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陰陽高校生 大戦記  作者: 風間 義介
四章「現れたるは……」
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二、

 大量の魑魅魍魎がこちらに押し寄せてくる。

 護はその様子を見ても表情一つ変えず、刀印を結び、宙に一文字を描く。その瞬間、不可視の障壁が彼らの進行を止めた。

 ぎいぎいと、立て付けの悪いドアのような音を立てて、魑魅魍魎が悲鳴を上げる。

 「お前たちを相手にするのは、少しあとだよ」

 障壁の向こう側にいる妖に向かって、そう言いながら、護は独鈷を地面に突き刺し、右手で作った拳を左手のひらに押し付ける。すると、手のひらと拳の隙間から、かすかに白い光が溢れた。そして、勢いよく右手と左手を引き剥がした。

 すると、彼の右手にはひと振りの剣が握られていた。

 「へぇ?新しい神器か」

 「いや、神器というほど大層なものじゃないよ……なじみの深い人からの、贈り物さ」

 勇樹の言葉に、護はかすかに微笑みながらそう返す。

 刃から放たれる白く冷たい光が、その剣が鉄で作られていることを物語っている。刃と柄の間に目をやると、五芒星の紋が記されていた。どうやら、土御門家の家紋をわざわざ刻んでくれていたようだ。

 そして、刃から放たれる清冽な気配から、その剣が力を秘めた退魔の剣であることが理解できた。

 護が友護から贈られた剣を取り出したことを知った月美は、柏手を打つ。その瞬間、月美の足元に魔法陣が現れる。掌を引き離すと、護と同じようにその隙間に光の棒が現れる。

 月美がそれを右手で掴むと、光が破片となって崩れ落ち、漆で塗られた竹か木で作られたと思われる棒状のものが現れた。光が完全に剥がれ落ちると、棒状のものがその正体を現した。

 月美の手に握られていたのは和弓だった。よく見る和弓より、少し短い。だが、その作りはしっかりとしているもののように感じられる。芸術品として、展示するだけでも十分な価値がありそうだ。

 だが、それがただの和弓ではないことは、そこから溢れ出ている神気から察することができる。護の持つ退魔の剣と同じように、手に持つ部分の近くに桜花(さくら)の紋様が刻まれていた。

 なぜ桜花なのか、友護に問いかけると、なぜだかはわからないがこれを入れなければならないと思った、と不思議そうな笑みを浮かべながら答えていることを、月美は覚えている。

 そのことを思い出しながら、月美は寂しげに微笑み、弓を構える。だが、矢はつがえない。

 桜はその様子を見て、大丈夫なのか、不安げに月美に尋ねる。月美は桜の不安をかき消すかのように明るく微笑み、大丈夫、と返す。

 「まぁ、見てて……」

 そう言いながら、弦を引く。すると、弓と弦の間で月美の霊力が細い光の棒へと形を変えた。月美は後方から進んでくる妖に向かって、霊力の矢を放つ。

 放たれた矢は、一体の妖に命中し、霧散した。いや、一体だけではない。余波によってあとから続いていた二、三体の妖も同じように塵と化していた。

 弓の弦を弾く音は、鳴弦(めいげん)と呼ばれ、邪気や汚れを払うとされている。おそらく、友護が特注し、念入りに神気を込めた弓であるからこその技なのだろう。

 「すごい……」

 「でしょ?」

 桜の素直な感想に、月美は得意げに微笑み、もう一度、弓を構えた。

 一度に複数の妖を退散できるとは言え、戦力的にこちらが不利であることに変わりはない。先ほどの明るい微笑みから一転、真剣な顔つきになった月美を見て、桜も気を引き締める。

 ――こっちも、負けていられない!

 召集がかかるまでの数日間、修練を積んでいたのは桜も同じだった。

 杖を構え、意識を集中させる。召喚すべき精霊(あいて)に、今まで呼び出してきた、心強い仲間に。

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