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陰陽高校生 大戦記  作者: 風間 義介
四章「現れたるは……」
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38/128

三、

 桜は心の内で、ドリアードを呼び出すための魔術式を構築していた。普段から使用しているそれではない、より強力な、ドリアードの本来の力を呼び出すための魔術式を。

 ほんの数秒だったのかもしれない。いや、感覚的にはすでに十分以上経っているような気もしているが、今は関係ない。この状況を打破するために必要なのは、一秒でも早く、ドリアードを呼び出すことだ。

 桜は杖を地面に突き刺す。瞬間、杖を中心にして緑色の光で描かれた魔法陣が出現し、回転する。回転は徐々に速度をまし、魔法陣の円周から光の粒子がもやのように立ち上ってきた。

 「いでよ、大樹の精霊(ドリアード)!」

 桜は自分の周囲に起きている現象を気に止めることなく、召喚する精霊の名を叫んだ。

 その呼び声に答えるかのように、魔法陣が収縮しながら宙に浮き、光の玉へと姿を変えた。球体は徐々に形を変化させ、人間のようなシルエットを取った。

 光が止むと、光のあった場所には一人の美しい女性が浮いていた(・・・・・)。薄緑の長い髪に、木の葉をモチーフにした髪飾り。手には、樹木を象った紋章がある杖を手にしている。そしてなにより、古代ギリシャの神々を思わせる、純白のローブをまとった姿は精霊というよりも、女神を連想させる。

 その神々しさのためなのだろうか、桜は自分が呼び出した精霊に見とれてしまった。

 「……桜?」

 いつまでも指示がなかったせいか、少しばかり不安げな表情で、ドリアードが召喚主に声をかける。

 「あ、ご……ごめん」

 「しっかりしてください、主」

 幼児の姿をしているドリアードに慣れてしまったせいか、まだ緊張を隠せていない桜は、どぎまぎしながらも、迫ってくる妖たちに杖の先を向ける。

 それだけで、桜が自分に何をして欲しいのかを察し、ドリアードは小さく、了解、とつぶやき、自身の持つ錫杖を妖に向ける。その瞬間、錫杖の周囲から木の葉のような形をした光が出現する。

 「行きなさい」

 ドリアードがそう呟くと、光は素早く妖に向かっていき、急所に突き刺さっていく。光の木の葉が貫いた妖は霧散することはなかったこそすれ、二度とたちあがることはなかった。しかし、圧倒的な数であるため、未だ危機を脱したとは言い難い状況だ。

 「月美、しばらく時間を稼いで!」

 「了解(オーケー)!!」

 桜の頼みに二つ返事で答え、月美は弓を構え、霊力の矢を放つ。その間、桜とドリアードは互いに向き合い、目を閉じていた。二人の足元には、ドリアードを呼び出し時と同じ、薄緑の光を放つ魔法陣が出現していた。

 よくよく見れば、二人の体からは同じ色の陽炎が不規則に立ち上ったり消え入ったりしている。まるで、二人の波長を調整するかのように。

 「……契約者の名において、汝が内なる霊力(マナ)を我が力とせん!」

 陽炎の大きさが揃った瞬間、桜は杖の先をドリアードの額に向け、言霊を紡ぐ。

 言霊が紡がれた瞬間、ドリアードの体が発光し、召喚された時と同じ、光のシルエットへと姿を変えた。そして、光のシルエットから帯び状のものが伸び、桜の杖へと吸い込まれていった。

 ドリアードが完全に杖に吸い込まれていくと、杖に、神々しさにも似た気配が溢れ出し、霊珠が埋め込まれた先端は、ドリアードが持っていたものと同じ、若々しい大樹を象ったものへと変化していた。

 「さぁ……いくよ!」

 桜が杖を掲げると、妖の群れのちょうど真下から、ドリアードが呼び出すような大樹の根が伸び、妖たちを絡め取っていった。そして、一分もしないうちに、妖の群れは血と臓物の海へと姿を変えた。

 「う……わ……」

 月美はその凄惨な光景を見て、ただ吐き気をこらえることしかできなかった。

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