今すぐだ! 出陣――っ!」




