一、
友護から少々物騒な届け物をもらってから数日。季節はすでに新緑の時期になり、浮き足たった雰囲気も少しばかり落ち着きを見せるようになってきていた。
だが、それでも闇夜に紛れて、妖は活動を続けていた。いや、それどころか、春の時期よりも活発化しているようにさえ思える。
それが証拠に、ここ最近の護と月美は、睡眠状況が芳しくなく、寝不足気味だった。
「……眠い……」
「頑張れ……あと少しすればバスに乗れるから……」
「うん~……」
護が肩を貸しながら励ます横で、月美は未だ眠そうな声を出している。
普段から朝には弱い月美だが、それでもバス発車には遅刻しないような時間に起きていたし、こうしてバス停まで歩いていくあいだには、すっかり目を覚ましていた。だが、ここ数日はこうして、歩きながら眠りかねない状態になっている。
「むぅ……護……おんぶ……」
「……仕方ないな……」
月美の要望に答えるかのように、護は月美の数歩先へいき、少ししゃがむ。月美は護の様子に驚く様子はなく、むしろ、護の背に吸い込まれるかのように倒れ込んでいった。
護は決して軽いとは言い難い、年相応の体重と年相応以上に成長している胸を背中に感じながら、立ち上がり、バス停までの道を少しばかり早足で歩き続けた。
「……早いとこ、終わらせないとな……」
護は月美の寝息を聞きながら、昨晩遅くに起きた出来事を思い返していた。
深夜。丑三つ時になったとき、護と月美は、再び勇樹と桜の二人と合流し、妖の討伐に向かっていた。久しぶりの再会であるためか、月美と桜は歩きながらおしゃべりに夢中になっていた。一方の護と勇樹は一言も言葉を交わしていないが、互いに生きて再開できたことを喜んでいるのか、どこか嬉しそうに微笑んでいる。
だが、その顔も一瞬で真剣なものに変わる。
正面から流れてくる敵意や悪意、殺気などの負の感情が、肌を刺す。いや、正面からだけではない。頭上、背後、左右。全方位からそれらの感情がこちらに注がれている。
「……なぁ?数が多くないか?」
「奇遇だな。俺もそう思っていたところ……だ!」
あまりの気配の多さに、護は隣にいる勇樹にそのことを問いかけると、勇樹は答えると同時に、護の顔面すれすれに拳を突き出した。それとほぼ同時に、ぐちゃり、というなにか柔らかく、湿った音とともにヒキガエルの鳴き声のような音が響いた。
護が音のした方向に視線を向けると、名も知らない小人のような妖が、顔面を勇気の拳で潰されていることがわかった。
「……本来なら、こういうのを魑魅魍魎っていうんだろう、な!」
言いながら、護は手にしていた独鈷を勇樹の顔面に突き出す。勇樹はそれを首をかすかに横に倒し、回避する。独鈷は、勇樹の背後から飛びかかってきた妖を捉え、串刺しにした。
すでに襲撃が始まったことを悟り、護と勇樹は互いに背を預け、身構えた。それとほぼ同時に月美と桜も合流し、二人と同じような形で身構える。
「……来るよ!」
月美の合図と同時に、妖が一斉に頭上から飛びかかってきた。だが、勇樹の短い掛け声とともに巻き起こった竜巻で肉塊へと変化した。
だが、妖は頭上からだけでなく、今まで歩いてきた道のりと進む予定だった方向から、大量の、それこと魑魅魍魎と呼ぶにふさわしい生物がこちらに向かってきた。




